ネイティブ状態の安定性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/05 02:54 UTC 版)
細胞環境における一般的なほとんどのタンパク質構造は、一般的に、ネイティブ状態(native state)やネイティブ・コンフォメーション(native conformation、ネイティブ構造とも)と呼ばれる。通常、最も多く分布する状態が、与えられた一次構造が取りうる熱力学的に最も安定な構造であると仮定される。これは第一段階の近似として妥当だが、この主張は反応の速度論的支配を無視している。すなわち、タンパク質が翻訳後にネイティブ・コンフォメーションを獲得するまでに要する時間が小さいと仮定している。 細胞内では、様々なタンパク質シャペロンは、新しく合成されるポリペプチド鎖がネイティブ・コンフォメーションを獲得する手助けをしている。一部のこの種のタンパク質はプロテインジスルフィドイソメラーゼ活性を持つなど、高度に機能特異的である。他のタンパク質は非常に大まかで、殆どの球状タンパク質形成に役立つ。原核細胞の GroEL/GroES 系や、相同的な真核細胞の Hsp60/Hsp10 系は後者の枠組みに属する。 一部のタンパク質は、フォールディング動力学に従ってタンパク質が比較的高エネルギー・コンフォメーションに速度論的トラップ(kinetic trap)される現象を巧みに利用している。例えば、インフルエンザ血球凝集素は速度論的トラップとして働く単一のポリペプチド鎖として合成される。この「成熟した」活性タンパクは、タンパク質分解活性によって開裂し、高エネルギー・コンフォメーションにトラップされた2本のポリペプチド鎖を形成する。pHが低下すると、エネルギー的に起こりやすいコンフォメーション変化を起こして宿主の細胞膜を貫通する。
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