ドクガ科とは? わかりやすく解説

ドクガ科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/23 15:24 UTC 版)

ドクガ科
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: チョウ目(鱗翅目) Lepidoptera
上科 : ヤガ上科 Noctuoidea
: ドクガ科 Lymantriidae
Hampson, 1893

ドクガ科(ドクガか)とは、昆虫綱チョウ目に属する科である。

漢字にすると毒蛾だが、毒を持つ種は少数[1][2][3][4]である。成虫は前足を前に伸ばして止まる種が多い。羽一面が白いか、それに近い種もいる。一部の秋に出現する種ではメスの羽が退化、オスと形態が大きく異なる。幼虫は毛虫で、多くは背中の一部に瘤状の盛り上がりと、ブラシのような毛束が並んでおり、黒地に赤やオレンジといった派手な配色である。

ドクガ科の学名はLymantriidae、マイマイガ属の学名はLymantriaであることより、日本語でいうドクガ科は世界ではマイマイガ科といったニュアンスでとらえられていることが判る。

毒性

主要な害虫種であるドクガチャドクガなどドクガ属に属する種は、一生を通して毒針毛(どくしんもう)を持つ。これらの種の毒針毛は長さ0.1 - 0.2mmほどで幼虫の主に背中にある毒針毛叢生部(そうせいぶ)に束になって生えているが非常に抜け易い[5][6]。繭にも毒針毛が付着している。成虫にもその毒針毛が付着しているため、成虫に触ると毛が刺さる。メスは、卵に幼虫期の毒針毛を擦り付けるため、卵も触ってはならない。中には、マイマイガのように1齢幼虫の時期しか毒針毛を持たない種もある。毛が刺さった場合は、そこを触らずにセロハンテープなど粘着物で毛を取り除き、水で洗い流した後抗ヒスタミン剤を塗る。

冒頭でも述べたように、毒のある種は少ないのにドクガと名付けられたのは、蛾の中で唯一成虫にも毒のある種を含み、なおかつそれらに遭遇する機会が多いためと思われる[要出典]。和名が幼虫に毒のあることを連想させず、色彩も保護色的なカレハガ類とは反対の境遇であろう。英名もTussock moth(訳すとフサガ。幼虫の背中の毛束に因んでいると思われる)で、毒があることに因んでいない。

日本産の主な種類

日本産全種のリスト

関連項目

注釈

  1. ^ 「ドクガ科は日本から50種あまりが知られており、そのうちドクガ属Euproctis属)は10種類ほど」で「ドクガ科の中でも激しい皮膚炎を起こす原因である毒針毛を持っている(編注:生成する)のは、ドクガ属のガの幼虫だけ」「ドクガ属をより細かく分ける考え方もある」とする。北海道のドクガ ドクガって?”. 北海道立衛生研究所. 2016年4月17日閲覧。
  2. ^ [幼虫図鑑] キドクガなど有毒なドクガが属する「Euproctis属の特徴」(p.179) として「体の背面および側面には微細な二次刺毛(編注:2齢幼虫以降に新しく生じる体毛の種類 (p.191) )を生じ,毒針毛をそなえる」とある。尚、毒針毛は刺毛の一種と考えられている (p.192) 。
  3. ^ [蛾類図鑑] Euproctis属は「従来 Euproctis 及び Porthesia の2属に分け」られており「将来いくつかの属に細分すべきである」「この属のなかには毒毛をもっているため、皮膚に炎症やかゆみを与えるものが多い」(p.31) とし、モンシロドクガ、トラサンドクガ、ゴマフリドクガ、キドクガ、ドクガチャドクガ、フタホシドクガ、マガリキドクガの8種を挙げる (p.32 - 34) 。
  4. ^ 2011年初版の[標準図鑑II] (p.146-147) では、上記注釈のEuproctis属8種の属名は それぞれ モンシロドクガ(Sphrageidus属)、トラサンドクガ(Kidokuga属)、ゴマフリドクガ(Somena属)、キドクガ(Kidokuga属)、ドクガ(Artaxa属)、チャドクガ(Arna属)、フタホシドクガ(Nygmia属)、マガリキドクガ(Nygmia属)となっており、Euproctis属のままの種は存在しない。
  5. ^ ツインで差渡し0.5mm程の毒針毛叢生部の写真が掲載されているWebサイト。北海道のドクガ 皮膚炎の原因 毒針毛”. 北海道立衛生研究所. 2016年4月4日閲覧。
  6. ^ 編注)肉眼で確認可能なサイズの長短の刺毛や背中のブラシ状の毛束は毒針毛では無いが、毒針毛は非常に抜け易いため それらの部位にも付着していると考えるべきである。

参考文献

  • 一色周知監修,六浦晃(他)著『原色日本蛾類幼虫図鑑(上)』保育社、1965年。 
  • 江崎悌三,一色周知,六浦晃(他)著『原色日本蛾類図鑑(下) 改訂新版』保育社、1971年。 
  • 岸田泰則編 編『日本産蛾類標準図鑑II』学研教育出版、2011年4月19日。ISBN 978-4-05-403846-2 

ドクガ科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/06 05:05 UTC 版)

ケムシ」の記事における「ドクガ科」の解説

目立つ長い毛は無毒毒毛逆に非常に短く、束になっていて、長い毛の合間規則的に配列している。肉眼では毛が生えているようには見えず、むしろビロード状の斑紋あるよう見える。個々の毛もほとんど粉のようにしか見えない。これを毒針毛どくしんもう)と呼んでいる。 毒針毛抜けやすく、皮膚につくと刺さって皮内壊れ内部封じ込められていたヒスタミン唾液成分と同じ)などを放出するため、長い間かゆみに苛まれるまた、幼虫はたいていになるときに繭に毒針毛ぬりつけ、さらにそれを成虫体表につけるものが多い。 産卵時に親が卵の表面に毛を塗りつけるため、卵にさわって刺される場合すらある。主要な有毒種であるドクガチャドクガモンシロドクガなどは2齢幼虫から終齢幼虫時期毒針毛をもつ。これらの種では終齢幼虫毒針毛を、繭・成虫卵塊・1齢幼虫次々と受け継ぐことで、一生涯毒針毛をもっていることになる。 ドクガ科でもマイマイガのように1齢幼虫時期しか毒針毛もたない種類や、ヒメシロモンドクガスギドクガエルモンドクガ、ダイセツドクガ、カシワマイマイどのようにドクガ科でありながら毒針毛一切もたない種類もある。日本産のドクガ科の毛虫では、ドクガチャドクガモンシロドクガキドクガなどが毒性強く注意要する

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「ドクガ科」を含む「ケムシ」の記事については、「ケムシ」の概要を参照ください。

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