トンデモ病理診断
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/16 08:36 UTC 版)
まず、トンデモ病理診断の定義。病理診断報告書について臨床医が患者に説明する際に、報告書内容がとんでもないとき。または患者が読んでとんでもないと思う病理診断報告書のこと。 しかし、トンデモかどうかは判断が難しい。30年前には「MAMMA KREBS」や「adenocarcinoma, breast, excision」のように1行のみの記述でも報告書が成り立っていた。現在ならば、取り扱い規約に準拠した記載項目がなければ、報告書としては十分ではないとされることがある。規約にない項目を要求されることもある。なお、病理医のなかには取り扱い規約を使わない方針を持つ人もいる。 現今では、癌の組織型を記述するのみでは不充分であり、その後の治療方針決定のために癌の亜分類、悪性度、進行度、核異型度、脈管浸襲の有無、外科的切離面の腫瘍有無などあらゆる予後決定因子など詳しく記載されるように規約で定められている。 一方、患者向けのガイドラインを熟読しておられ、報告書に記載されるべき項目を熟知している患者が増えてきた。臨床医がより細かく説明する機会が増えてきた。「規約は使わないよ」とする病理医の報告書は、記載が十分でない場合は、患者からみると「トンデモ病理診断」である(ただし、規約を使用しているのは日本だけであり、海外からすればトンデモ病理診断と言える)。また30年前の書き方のきわめて明快単純な報告書は、主治医が患者への説明する場合には使えない。これも「トンデモ病理診断」である。診断が間違っていなくても、トンデモを決めるのは、サービスを受ける側なのである。 検査所においては、病理検査報告書は商品であり、依頼者が瑕疵であるとする報告書は発行できない。トンデモ報告書の記載内容について追加、訂正または書き直しが求められる。コストが増える。トンデモ病理報告の拾い上げや検査技師による標本見直し、病理医による再検査などが検査所にとって通常業務になっている。トンデモ病理報告の存在とその対応が検査所にとって最大の負荷となっている。 病理医が病理診断サービスのニーズを理解するには、病理診断科で患者からの質問に直接対応することがもっとも近道であり、病理診断科による解決に期待したい。検査センターで作製された標本の孫請けでは、患者に会うことはなく、臨床の要望や声は病理医には届かず、自らのトンデモ病理報告に気づくことはできない。
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