トリマルキオの饗宴
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『サテュリコン』でもっとも有名なシーンが、「トリマルキオの饗宴」と呼ばれる豪奢で頽廃的な宴会の場面である。写本が大幅に欠損している『サテュリコン』の中でも、宴会の始まりから終わりまで一貫したシーンとしてテクストが残されている貴重な場面である。ローマの宮廷や権力者らの私邸で行われていた饗宴文化を考証する資料ともなっている。 主人公一行はその道中、トリマルキオなる人物の開いた饗宴にもてなされることになる。饗宴の主人であるトリマルキオは、解放奴隷という設定である。ネロ時代のローマでは、奴隷身分だった者が解放され巨万の富を得て台頭するという例が多く見られた。トリマルキオという人物の設定もこうした新興の富豪を描写したものである。彼は洗練された人物としてではなく、派手な装いで登場すればその悪趣味を賓客にくすくすと笑われ、教養人を装って古典の知識を披露すれば間違いを露呈してばかりであるなど、むしろ滑稽さをもったキャラクターとして描かれる。 当時高級とされていた食材をふんだんに使った料理の描写に加え、趣向を凝らした器についても作中で詳しい説明つきで語られる。また、料理や歓談だけでなく余興も趣向を凝らした内容となっている。曲芸師によるパフォーマンスや剣闘士競技が披露され、「動く天井から土産物が降ってくる」といった大掛かりな装置の描写まである。
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