トリスタン三部作
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『5つのルシャン』は人間の「愛」をテーマにした作品である。フランスのサラベール社(フランス語版)から出版されている楽譜の巻頭にはメシアンによる5つの短い注意書きがあり、その5番目には次のように書かれている。 この作品は愛の歌である。歌手たちが詩と音楽を解釈するのを導くのに、この言葉があれば充分である。 サントトリニテ教会のオルガン奏者でもあったメシアンは敬虔なカトリック信者であり、彼の作品の多くは神学的な真理を表現するために書かれている。その一方で、メシアンは「人間の愛」も「神の愛」に次いで重要視しており、特に「トリスタンとイゾルデ」(伝説、及びリヒャルト・ワーグナーの楽劇『トリスタンとイゾルデ』)を、「文学と音楽における、愛に関する偉大な詩作の象徴」と捉えていた。メシアンがそこに見出していたのは、「宿命的な愛」、「死に至る愛」、「肉体を超越した愛」といった観念である。 メシアンが「トリスタンとイゾルデ」に象徴される「宿命的な愛」、「清純な愛に至る死」といった観念をテーマとして作曲したのが、歌曲集『ハラウィ - 愛と死の歌(英語版)』、『トゥーランガリラ交響曲』及び『5つのルシャン』という、1940年代後半に書かれた3つの作品であり、これらは「トリスタン三部作」と総称される。この三部作はオペラのようにストーリーを追うものではないが、『5つのルシャン』においては「イゾルデ」や「ブランゲーネ」といった登場人物の名や「媚薬」など、伝説を暗示する具体的な言葉が歌詞に含まれている(後述)。 なお、三部作の各作品を楽曲の規模の面で比較すると、12曲構成で演奏時間55分の『ハラウィ』、10楽章構成で演奏時間80分の『トゥーランガリラ交響曲』に比べ、5曲で構成され演奏時間が20分の『5つのルシャン』はかなり小ぶりである。
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