タンパク質-リガンド結合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/05/29 05:56 UTC 版)
「解離定数」の記事における「タンパク質-リガンド結合」の解説
解離定数はリガンド ( L {\displaystyle \mathrm {L} } ) (薬剤など)とタンパク質 ( P {\displaystyle \mathrm {P} } ) との間の親和性(すなわちリガンドが特定のタンパク質にどのぐらい強く結合しているか)を説明するために一般的に使われている。リガンド-タンパク質親和性は水素結合や静電相互作用、疎水性相互作用、ファンデルワールス力といった2分子間の非共有結合性相互作用によって影響を受ける。また、高濃度の他の高分子によっても影響を受け、分子クラウディングの原因となる。 リガンド-タンパク質複合体( C {\displaystyle \mathrm {C} } )は2つの状態を含む過程によって記述できる。 C ⇌ P + L {\displaystyle \mathrm {C} \rightleftharpoons \mathrm {P} +\mathrm {L} } 対応する解離定数は以下のように定義される。 K d = [ P ] [ L ] [ C ] {\displaystyle K_{d}={\frac {\left[\mathrm {P} \right]\left[\mathrm {L} \right]}{\left[\mathrm {C} \right]}}} 上式において、[ P {\displaystyle \mathrm {P} } ]、[ L {\displaystyle \mathrm {L} } ]、[ C {\displaystyle \mathrm {C} } ] は、それぞれタンパク質、リガンド、複合体のモル濃度を表わす。 解離定数はモル濃度単位 (M) を持ち、特定のタンパク質の結合部位の半分が占有されるリガンドの濃度 [ L {\displaystyle \mathrm {L} } ] に一致する。すなわち、リガンドが結合したタンパク質の濃度 [ C {\displaystyle \mathrm {C} } ] がリガンドが結合していないタンパク質の濃度 [ P {\displaystyle \mathrm {P} } ] と等しくなるリガンドの濃度である。解離定数が小さくなるとリガンドはよりしっかりと結合する、あるいはリガンドとタンパク質との間の親和性が高まる。例えば、ナノモーラー (nM) オーダーの解離定数を有するリガンドは、マイクロモーラー ( μ {\displaystyle \mu } M) オーダーの解離定数を有するリガンドよりも特定のタンパク質によりしっかりと結合する。 2分子間の非共有結合性相互作用によって生じるピコモーラーより小さい解離定数は稀である。にもかかわらず、いくつかの重要な例外が存在する。ビオチンとアビジンは、おおよそ 10 − 15 {\displaystyle 10^{-15}} M = 1 fM = 0.000001 nMの解離定数で結合する。 また、リボヌクレアーゼインヒビタータンパク質もリボヌクレアーゼと同じような 10 − 15 {\displaystyle 10^{-15}} Mの親和性で結合できる。特定のリガンド-タンパク質複合体に対する解離定数は溶液条件(例えば温度、pH、塩濃度)によって著しく変化する。異なる溶液条件の影響は、特定のリガンド-タンパク質複合体を結び付けている全ての非共有結合性相互作用の強さを効果的に変更する。 薬剤は、相互作用するように意図あるいは設計されていないタンパク質との相互作用によって有害な副作用を生じうる。ゆえに、たくさんの薬理学的研究が標的タンパク質のみに対して高い親和性(通常0.1-10 nM)で結合する薬剤の設計、あるいは特定の薬剤とそのin vivo標的タンパク質との間の親和性の向上を対象としている。
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