タングステン酸ジルコニウム-銅複合系
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熱間等方圧加圧法(英語版) (HIP) により、ZrW2O8-Cu 複合系を作成することができる。1997年、C. Verdon および D.C. Dunand は粒径の近いタングステン酸ジルコニウム粉末と銅粉末を銅コーティング済み低炭素鋼缶中で圧力 7008103000000000000♠103 MPa、温度 7002600000000000000♠600 °C で3時間 HIP を行った。チタニウムゲッターポンプで真空に引いたクォーツ試験管中で、同じ粉末混合物に同じ 7002600000000000000♠600 °C で3時間、(圧力を加えず)熱処理のみを行う対照実験も行われた。 論文に示された X線回折 (XRD) 実験結果を図に示す。(a) は未処理のタングステン酸ジルコニウム粉末、(b) は対照実験結果、(c) が HIP 処理の結果である。スペクトル (c) では図中左に位置する ZrW2O8 ピークが無くなっており、新たな相が生じていることが見てとれる。一方、対照実験では ZrW2O8 は一部しか分解していない。 Cu, Zr, W を含む複合酸化物が生じていると考えられるが、制限視野回折 (SAD) により反応後に Cu2O が凝結していることが明らかになっている。図示するように、二つの並行過程からなるモデルが推測されている。(b) タングステン酸ジルコニウムが分解し、高温化での低い酸素分圧から酸素原子が失われ Cu2O が生じる。 (c) 銅がタングステン酸ジルコニウム中に拡散し、冷却中に酸素を吸収して新たな複合酸化物を生じる。 Cu2O は数少ない、非常に高価な貴金属酸化物に次いで非常に安定であり、ZrW2O8 よりも安定であると考えられるため、速度論支配の反応を考慮しなければならない。例えば、反応時間を短くし、温度を下げることにより、反応中の酸化物の異る相により引き起こされる残留応力が緩和することになり、酸化物粒子の剥離による熱膨張率の増加につながるのかもしれない。
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