タジン鍋の形状
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/31 01:36 UTC 版)
モロッコの伝統的なタジン鍋は陶製であり、場合によっては、絵付けや施釉されている。本体と蓋の2つの部分から成る。本体は、縁の有る皿状である。蓋は、円錐形かドーム型である。 このような形状にしてある理由は、円錐形の蓋の上部の狭い空間では対流が起こり難く、さらにタジン鍋の底からも離れているために空気によって冷却され、蓋の内部に温度が低い領域を得るためである。この結果、タジン鍋を加熱した際に、タジン鍋の内の食材から出た水蒸気が、冷たい蓋の上部で冷やされて凝集し、水滴の形で、食材へと落下する。これによって、食材に含まれる水分だけで、蒸す調理を実現した。乾燥地域の多いモロッコでは、飲料水は非常に貴重だった。そのような風土的要因で、必要性に迫られて、食材に含まれる水分だけで調理できるタジン鍋が開発されたとされる。 ただ、この形状によって、副次的な効果も得られた。それは、本体と蓋の間にも、水が溜まり、結果として、タジン鍋の内部が密封状態となり、食材や使用した香辛料などに含まれる揮発性の香気成分が、散逸するのを防いでいる。 なお、蓋の下部付近の方が空気の対流が盛んであるため、蓋の上部にまで熱が逃げ難く、熱は下部の食材の付近に集中し易いので、調理に支障は出ない。 これらの効果に加えて、調理時に、あまり水が使われないため、水溶性ビタミンやミネラルの溶出と流出に伴う損失は、低減できる。 また、嵩高い蓋は、嵩張る野菜を盛り上げても、内部に収められる。一方で、蒸した結果、野菜は柔らかくなって見かけの量が減るため、見かけよりも多くの野菜を食べられる。この効果を狙って、野菜の摂取不足を気にする者が、タジン鍋に目を付ける場合もある。これを受けて、例えば、ヨーロッパのメーカーが、電子レンジでも加熱が可能なタジン鍋を作成した。また、蓋に取っ手を付けて、調理中でも蓋を開けて、さらに野菜を追加できるようにした製品も見られる。
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