スーパーセルとメソサイクロン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/04 04:22 UTC 版)
「竜巻」の記事における「スーパーセルとメソサイクロン」の解説
強い竜巻は多くの場合、スーパーセル(Supercell)または親雲と呼ばれる発達した積乱雲や積雲に伴って生じることが分かっている。なお後述の通り、スーパーセルを伴わない竜巻の発生事例も少数ながら報告されている。 スーパーセルの中心部や周辺部には、上昇気流の領域と下降気流の領域がある。下降気流の領域では集中豪雨が降っている。この雨は、大気中や地上で蒸発する際に大気から気化熱を奪い大気の下層を冷やすとともに、自身の重さで大気を押し下げて、下降気流を増強する働きがある。これにより下降気流が維持されて、雨が尽きるまでしばらくの間は降りつづける。豪雨に混ざって霰・雹が降ったり、豪雨の前後に激しい下降気流に伴うダウンバースト(down burst、下降噴流とも呼ぶ)が発生したりする。 上昇気流の領域では、下降気流により冷たくなった空気の層の上を、暖かく湿った空気が乗り上げるようにして上昇することで上昇気流が発生している。上昇気流は積乱雲や積雲が発達するのに不可欠な空気の対流活動であり、地上付近から上空10 - 15キロメートル付近の対流圏界面へと空気が上昇していく過程で、空気に含まれた水蒸気が凝結して雲を作る。 このような環境の下では、重く冷たい下降気流の部分に比べて、軽く暖かい上昇気流の部分の気圧が低くなり、上昇気流の部分を中心として、低気圧と同じ方向(北半球では反時計回り、南半球では時計回り)に気流が渦を巻いて回転し始める。すると、メソサイクロン(Mesocyclone、メソロウとも呼ぶ)と呼ばれる小規模(水平距離が数キロメートルから数十キロメートルほど)の低気圧ができる。 メソサイクロンの周囲を回転する空気には遠心力が掛かり渦の外側に引っ張られるため、中心部の空気が薄くなって気圧が下がる。一方気圧が下がることで、気圧傾度力が働いてさらに周囲の空気を巻き込む。また、この規模の渦には地球の自転に起因するコリオリ力という力も働くため、気圧傾度力・遠心力・コリオリ力の3つの力が均衡して、低気圧としての気流の循環を維持している(このタイプの風を傾度風という)。
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