ジャガー様怪物のもつ意味
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/13 03:00 UTC 版)
「オシュトティトラン洞穴」の記事における「ジャガー様怪物のもつ意味」の解説
彩色壁画1号の主題であるジャガーの怪物の頭は湾岸のオルメカ遺跡にみられる祭壇のジャガーの怪物に近いものと考えられる。最初にジャガー様怪物の目であるが湾岸オルメカの石彫やチャルカツインゴ記念碑9号にみられる目の形に似ている。両目の瞳孔には、暗い青緑色の楕円形の中に聖アンデレ十字のようなX字が描かれている。同じモチーフはフストラワカ洞窟壁画の蛇やジャガーの絵にも描かれている。彩色壁画1号のジャガーの右目は座った人物の垂れ下った足によって一部隠れている。ジャガーの怪物の上あごないし上唇の表現や上あごからは外反するように曲がった「牙」が垂れ下っている様子はラ・ベンタの祭壇1号や記念碑12号の帯の部分と似ている。次に、湾岸オルメカの祭壇では人物が祭壇の中で座った姿で刻まれているが、オシュトティトランのこの壁画でも祭壇の中で座るのと同じような座った姿をしている。また、大事なことは、湾岸オルメカの祭壇の場合、ジャガーの上あごないし上唇の下は、空洞、ないし壁龕(へきがん)状にへこんでいることで、その壁龕状の部分はジャガーの口であるとともに洞窟を表していると考えられている。ジャガー様怪物の口と洞窟のイメージを重ね合わせるような表現はチャルカツインゴの浅浮き彫りされた石彫にみることができる(記念碑1号など)。後古典期のメキシコ中央高原地方の絵文書 (Codice,Codex) には、横から見た洞窟が大地の怪物の口に見立てられる表現があり、オシュトティトランの壁画やチャルカツインゴの記念碑1号に通じるものがある。ジャガー様怪物の顔を表現したこの彩色壁画1号が描かれたのはまさに洞窟の入り口の天井であって、象徴的といえる。 オシュトティトランのジャガーの怪物に欠けているのは鼻の部分で、上唇の中央部にあると思われるがちょうど欠損している。ジャガーの怪物の顔と座った人物の装っている服装の対部分は緑色に塗られている。緑はメソアメリカの図像では、水とヒスイの象徴である。チャルカツィンゴにはジャガーの怪物と洞窟は一連のものと考えられ、植物や雨神のようなほかのモチーフを含むことがある。それは疑いなく農業の豊穣への願いとつながっていく。マシュー・スターリング (Matthew Stirling) は、ラベンタの祭壇4号の上が平坦なのはジャガーの毛皮を投げて広げて祭壇全体をジャガーに見立てるためだと述べていることも、祭壇4号もジャガーの怪物と洞窟の一体性を表現していることで究極的な性格は同じものと考えられる。
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