シナプスを介した情報処理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/21 18:39 UTC 版)
「僧帽細胞」の記事における「シナプスを介した情報処理」の解説
僧帽細胞は、嗅球のマイクロサーキットにおいて、主要な構成要素のひとつである。 僧帽細胞は少なくとも4つの細胞種(嗅覚神経、傍糸球体細胞、房飾細胞、顆粒細胞)から入力を受け取る。 外部房飾細胞や嗅神経との間に作られるシナプスは興奮性で、顆粒細胞や傍糸球体細胞との間シナプスは抑制性である。 さらに、姉妹僧帽細胞(同一の糸球体から入力を受け取る細胞)はギャップ結合によって相互に接続されている。 僧帽細胞から顆粒細胞、僧帽細胞から傍糸球体の細胞へのシナプスは、(よく知られている軸索-樹状突起間のシナプスとは対照的に)比較的珍しい樹状突起-樹状突起間シナプスとして、最初に発見されたものである。 嗅球内局所回路がどうふるまうかという問題は熱心に研究されており、いくつかの原理が明らかになりつつある。 ある報告は、僧帽細胞と房飾細胞の出力を時間的に分離する際に、僧帽細胞、房飾細胞、および傍糸球体細胞間でのマイクロサーキットが重要な役割を果たしていると指摘している。房飾細胞は嗅神経から強い入力を受け取り、スニッフサイクル(鼻腔に到達する匂い波の周期)の早いフェーズに発火し、その発火頻度は匂い濃度にかかわらず一定である傾向があるのに対し、僧帽細胞は嗅神経から比較的弱い入力を、傍糸球体細胞からは強い抑制を受け取っていて、これがスニッフサイクル内発火タイミングの相対的な遅延をもたらす。結果として、僧帽細胞はスニッフサイクルにおいて遅いフェーズで発火する。 この傍糸球体細胞からの抑制は、匂い濃度が高まるにつれ回避できるようになり、これによって僧帽細胞の発火タイミングは匂い濃度依存的に変化する。したがって、僧帽細胞のスニッフ周期内発火フェーズの調整が、嗅覚系が濃度を符号化するメカニズムの一部として機能している可能性が考えられる。 僧帽細胞の側方樹状突起と顆粒細胞が形成する回路の役割にはまだわかってない点があり、考えられる仮説の一つは、より効果的に入力パターンを分離するためのスパース表現に、この回路が関与しているというものだ。この(顆粒細胞と僧帽細胞が形成する)回路のふるまいは、短期および長期にわたっての可塑性と、成体になってからも続く顆粒細胞の神経新生に大きく影響される。またこの回路は、睡眠中にはふるまいが変化する。
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