サイクリンC/CDK3とRb
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/31 15:40 UTC 版)
「G0期」の記事における「サイクリンC/CDK3とRb」の解説
G1期からS期への移行は、G1期終盤にサイクリンD/CDK4とサイクリンE/CDK2によってRbタンパク質のリン酸化が進行し、不活性化されることで促進される。Rbの欠失によってG0期への再移行が促進されることからは、RbがG0期からG1期への移行の調節にも必須であることが示唆される。さらなる観察によって、サイクリンCのmRNAのレベルがG0期を脱出するときに最も高くなることが明らかにされ、サイクリンCがRbをリン酸化し、G0期で停止した細胞周期の再開の促進に関与している可能性が示唆された。免疫沈降キナーゼアッセイによって、サイクリンCがRbに対するキナーゼ活性を持つことが確認された。さらに、サイクリンD、Eとは異なり、サイクリンCのRbに対するキナーゼ活性はG1期の序盤に最も高く、G1期の終盤とS期に最も低くなり、ここからもサイクリンCがG0期からG1期への移行に関与している可能性が示唆される。蛍光活性化セルソーティング(FACS)を用いることで、G0期の細胞はRNAに対するDNAの比がG1期の細胞よりも高いことから同定される。哺乳類細胞の内在性のサイクリンCをRNAiによって抑制することで、G0期で停止した細胞の割合が増加することがこの手法によって明らかにされ、サイクリンCがG0期からの脱出を促進していることが確認された。さらに、Rbの特定のリン酸化部位に変異を導入する実験によって、サイクリンCによるセリン807番/811番残基のリン酸化がG0期からの脱出に必要であることが示された。しかし、このリン酸化パターンがG0期からの脱出に十分であるかは未だ明らかではない。共免疫沈降アッセイによって、サイクリンCと複合体を形成してこれらの残基をリン酸化しているのはCDK3であることが明らかにされた。興味深いことに、これらの残基はG1期からS期への移行時のサイクリンD/CDK4によるリン酸化の標的部位でもある。このことはCDK3の活性はCDK4の機能によって補償される可能性を示唆しているが、このことはCDK3を欠失しているがCDK4は機能している細胞ではG0期からの脱出は遅れるだけであり、永久に阻害されるわけではないことからも裏付けられる。ただし、リン酸化標的の重複にもかかわらず、G0期からG1期への最も効率的な移行にはCDK3が必要であるようである。
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