ゴルジ小胞と小胞輸送
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/16 06:20 UTC 版)
ゴルジ体の各層・網間では、常にゴルジ小胞 (Golgi vesicle) の生成(出芽)、交換と取込み(融合)を繰り返しており、これを通じて各層間の物質の授受が行われている。同様の機作で周辺の細胞小器官との物質の授受(特に小胞体-CGN 間)や TGN からの分泌小胞、分泌顆粒、リソソームおよびエンドソームの形成なども行う。ゴルジ体のタンパク質の分類と輸送についてはある程度の知見が得られているが、まだ不明な点が多い。 ゴルジ小胞の交換は小胞輸送と呼ばれる。小胞輸送の機能としては小胞体からゴルジ体を通じて細胞内外に分泌される方向が主で、通常の輸送経路と呼ばれる。分泌タンパク質などはこの小胞の内腔に取込まれ、あるいは膜タンパク質として輸送される。 これと平行に逆方向の輸送を行う経路も存在し、返送経路と呼ばれる。小胞体に存在するべきタンパク質(小胞体タンパク質)も通常の輸送経路によりゴルジ体へと移行するが、ゴルジ体ではこれらのタンパク質に存在する小胞体保留シグナルを認識し、これをゴルジ小胞に集めて返送経路に乗せ、小胞体に返す働きがある。小胞体保留シグナル (ER retention signal) はシグナルペプチドの一種で、ペプチドのC末端に存在する-Lys-Asp-Glu-coo-あるいはこれに類似した配列でKDEL配列とも呼ばれる。実際には小胞体やCGNの膜タンパク質として存在するKDEL受容体により行われる。返送される小胞体タンパク質の中には結合タンパク質(BiP; Binding Protein)と呼ばれるタンパク質があり、これはタンパク質としての畳み込みに問題があるペプチドを識別し結合する働きがある。結果として小胞体からゴルジ体へと誤って輸送された未熟なタンパク質などを小胞体に送り返す機能を果たしている。 なお、通常の輸送経路はプレフェルジンAにより、また、返送経路はノコダゾールにより阻害される。 小胞の輸送には常時一定の速度で行われる構成的なバルク輸送と、外部からの刺激によって始まる調整的なものがある。バルク輸送の速度は、粗面小胞体にタンパク質を注入し、その半分の量が細胞外へ運び出される時間でおおむね1〜3時間程度であるが、ごく短いペプチドでは10分程度と速くなる。分泌小胞はバルク輸送に、分泌顆粒は調整的輸送の際に現れる。
※この「ゴルジ小胞と小胞輸送」の解説は、「ゴルジ体」の解説の一部です。
「ゴルジ小胞と小胞輸送」を含む「ゴルジ体」の記事については、「ゴルジ体」の概要を参照ください。
- ゴルジ小胞と小胞輸送のページへのリンク