ゲノム合成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/24 08:12 UTC 版)
試験管の中でオリゴヌクレオチド(小規模なDNA断片)を化学合成する技術は、1950年代から存在した。 2003年、J.C.ベンター研究所のクレイグ・ヴェンターらは、大腸菌のDNA合成機構を利用して、ウイルスのDNA断片をつなぎ合わせ完全なゲノムを合成することに成功した。 2005年、より大きい生物でもゲノムを丸ごと合成する技術が日米の研究機関で独立に開発された。慶應大学/三菱化学生命研究所の枯草菌を用いるシステムと、ベンター研究所の酵母菌を用いるシステムである 2007年、クレイグ・ヴェンターらは、酵母菌を利用してDNAの断片をつなぎ合わせて、マイコプラズマ・ジェニタリウムという細菌のゲノムを構築した。 また同年、慶應大学の板谷光泰らは、枯草菌を利用して短いDNAをつなぎ合わせて、マウスのミトコンドリアゲノムおよびイネの葉緑体ゲノムを再構築した。 2010年5月、ベンター研究所はマイコプラズマ・ミコイデスという細菌のゲノムを人工合成し、別種の細菌のマイコプラズマ・カプリコルムに移植して、移植先の細胞を制御することに成功した。合成ゲノムによって細胞の制御に成功したのは世界初である。これは、ゲノムを人工的に設計・合成し、細胞に移植して、細胞が機能することを実証したもので、合成生物学の進展につながる成果となった。細胞膜や細胞内の器官は人工合成していないため完全な「人工生命」ではないが、これらの研究がさらに進めば、合成生命の誕生に行き着くことになる。
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