キとミ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/04 14:01 UTC 版)
日本神話は、国産み・神産みに携わる男神をイザナ「ギ」、女神をイザナ「ミ」と対で呼んでいるが、これは上代日本人の記憶として「キ」は男性語尾、「ミ」は女性語尾であるという認識が現れたものと見ることができ、「キ」の付く氏族始祖の中には「ミ」のつく女性も見出される。但馬氏族の祖に女性の「サキツミ(佐伎都美、前津見、前津耳)」が、男性の「ヒナラキ(比那良岐)」とともに残されている。古代のヒメヒコ制の視点からはサキツミがヒナラキと共に但馬地方を治めていた可能性が指摘できる。あるいはヒメヒコ制が広がる以前の呪術的首長としての「ミ」と軍事的首長としての「キ」の存在とみることもできる。 古代日本の呪術的首長としての「ミ」は男性にも女性にも存在したが、軍事的首長「キ」は男性に限られる。この観点から能登国のクシイナダキヒメ(久志伊奈太伎比咩神社)を見ると、次のような解釈が可能である。クシイナダキヒメ神は「クシ」と「イナダキ」に「ヒメ」の称号が結合した名前である。「クシ(奇)」は美称、「イナダキ」は男性名称、「ヒメ」は女性名称語尾となる。一人の神名に男性名称と女性名称語尾が結合するのは不自然である。この不自然さをなくす解釈としては、男性神の「クシイナダキ」と女性神の「ヒメクシイナダヒメ」神の二柱の神名が合わされて一つの神社名となったとすることである。この解釈が正しければ、軍事的首長「キ」が呪術的首長「ヒメ」と並立して能登地方に存在した可能性を示すものとなる。
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