ウイルスmRNAと遺伝子の複製
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/07 09:53 UTC 版)
「インフルエンザウイルス」の記事における「ウイルスmRNAと遺伝子の複製」の解説
細胞質に放出されたウイルス遺伝子にはNP・PA・PB1・PB2が結合してリボ核タンパク質(RNP)の状態にあるが、次にこの複合体は核内に移行し(NPの作用と考えられている)、ウイルスの材料であるウイルス蛋白とウイルス遺伝子の合成を始める。ただしインフルエンザウイルスはタンパク質合成に必要なmRNAを持っていないため、まずはmRNAの合成が行われる。 mRNAの合成には、mRNA複製を開始するためのプライマー構造や、mRNAの終了を意味するpoly A終末が必須である。しかしながらインフルエンザウイルスの遺伝子上にはこれらが存在しない。このためインフルエンザウイルスは、PB2の働きによって、宿主細胞がDNAから作り出したmRNAを切断してプライマーとなるキャップ構造とpoly A構造を切り取り、それを自身の遺伝子に結合させてmRNAの合成を行うという、独特の方法でmRNA合成を行う。要するに、ウイルスのリボ核タンパク質は、宿主のmRNAの一部を拝借して、ウイルスmRNAを作り出す。この機構はキャップ・スナッチング (cap snatching) と呼ばれる。この方法によって合成されたmRNAは、宿主が作り出したmRNAと同様に処理されて、そこからウイルス粒子の材料になるタンパク質が大量に合成される。 一方、ウイルス粒子のもう1つの「材料」となる、ウイルス遺伝子も同時に大量に複製される。この過程はmRNA合成とは異なり、ウイルス遺伝子の全長を複製する必要があるため、上とは別の機構によって、マイナス鎖RNA→プラス鎖RNA→マイナス鎖RNAという順序で合成されると考えられている。その機構についてはMCM複合体などが関与していることなどは判っているが、具体的にはまだよく判っていない。 遺伝子の複製過程で、1万〜2万回に1回ほどの確率でミスが発生する。この確率はヒトの生物などと比べると非常に高く、新たな特徴を持つウイルスが生まれやすい原因となっている。
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