イブン・アル・マンスールと二人の乙女の物語(第346夜 - 第353夜)
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「千夜一夜物語のあらすじ」の記事における「イブン・アル・マンスールと二人の乙女の物語(第346夜 - 第353夜)」の解説
教王アル・ラシードはその夜、眠れなくて退屈をもてあましていた。アル・ラシードと太刀持ちマスルールは、いたずらじじいイブン・アル・マンスールをつかまえて、おもしろい話を所望する。 イブン・アル・マンスール老がバスラの町を散策していると、迷って大きな屋敷の前に出た。門の前で休んでいると、中にいた乙女が悲しげな様子で歌をうたっている。のぞき見したことを責める乙女と言葉を交わしていると、老は、ここがもと親友でバスラの宝石商の総代、アリ・ベン・ムハンマドの家だと思い出した。乙女は娘のバドルで、悲しんでいたのは、恋人であるシャイバーン族の族長ジョバイール公が、彼女に女奴隷とのレズ疑惑をかけて冷たくなったためである。 仲裁を申し出た老は、ジョバイール公の屋敷を訪ねて饗応を受ける。しかし不審なことに、盛大な宴の最中なのに、歌と音楽がいっさい聞こえてこないのだ。理由をただすと、ジョバイール公は女奴隷を呼んで歌うようにいいつける。しかし女奴隷は、主人が歌を嫌っていることから苦悩し、気絶して倒れ、あなたのせいで主人が苦しむのだ、と老をなじる。老はむなしくバドルの家へもどった。 翌年、またバスラを訪れた老は、この恋の結末を知ろうとバドルの家を訪ねる。すると家には墓が建っており、バドルは死んでしまったように思われた。次にジョバイール公の屋敷に行くと荒れ放題になっており、公はすっかり病みついている。明らかな恋の病であり、ジョバイール公は老に手紙を託し、仲裁を頼んだ。ふたたびバドルの家にゆくと、バドルは生きていて、喪服姿である。死んだのは女奴隷の方だった。 じつは、最初はバドルを突き放していたジョバイール公だったが、徐々にバドルに対する愛しさをつのらせ、逆にバドルの方は、時間とともに冷静さを取り戻していたのだった。この一年のあいだに、すっかり立場が逆転していたのだ。老の説得によってバドルはジョバイール公を許し、ふたりは結婚する。老がこの騒動のきっかけを尋ねると、バドルと女奴隷が船で遊んでいたとき、ジョバイール公をからかうような歌をうたっていたと、船頭が公に報告したことが原因であった。 イブン・アル・マンスール老がここまで語ったとき、教王アル・ラシードは寝息をたてていた。
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