アメリカウナギとは? わかりやすく解説

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アメリカウナギ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/11 22:22 UTC 版)

アメリカウナギ
アメリカウナギ Anguilla rostrata
保全状況評価[1]
ENDANGERED
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: ウナギ目 Anguilliformes
: ウナギ科 Anguillidae
: ウナギ属 Anguilla
: アメリカウナギ A. rostrata
学名
Anguilla rostrata
(Lesueur, 1817)[1]
英名
American eel[1]

アメリカウナギ (Anguilla rostrata) は、条鰭綱ウナギ目ウナギ科ウナギ属に分類される魚類。

体色には変異があり、オリーブグリーンに暗部が茶色のものから緑掛かった黄色に明灰色または白色の腹部を持っているものまでいる。透明度の高い水域産のウナギはタンニン酸成分を含んだ暗い水流産のものよりも明るい傾向がある[2]

淡水や河口に生息しており、産卵のためサルガッソ海へ向かうときのみそれらの生息域を離れて大西洋に入る[3]。産卵は外洋で行われ、はそこで孵化する。メスは4百万もの浮遊性の卵を産み、産卵後は死亡する。卵が孵化すると初期段階の幼生はレプトケファルス幼生へと成長して北米大陸へ向かい、そこでシラスウナギに変態して淡水域に入り、性的成熟を迎えるまでに黄色いウナギへと成長する。

チェサピーク湾ハドソン川から北はセントローレンス川までの大西洋岸で見られる。メキシコ湾東部の河川系やさらに南の地域にも存在する。主に夜間に狩を行い、日中は水深がおよそ5-6フィートの岸に近い泥地・砂地・砂利の中に隠れている。甲殻類水生昆虫・小型昆虫、そして恐らくは口に出来る水生生物ならば何でも食べる[4]

アメリカウナギは東海岸沿いの様々な地域で経済的に重要であり、その用途はシマスズキなどスポーツフィッシングの釣り餌や、食用である。成体前段階であるシラスウナギも捕獲され養殖用に販売されていたが、現在ではほとんどの地域で制限されている。

分布

北アメリカ大陸大西洋岸(メキシコ湾岸・カリブ海沿岸を含む)、西インド諸島グリーンランド西部、コロンビアベネズエラ[1]

人間との関係

ダム建設による遡上の阻害や、降海時に水力発電所のタービンにまきこまれる事故などにより生息数は減少している[1]。東アジアでのウナギ類の需要増加に伴う稚魚の密漁PCBマイレックス・農薬などによる汚染、外来の寄生虫Anguillicola crassusなどによる影響も懸念されている[1]

ウナギはかつては河川に豊富に存在し、原住民にとっての重要な水産資源であった。水力発電ダムの建設が彼らの回遊を阻害し、多くの分水界で地域的な絶滅を引き起こした。例えばカナダでは、セントローレンス川とオタワ川のウナギは大幅に減少している[5]

2025年世界自然保護基金(WWF)ジャパンと中央大学は、日本国内で販売されたウナギの蒲焼133サンプルのDNA分析結果より、約4割がアメリカウナギだったと発表した。中国産と表示されていた蒲焼サンプル82点の半分以上がアメリカウナギで、ヨーロッパウナギも含まれていた。絶滅の恐れのあるニホンウナギヨーロッパウナギに代わり稚魚の違法取引が問題化しているアメリカウナギが、日本で大量消費されている実態が明らかになった。アメリカウナギの稚魚は中国で養殖種苗に利用され,成長したウナギは日本に中国産として輸入されている。WWFジャパンは、ウナギを大量消費する日本が違法なアメリカウナギ漁業を支えている可能性を指摘している[6][7]

2025年6月欧州連合は、2007年以来取引規制が実施されているヨーロッパウナギに加え、既知のウナギ類19種・亜種全てをワシントン条約附属書IIに掲載する提案を正式に提出した。生きたシラスウナギだけでなくかば焼きなどの加工品も対象とし、輸出国に対し合法的な捕獲の証明を提示し輸出許可を取得することを義務付ける内容で、2025年ワシントン条約締約国会議で採択されれば2027年6月に発効する[8][9]

また2025年8月の論文では、世界11カ国・地域で販売されるかば焼きなどのウナギ製品をDNA分析し、99%以上は国際自然保護連合(IUCN)が絶滅危惧とするアメリカウナギ、ニホンウナギヨーロッパウナギであることを証明した。研究者らはアジア・欧米・オセアニアの11カ国・地域の26都市で2023~25年に購入したウナギ加工品や生鮮品計282点を特定し、その内訳はアメリカウナギ154点・ニホンウナギ120点・ヨーロッパウナギ4点・その他4点で、それを基に世界全体の流通割合を推測すると、アメリカウナギ75.3%、ニホンウナギ18.0%、ヨーロッパウナギ6.7%だった。同研究はまた1人あたりのウナギ供給量世界一は日本であることも明らかにしている[10][11][12][13]

脚注

  1. ^ a b c d e f Jacoby, D., Casselman, J., DeLucia, M. & Gollock, M. 2017. Anguilla rostrata (amended version of 2014 assessment). The IUCN Red List of Threatened Species 2017: e.T191108A121739077. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2017-3.RLTS.T191108A121739077.en. Downloaded on 19 August 2020.
  2. ^ McCord, John W. American Eel. South Carolina Department of Natural Resources
  3. ^ Nuwer, Rachel (December 7, 2015) Closing In on Where Eels Go to Connect. New York Times
  4. ^ NOAA Great Lakes Environmental Research Laboratory
  5. ^ American Eel Anguilla rostrata in Canada. COSEWIC Assessment and Status Report 2006. ISBN 0-662-43225-8
  6. ^ ウナギ類の資源管理・流通の 現状について:ウナギ類は世界各地で消費されていますが、多くの種で資源の減少が深刻な状況にあります。特にニホンウナギ、 ヨーロッパウナギ、アメリカウナギはいずれも絶滅危惧種に指定されているにもかかわらず、IUU漁業や違法取引 が後を絶ちません。ウナギの最大の消費国の一つである日本には、採捕、養殖、流通における責任ある対応が求め られます。また、資源の持続的な利用に向け、関係国・地域による連携が不可欠です。”. 2025年6月7日閲覧。
  7. ^ ウナギ、国内販売の4割は北米種 稚魚の違法取引に懸念:東京新聞デジタル”. 東京新聞デジタル. 2025年6月8日閲覧。
  8. ^ EU Proposes Eel Export Restrictions Under Wildlife Treaty” (英語) (2025年6月28日). 2025年7月3日閲覧。
  9. ^ 鰻の成瀬社長「コメもウナギもピンチ」 EUが取引規制案”. 日本経済新聞 (2025年6月26日). 2025年7月3日閲覧。
  10. ^ Kaifu, Kenzo; Han, Yu-San; Shiraishi, Hiromi (2025-08-15). “Global consumption of threatened freshwater eels revealed by integrating DNA barcoding, production data, and trade statistics” (英語). Scientific Reports 15 (1): 29968. doi:10.1038/s41598-025-15458-y. ISSN 2045-2322. https://www.nature.com/articles/s41598-025-15458-y. 
  11. ^ 世界規模で絶滅危惧種のウナギ消費の実態を把握 DNAバーコーディングと生産・貿易データを組み合わせた分析により「どの国・地域で」「どの種のウナギ」が消費されているのかを解明 |”. 中央大学. 2025年9月11日閲覧。
  12. ^ <ウナギ>消費の99%が絶滅危惧種3種に集中? DNA解析と統計で消費実態が判明 - サカナト” (2025年8月25日). 2025年9月11日閲覧。
  13. ^ 産経新聞 (2025年9月11日). “ウナギ製品「99%は絶滅危惧種」 中央大と台湾大が世界の流通量をDNA分析”. 産経新聞:産経ニュース. 2025年9月11日閲覧。


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