アッカド語楔形文字
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/13 18:21 UTC 版)
アッカド語の表記は、シュメール語のシュメール語楔形文字表記法を借用したものであるが、アッシリアとバビロニアで独立して発達したために両者の間には相当な違いがある。現代の文字表では600字ほどに分けられているが、方言による差異が大きい。表語文字、表音文字(音節文字)、限定符に分類されるが、ひとつの文字が複数の役割を果たすことがある。表語文字は原則としてシュメール語の文字をアッカド語で訓読みする。たとえばシュメール語のLUGAL「王」という文字は、同じ意味を持つアッカド語でšarrumと読まなければならない。表語文字にはしばしば読みを補完するための表音文字が附属する。 膠着語的なシュメール語と無関係な屈折語であるアッカド語の表記に楔形文字は不向きであり、またシュメール語にない音の区別は不完全にしか表すことができなかった。例えば無声音、有声音、強勢音の区別は不完全であり、声門閉鎖音を表記するための専用の文字は中期以降に初めて出現し、母音のiとeもしばしば区別されなかった。また複数の字が同じ音を表す同音性や、逆にひとつの文字が複数の音を表す多音性の問題もあった。 CVC型の音節を表記するのにCV-VCのように分けて書く書き方があり、たとえば「王」を意味するšarrumを音節文字で表記するのに、šar-rum、ša-ar-rum、šar-ru-um、ša-ar-ru-um、ša-rumなどのさまざまな書き方が可能だった。どの書き方をするかは筆記者の好みによった。母音の長短は古アッカド語と古アッシリア語では区別されなかったが、古バビロニア語は余分な母音字を加える方法が発達した。同様に重子音も子音を重ねることで表記されるようになった。
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