アウディ・V8
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/11 16:39 UTC 版)
アウディ・V8 | |
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![]() | |
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概要 | |
販売期間 | 1988年 - 1994年 |
ボディ | |
ボディタイプ | 4ドア セダン |
駆動方式 | 4WD |
パワートレイン | |
変速機 |
5速MT 6速MT 4速AT |
車両寸法 | |
ホイールベース | 2,702mm |
全長 | 4,861mm |
全幅 | 1,814mm |
全高 | 1,420mm |
系譜 | |
後継 | アウディ・A8 |
アウディ・V8 (Audi V8) は、ドイツの自動車メーカーであるアウディがかつて生産していた高級乗用車である。
概要
1988年、アウディのフラグシップとして登場。100/200(C3系)のプラットフォームを流用し、外装でもフロントガラス、フロントドア、トランクリッドなどのパーツはC3系と共用する。
エンジンは新設計のV型8気筒DOHC(フォーカム)エンジンを搭載し、3.6Lの排気量から250馬力を発生させた。駆動方式はこのクラス初となる四輪駆動である。トランスミッションはVWアウディグループ初の4速ATを採用し、前年デビューの80(B3系)と同じく誤操作防止のためにジグザグ状のスタッガード式ゲートを採用した。
なお、当車をベースにしたステーションワゴンも1台製造され、当時のフォルクスワーゲンの代表であったフェルディナント・ピエヒの妻の専用車として製造された。また、本国向けにはロングボディー仕様も存在した。
1990年にマイナーチェンジを行い、プラットフォームをアウディ・100(C4モデル)をベースとしたものに変更した。これに伴い全長、ホイールベースなどに若干変更が出るが、外観の変更はない。同時にロングホイールベース版を発売。
1992年に2度目のマイナーチェンジを行い、エンジンを4.2Lに拡大、最高出力は280馬力に向上した。
1994年、A8へモデルチェンジ。このモデルから現在に至る「A#」の新呼称が採用された。
日本仕様車
バブル絶頂期の1989年末にヤナセから発売。ラインナップは4速AT仕様のみである(本国では5速MTが標準)。また、右ハンドル仕様のV8自体は生産されていたものの、日本向けは左ハンドル仕様のみとされた。980万円という価格は出力的にやや格下のBMW・735iや、同じくヤナセが発売していたメルセデス・ベンツ・300SEと同等で、同クラスの輸入車には優位性を見出せる価格であった。
しかし、同時期に国内の2大メーカーが発表した高級車トヨタ・セルシオ、日産・インフィニティQ45はさらに低価格かつあらゆる部分でV8と同程度かそれ以上の性能を有したために、知名度・話題性は完全に両者に取られる形となった。
1991年にプラットフォーム変更のマイナーチェンジ、1992年にエンジン換装及びダブルエアバッグ装備のマイナーチェンジを施したが、同じ時期にメルセデスはSクラスのフルモデルチェンジを行い、BMWもV8エンジンを投入するなど攻勢を強めたため販売不振となり、1993年モデルを最後に販売を打ち切った。
- V8クワトロ(1989年-1991年)
- V型8気筒 DOHCエンジン 3,562cc、250ps/5,800rpm、34.7kg·m/4,000rpm、4速AT
- V8クワトロ(1991年-1993年)
- V型8気筒 DOHCエンジン 4,172cc、280ps/5,800rpm、40.7kg·m/4,000rpm、4速AT
V8クワトロ DTM
アウディ・V8クワトロ DTM(1990) | |
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![]() V8クワトロ DTM(1990年仕様) | |
ボディ | |
エンジン位置 | 前 |
駆動方式 | 4WD |
パワートレイン | |
エンジン | V8 4バルブ 3,561.8 cc[1] |
最高出力 | 400 ps[2] |
変速機 | アウディ製 6速[2] |
サスペンション | |
前 | マクファーソンストラット[2] |
後 | ダブルウィッシュボーン[2] |
車両寸法 | |
ホイールベース | 2,703 mm[2] |
全長 | 4,874 mm[2] |
全幅 | 1,814 mm[2] |
全高 | 1,335 mm[2] |
車両重量 | 1,220 kg[2] |
その他 | |
タイヤ | ダンロップ[2] |
V8クワトロ DTM(V8 Quattro DTM)は、アウディが1990年からドイツツーリングカー選手権(DTM)参戦するために開発したコンペティション・カーである。
1987年限りで世界ラリー選手権(WRC)を含むラリー活動から撤退したアウディはサーキットレースに矛先を転じ、アメリカで新たなモータースポーツ活動を開始した。1988年にはアメリカのTrans-Amシリーズに200クワトロで参戦しタイトルを獲得。翌1989年には90クワトロでIMSA GTOクラスに進出して活躍した[3]。サーキットでも4WDマシンの優秀さを証明したアウディは1990年、DTMへの参戦を開始した。当時DTMで活躍していたBMWやメルセデス・ベンツは小型セダンでDTMを戦っておりアウディも90クワトロでの参戦を検討したが、シーズンの開幕までにホモロゲーションの取得に必要な12か月で5000台の生産をクリアすることが難しい状況であったため、高級車のV8をコンペティション仕様に仕立て上げて参戦することになった[4][5]。また登録に500台の追加生産が必要なエボリューションモデルも製造されなかった[6]。
1990年、アウディはシュミット・モトール・シュポルト(SMS)からハンス=ヨアヒム・スタックの1台体制でDTMに臨んだ。アウディは参戦初年度をテスト期間と考えていたが[7]、シーズン前半で第4戦 アヴス、第6戦 ヴンストルフで4勝をあげ、有力なコンテンダーであることを自ら証明した[8]。その後ドイツ・ナショナル・モータースポーツ協会(ONS)がV8クワトロの最低重量を1220㎏から1300㎏に引き上げたことから成績が伸び悩んだが[9]、最低重量が1250㎏に引き下げられた最終戦 ホッケンハイムにSMSはストック、ヴァルター・ロール、フランク・イェリンスキーの3台体制で挑み、連勝したストックが参戦1年目でドライバーズ・チャンピオンを獲得した[10][11]。

1991年はSMSに加えてアウディ・ツェントラム・ロイトリンゲン(AZR)から4台をエントリーさせた。1991年仕様のV8クワトロはフロントとリヤにスポイラーを装備し、エンジン出力も42馬力向上し442馬力を発生したが、最低重量は前年の活躍の結果BMWとメルセデスより300㎏以上重い1290㎏に設定された[12][13]。この最低重量の影響でシーズン序盤アウディの成績は振るわなかったが、第5戦 ヴンストルフからV8クワトロの最低重量が1250㎏に軽減されて以降アウディは競争力を取り戻した[14][15]。その結果、最終戦 ホッケンハイムでAZRのフランク・ビエラがメルセデスのクラウス・ルートヴィッヒを逆転しドライバーズ・タイトルを獲得。ビエラと同じくシーズン4勝をあげたスタックもドライバーズ・ランキングで3位のリザルトを残した[16]。
1992年はチーム、ドライバーとも前年と変わらず2チーム4台エントリーの体制で3年目のシーズンに臨んだ。最低重量は2年連続でタイトルを獲得した結果1300㎏とされた[17]。1992年シーズン序盤、アウディの成績は低迷し第2戦 ニュルブルクリンクヒート1でビエラがあげた1勝のみにとどまった[18]。その後、6月23日にONSのクランクシャフトのレギュレーション違反の指摘に反発したアウディは、第6戦 ニュルブルクリンクを最後にDTMから撤退した[19]。
脚注
- ^ ピーター・ニガード「ドイツ・ツーリングカーマシン解説」『RACING ON』第081号、武集書房、1990年、134頁。
- ^ a b c d e f g h i j ニガード 1990a, p. 134.
- ^ 「革新こそ、我が使命」『RACING ON』第417号、ニューズ出版、2007年、39頁。
- ^ ニガード 1990, p. 134.
- ^ 阪和明「ドイツ・ツーリングカー・レースのすべて」『CAR GRAPHIC』第368号、二玄社、1991年、281頁。
- ^ 阪 1991, p. 281.
- ^ 「NEWS NETWORK」『RACING ON』第069号、武集書房、1990年、38頁。
- ^ ピーター・ニガード「1990 ドイツ・ツーリングカー選手権レビュー」『RACING ON』第087号、武集書房、1990年、68頁。
- ^ ニガード 1990b, p. 69.
- ^ 「NEWS NETWORK」『RACING ON』第086号、武集書房、1990年、37頁。
- ^ ニガード 1990b, pp. 69‐70.
- ^ ピーター・ニガード「'91ドイツ&イギリス・ツーリングカー選手権プレビュー」『RACING ON』第098号、武集書房、1991年、70頁。
- ^ 阪 1991, p. 285.
- ^ ピーター・ニガード「ドイツ・ツーリングカー選手権シリーズ中間展望」『RACING ON』第106号、武集書房、1991年、122頁。
- ^ 阪 1991, p. 277.
- ^ ピーター・ニガード「最終戦'91ドイツ・ツーリングカー選手権レビュー」『RACING ON』第114号、武集書房、1992年、130頁。
- ^ ピーター・ニガード「'92ドイツ・ツーリングカー選手権プレビュー」『RACING ON』第120号、ニューズ出版、1992年、138頁。
- ^ ピーター・ニガード「'92ドイツ・ツーリングカー選手権レビュー」『RACING ON』第136号、ニューズ出版、1993年、82頁。
- ^ 「NEWS NETWORK」『RACING ON』第125号、ニューズ出版、1992年、36頁。
関連項目
1960年代 | 1970年代 | 1980年代 | 1990年代 | 2000年代 | 2010年代 | 2020年代 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 0 | 1 | 2 | 3 | |
スーパーミニ | 50 | A2 | A1 | A1 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Cセグメント | A3 | A3 | A3 | A3 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
S3 | S3 | S3 | S3 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Dセグメント | F103 | 80 | 80 | 80 | 80 | A4 | A4 | A4 | A4 | A4 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
90 | 90 | S2 | S4 | S4 | S4 | S4 | S4 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
RS2 | RS4 | RS4 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Eセグメント | 100 | 100 | 100 | 100 | A6 | A6 | A6 | A6 | A6 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
200 | 200 | S4 | S6 | S6 | S6 | S6 | S6 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
RS6 | RS6 | RS6 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Fセグメント | V8 | A8 | A8 | A8 | A8 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
S8 | S8 | S8 | S8 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
クーペ | クーペ | 80クーペ | A5 | A5 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
クワトロ | S2クーペ | S5 | S5 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
RS5 | RS5 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
100クーペ | A7 | A7 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
e-tron GT | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
スポーツカー | TT | TT | TT | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
R8 | R8 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ワゴン | オールロードクワトロ | A6オールロードクワトロ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
A4オールロードクワトロ | A4オールロードクワトロ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
SUV | Q2 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Q3 | Q3 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Q4 e-tron | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Q5 | Q5 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
e-tron('21-'23)→Q8 e-tron('23-) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Q8 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Q7 | Q7 |
アウディV8
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/19 15:05 UTC 版)
詳細は「アウディ・V8」を参照 1988年、さらなる上級モデルとして、V型8気筒の3.6Lエンジンを搭載する「アウディ・V8」が発表された。200クアトロのシャーシを流用し、クラス初の4WDシステムや、大きなブレーキローターを内側からはさむブレーキキャリパーなどを搭載していた。
※この「アウディV8」の解説は、「アウディ・100」の解説の一部です。
「アウディV8」を含む「アウディ・100」の記事については、「アウディ・100」の概要を参照ください。
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