びんようきとは? わかりやすく解説

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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/26 14:40 UTC 版)

ガラス瓶

(びん)は、ガラス陶器を材料とした容器

概要

ワインボトル
液体を入れる標準的な形に、澱をビン内に留める工夫が見られる
メイソンジャーの中の保存食
ピクルス用広口瓶
再利用可能な、ジャム用広口瓶
抱き合わせたときに倒れにくくなるように作られた調味料用ビン

「瓶」あるいは「壜」は現代では主にガラス製の液体用容器(ガラス瓶)を指す[1](漢字の意味の変遷については後述)。原料のガラスはソーダ石灰ガラス鉛ガラスホウケイ酸ガラスに分けられるが、一般的な瓶にはソーダ石灰ガラスが用いられ、薬びんなどにはホウケイ酸ガラスが用いられている[2]

形状では頸部が相対的に長く細口の細口瓶と、頸部が短く広口の広口瓶がある[3]

具体的な種類としてビール瓶一升瓶牛乳瓶などがある。瓶の閉栓方法としては、機械栓、コルク栓、内ネジ栓、王冠栓、紙栓などがある[3]

名称

びんの漢字には「瓶」と「壜」がある[1]。「瓶」の読みは「ヘイ」から「ビン」に時代とともに変化したもので本来は陶器の壺、陶器一般を意味していた[1]。一方、「壜」の読みは本来は「タン」であり土器の壺を意味し、ガラス製の容器という意味は日本独自の用法とされている[1]

なお、ガラス瓶については、「壜」は人工吹きのものを指し、「瓶」は製瓶機によるものを指すともいう[4]

英語で、ボトル: bottle)というと口の細い瓶を指し、ジャー: jar)というと広口瓶を指す[注釈 1]。瓶に取っ手がある水差しに近い瓶は英語でジャグ: jug )である[注釈 2]

歴史

古代のガラス容器の製造技法は粘土で芯を作り、この芯を溶融したガラスに浸すか、柔らかくなったガラスを巻き付け、表面を再加熱してから固化させて芯を取り出す方法であった(コアガラス技法)[7]。紀元前1世紀頃には細長い中空の金属棒の先端に高温のガラスを付け、鋳型の中で吹いて成型する型吹きガラスびんの製造が行われるようになった[7]

ワイン用

古代からワインは大きな樽あるいは陶器の甕(かめ)、皮袋に貯蔵して、必要な分を直接杯や水差し容器に汲んで飲まれており、16世紀頃には陶器や金属、木材、皮などの飲料容器が用いられた[7]。1500年頃のイギリスの文献に容器の栓の材料としてコルクの記述があり、その頃にガラス製造技術の進展によってワイン用ボトルが作られるようになった[7]

ビール瓶

ビールも樽から直接杯に注ぐか、陶器または皮製の容器で保管されていたが、17世紀頃には自家製ビール(ホップの入らないエール)がガラス製のボトルで貯蔵されるようになった[7]

1892年にアメリカのウィリアム・ペインターが王冠栓を発明し、安価で簡単な構造ながらビールなど内圧がかかる飲料の密封ができるため広く普及した[7]

清涼飲料用

ヨーロッパでは17世紀後半には鉱泉を飲む風習があり、陶器などの容器で販売された[7]。18世紀後半には人工的に炭酸ガスを含ませたソーダ水が陶器ボトルで販売されるようになったが、すぐにガラス瓶が用いられるようになった[7]

1849年にはイギリスのハイラム・コッドが炭酸飲料用の「コッド・ボトル」と呼ばれるガラス玉を内蔵した瓶(いわゆるラムネ瓶)を発明した[7]

1900年頃には炭酸飲料の瓶にも王冠が使用されるようになった[7]

牛乳瓶

19世紀末にガラス瓶の製造が盛んになると、欧米では瓶入り牛乳が発売されるようになった[7]。1889年には今日用いられているような牛乳瓶が開発された[7]

食品用容器

ガラス容器は古代ローマから食品用容器に使用されたが長期保存用ではなかった[7]1804年になりニコラ・アペールがコルクで密封した瓶詰を発明した[7]1858年にはアメリカのメーソンがメーソン式広口びん(メイソンジャー)を特許登録した[7]

瓶容器の分類

ガラス瓶の分類として、中身による分類、内圧による分類(減圧用びんや常圧用びん)、回収・非回収(リターナブル瓶とワンウェイ瓶)、加工による分類(印刷びん、プラスチックコーティングびん、フッ酸で加工したフロストびん、フッ酸を使わないフロストコーティングびんなど)がある[2]

このうちリターナブル瓶とワンウェイ瓶は以下のように区別される。

リターナブル瓶[8](生きびん[8]
使用後にそのまま回収して洗浄し繰り返し使用するもの[8]。ビール瓶の大瓶で12回程度使用できる[8]
ワンウェイ瓶[8](カレット瓶[8]
使用後に色選別を行い、異物のないものを破砕して原材料のカレットに戻してから新しく再度作り直すもの[8]

瓶容器の特性

  • 化学的に安定した物質(不活性)で内容物を汚染することもなく耐熱性がある[9][10]
  • ガスバリアー性が高く気体あるいは水蒸気の透過性が全く無いため味の変質を抑制できる[9][10]
  • 透明で内容物がよく見え、また、表面には光沢があり質感も良い[9][10]。ただし、光線の影響を受けやすい[9]
    ガラス瓶の場合では内容物が透けて見えるという点からも利便性が高い。ラベルが剥がれていても、イチゴジャムマーマレードを取り違えなくて済む。しかし、この透明という性質は太陽光線で内容物が劣化し易い場合には欠点となる。このため光線を遮るために濃い色で着色している瓶も少なくない。
  • リサイクルが可能である[9]
  • 世界的に見て原料となる珪砂、ソーダ灰、石灰は豊富であり資源的に安定している[9]
  • 紙容器などに比べて重たい[9]
  • 衝撃や急激な温度変化に弱く割れやすい[9][10]
  • 密封・殺菌が容易でない[9]。ただし、缶詰は一度開けると容器としては元に戻らなくなるが、ねじ蓋のガラス瓶は閉め直すことができ容器を反復して利用することができるという利点がある。

その他の瓶

瓶はガラスや陶器、あるいはプラスチックなど加工時には可塑性を持ち加工後は硬質化する、安定した物性を持つ素材で作られるのが常である。ただし映画の撮影やコントなどでは、ガラス瓶の「強い衝撃を与えると割れ砕ける」という性質を安全に再現するために飴ガラスと呼ばれる、特別製の瓶が利用される。これは既存のビール瓶などに似せて作られるが、弱い力で割れ、また破片で怪我をし難い。この他ロジン(樹脂の一種)などでも同様の物品が作られる。ただしこれらは容器としての役には立たず、瓶の形をした壊れ易い物品に過ぎない。

プラスチックをはじめとした棄物が環境に与える影響を踏まえて、紙製ボトルの製作も試みられている。2019年には、ビール会社のカールスバーグが木質繊維のボトルにPET樹脂をコーティングしたビール容器の試作品を公表している[11]

脚注

注釈

  1. ^ 日本国内では、広口の魔法瓶や保温装置付きのご飯のおひつをジャーという。いずれも保温用の機能を有する。これは日本独特の用法(カタカナ英語)である。英語のjarは、広口の瓶やを一般的にいう言葉である[5]
  2. ^ 日本国内でジャグという語は、水筒や、アウトドア用の飲料水タンクを示す言葉として使われている[6]

出典

  1. ^ a b c d 「瓶」と「壜」は、どちらもビンですが、意味の違いや使い分けなどあるのでしょうか? 大修館書店、2020年5月25日閲覧。
  2. ^ a b 鹿毛 剛「基礎編(3)ガラスびん」『日皮協ジャーナル』第79巻、2018年2月。 
  3. ^ a b 森 貴教「牛乳瓶の分類と編年―福岡県を対象として―」『民具マンスリー』第50巻第6号、2017年、1-10頁。 
  4. ^ 次山 淳「近代奈良の牛乳壜」『奈良文化財研究所紀要』、独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所、2002年、38-39頁。 
  5. ^ 坂田俊策『NHKカタカナ英語うそ・ほんと』日本放送出版協会、1988年5月20日、35頁。 
  6. ^ ジャグの通販・ネットショッピング”. カカクコム. 2017年11月23日閲覧。
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 葛良 忠彦「ガラス容器の変遷」『日本包装学会誌』第21巻第5号、日本包装学会、2012年、400-412頁。 
  8. ^ a b c d e f g 集団回収量”. 明石市. 2025年8月25日閲覧。
  9. ^ a b c d e f g h i 日本食品保蔵科学会『食品保蔵・流通技術ハンドブック』建帛社 p.37 2006年
  10. ^ a b c d 日本包装学会『包装の事典』朝倉書店 p.125 2001年
  11. ^ カールスバーグ、ビール用紙パックの試作品をお披露目”. CNN (2019年10月11日). 2019年10月12日閲覧。

関連項目




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