そもそも条約批准に共謀罪は必要なのか
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/11 23:44 UTC 版)
「共謀罪」の記事における「そもそも条約批准に共謀罪は必要なのか」の解説
日本政府の説明によれば、国際組織犯罪防止条約は締約国に対し、重大な犯罪(長期4年以上の罪)の共謀(共謀罪)又は組織的な犯罪集団の活動への参加(参加罪)の少なくとも一方を犯罪とすることを明確に義務付けているとしたうえで、条約締結のための法整備を行うにあたり、参加罪ではなく、もう一方の選択肢である共謀罪を設けることが適当であると考えたと説明している。 したがって、共謀罪はそもそも国際組織犯罪防止条約を批准するために立法化されるという前提だったが、第164回国会の会期末近くになって、新たな論点として、そもそも批准目的の共謀罪は不要ではないかという新たな論点が浮上している。これは、国連薬物犯罪事務所(UNODC)が作成した「国際組織犯罪防止条約を実施するための立法ガイド」の内容に関係する。具体的には、パラグラフ51として英文で The options allow for effective action organized criminal groups, without requiring the introduction of either notion-conspiracy or criminal association-in States that do not have the relevant legal concept. となっている部分の解釈である。仮訳は これらの選択肢は、関連する法的概念を有していない国において、共謀又は犯罪の結社の概念のいずれかについてはその概念の導入を求めなくても、組織的な犯罪集団に対する効果的な措置を取ることを可能とするものである となっている。 反対派の意見 国連の立法ガイドの without ~ either A or B は両否定である。従って、現行の組織犯罪処罰法で足りると考えて共謀罪も参加罪も作らないまま条約を批准することは許容される。 「立法ガイド」パラグラフ51及び52が条約第5条第1項(a)について説明している内容は次のとおりと解すべきである(「立法ガイド」の外務省仮訳を誤訳であるとする立場)。旧来の「共謀罪(conspiracy)」や「参加罪(criminal association)」の法的概念(legal concept)のない国であっても、それらの法的概念をそのまま導入することまでは要求していない(パラグラフ51)。 少なくとも次のいずれかについて犯罪化を導入しさえすればよい(パラグラフ52)。「経済的その他物質的利益を得ることを目的として他の1名以上の者と重大な犯罪を犯すことを合意する行為(Agreeing with one or more persons to commit a serious crime for a finantial or other material benefit)」〔条約第5条第1項(a)(i)〕 「組織的犯罪集団の犯罪活動(Criminal activities of the organized criminal group)等に加わる行為(takes an active part in)」〔条約第5条第1項(a)(ii)〕 賛成派の意見 外務省は、仮訳が正しく、これは共謀罪と参加罪の片方のみ不要とする内容であるとする。 そもそも、条約にどう規定されているかがまず重要であるが、条約上、共謀罪と参加罪の双方又は一方を犯罪とする義務があることに疑いはない。立法ガイドがこれを覆すわけがなく、立法ガイドも、少なくともどちらかを選択する義務があることを当然の前提とし、片方を選択すればもう片方は選択しなくてもよいという意味で書かれたものである。このことは、立法ガイドを作成した国連の「UNODC」からも確認されている(外務省のホームページより:念のため、「立法ガイド」を作成した国連薬物犯罪事務所(UNODC)に対してご指摘のパラグラフの趣旨につき確認したところ、UNODCから、同パラグラフは共謀罪及び参加罪の双方とも必要でないことを意味するものではないとの回答を得ている)。
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