しぐれ来てはさみ忙しや蟹の市
作 者 |
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季 語 |
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季 節 |
冬 |
出 典 |
蟹の市 |
前 書 |
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評 言 |
平成5年、金沢市の台所、近江町市場での作。現在は、石川県輪島市にお住まいである。一糸は俳名。 2012年のカニ漁解禁は11月7日。ぞくぞく蟹(加能ガニ・香箱ガニ)が入荷され店頭に並ぶ。市場の初売りとなれば威勢のいい声が飛び交い押すな押すなの賑わいを見せる。時雨が来る頃、町びとはその醍醐味を待っている。電球の下、生きている蟹も際立つ。“はさみ”のしぐさは実は海を呼ぶカタチかも知れぬ。やがて、カニ名人が一気に、はさみごと茹で上げる。 一糸氏は、加藤楸邨との関わりが深い。楸邨の句の瑞瑞しさにひきつけられて投句を始め、その懐の深い人間味溢れる姿勢に我が句を打ち込もうと思った。楸邨は、若い頃から金沢にも縁が深く、句境を俳句らしい型に嵌めるいわゆる額縁俳句を排撃し、泥臭く真実感合の世界を追究した。その魅力が永遠に尽きないのである、との事。 昭和22年より俳句を始め、27年「寒雷」に入会。48年は田川飛旅子の「陸」創刊に同人参加。平成5年、石川県現代俳句協会初代会長に就任。現在顧問。 句集『郭公』(昭和50年刊)『蟹の市』(平成12年刊) 身を拭く海女に舟虫走る井戸ともし(S33年) 吊り鰊の目が生き海士の冬構へ(S35年) 郭公や子の手垢つく教師の父(S43年) はちめ焼く炉や生まの母影の父(S53年) 梨の花くぐりて飽きず一教師(S59年) 人民兵のかかへる鶏や霧過ぎゆく(S61年) 重油禍の海へ涸れざる滝落つる(H 9年) 余震なほ熊ん蜂巣を巨きくす(H19年) 初夢の楸邨砂漠を大股に(H21年) |
評 者 |
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備 考 |
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