『道徳と宗教の二源泉』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 04:02 UTC 版)
「アンリ・ベルクソン」の記事における「『道徳と宗教の二源泉』」の解説
こうした公的活動の激務のなかでも、ベルクソンの著作を書く意欲は衰えず、1932年に最後の主著として発表されたのが『道徳と宗教の二源泉』である。この著作では、社会進化論・意識論・自由意志論・生命論といったこれまでのベルクソンの議論を踏まえたうえで、人間が社会を構成する上での根本問題である道徳と宗教について「開かれた社会/閉じた社会」「静的宗教/動的宗教」「愛の飛躍("élan d'amour")」といった言葉を用いつつ、独自の考察を加えている。人間の知的営為に伴うように、創造的な(想像的な)働き「創話機能(function fabulatrice)」という営為がなされており、現実と未来、期待、希望とのバランスが回復されている。それが宗教と道徳の起源となっており、社会発展の原動力となってきたのである。ここには生命の進化の原理であるエラン・ヴィタールの人間社会版とも言える内容が展開されていて、大哲学者が晩年に人類に託した希望の書と呼べる内容になっている。また「創話機能」は、20世紀初期にフロイトにより発見された無意識の働きと、同時代的に繋がっており、後にはベルクソン研究も行ったジル・ドゥルーズによって、著作の中で結びあわされる。
※この「『道徳と宗教の二源泉』」の解説は、「アンリ・ベルクソン」の解説の一部です。
「『道徳と宗教の二源泉』」を含む「アンリ・ベルクソン」の記事については、「アンリ・ベルクソン」の概要を参照ください。
- 『道徳と宗教の二源泉』のページへのリンク