『私の居場所はどこにあるの?』
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「藤本由香里」の記事における「『私の居場所はどこにあるの?』」の解説
ポルノグラフィなどの研究と並行して、マンガ、とりわけ少女マンガや、レディースコミックの動向にも目を向ける。いまや少女マンガ論の古典となりつつある『私の居場所はどこにあるの? 少女マンガが映す心のかたち』(1998年)が、最初の単著刊行となる。 本書は、1970年代から1990年代末ごろまでの少女マンガの描写から、女性のセクシュアリティや価値観の変遷を女性の心理や内面に焦点をあてて分析したものである。藤本が少女マンガに目を向けるのは、読者である少女たちの価値観・意識(夢や欲望)の動向を、人気のある少女マンガが鋭敏に反映していると見るからである。30年にわたる少女たちの恋愛観、あるいは性描写などのセクシュアリティや、家族観、職業観の変化を分析し、同時に少女マンガで描かれる「やおい」やトランスジェンダー(性別越境)など性的指向に関する描写の変遷にも目を向ける。 精緻な分析は注目を浴び、先行の少女マンガ論であった荷宮和子『少女マンガの愛のゆくえ』(1994年)や横森理香『恋愛は少女マンガで教わった』とは一線を画し、女性のセクシュアリティ・性意識に着目した本格的少女マンガ論の嚆矢となり、今日(こんにち)でもなお、少女マンガ評論の新境地を拓いたと評される。 なお、本書を出版した年の八月、共同通信配信のコラムで斎藤美奈子著『紅一点論』の書評を発表。斎藤の着眼と分析のよさを高く評価し「知ることは、変わること。そのための強力な援護射撃」になる本だ、と述べてエールを送っている。
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