『マーリンの予言』と赤い竜・白い竜
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/01 04:50 UTC 版)
「マーリン」の記事における「『マーリンの予言』と赤い竜・白い竜」の解説
生まれて後、母は尼僧となり、マーリンは父も知らぬままカーマーゼン(「マーリンの砦」)という街で暮らしていた。ある時、暴君ヴォーティガンが、家臣の魔術師たちに唆されて、新しい塔の人柱とするために「一度も父がいたことがない若者」を連れてくるように部下に命じ、条件に合うマーリンとその母親が連れて来られた。母親の供述と宮廷学者のモーガンティアスによってマーリンの出生が明らかになると、それまで黙っていたマーリンは口を開いて、宮廷魔術師たちを無能であると看破し、新しい塔の建築がうまくいかないのは、人柱がいないからではなく、塔の地盤の下に池があり、その池に穴の空いた二つの石があって、それぞれの石に竜が眠っているからだと予言した。工事をしてみるとはたしてその通りであったので、人々は畏敬の念を抱いた。なお、この逸話は『カンブリア年代記』ではアンブロシウス・アウレリアヌスのものとされており、ジェフリーはそこから剽窃したものと思われる[要出典]。 ジェフリーはさらに列王史の7巻をまるごと『マーリンの予言』という予言詩に当てている。ジェフリーは、リンカン司教アレグザンダーらから請われて、ブリトン語(ウェールズ語)からラテン語に「翻訳」したと主張している。しかし、2007年時点で、この詩の原詩と思われるものは、ラテン語でもウェールズ語でも見つかっていない。なお、ウェールズ文化では(およびおそらくコーンウォール文化でも)、政治的な予言詩の作者をマルジン(マーリンのモデルの一人とされる半伝説的人物)に仮託する場合が多かった。 この巻では、ヴォーティガーンの眼の前で、前述の二匹の竜が目覚めて、白い竜と赤い竜が争い、赤い竜が負けて逃げ去る。王がマーリンに謎解きを求めると、マーリンは涙を流し、白い竜はヴォーティガーンが傭兵として呼び寄せたサクソン人を、赤い竜はブリテン諸国を表すのだと言う。続けて、目の前の光景のように、白い竜つまりサクソン人がこの島を征服するだろう——しかし、遠い未来、いつの日かきっと赤い竜たるブリトン人が再び立ち上がり、島を解放するだろう、と予言する。この後の予言は解読するのが困難であるが、後述するように王権の正統性の一部をマーリンに求めたテューダー朝では重視された。
※この「『マーリンの予言』と赤い竜・白い竜」の解説は、「マーリン」の解説の一部です。
「『マーリンの予言』と赤い竜・白い竜」を含む「マーリン」の記事については、「マーリン」の概要を参照ください。
- 『マーリンの予言』と赤い竜・白い竜のページへのリンク