「PISA上位国」イメージと現実
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 05:08 UTC 版)
「OECD生徒の学習到達度調査」の記事における「「PISA上位国」イメージと現実」の解説
ドイツや日本では、PISAの結果が、教育界や教育政策に危機感を煽る結果となり、教育政策で積極的に活用されていくという「PISAショック」が起きた。 ドイツでは2000年にPISAショックが起きると、それまで教育が州の直轄事項であり、連邦政府の介入はタブーとされていたのが、連邦政府がスムーズに教育に介入することになり、国家標準の学力評価が矢継ぎ早に導入されていった。 日本では2003年にPISAショックが起きると、不正確なデータ解釈に基づき、政治的意図を色濃く帯びた危機感が煽られ、それ以前からの改革案(全国学力テストを含む)の脱政治化に当たり、PISAが巧みに活用された。特に、ランキング上位国であったフィンランドの教育が理想化され、実態と異なるフィンランド教育像が形成されていった。これはオーストラリア、ドイツ、韓国でも同様であった。一方で、上海、シンガポール、台湾、香港、韓国などはランキング上位国であったが、競争や暗記テストなどの否定的なイメージがあったため、フィンランドのよう理想化されなかった。 同様に、PISAランキング上位国であったフィンランド、オーストラリア、イギリスや、その他のヨーロッパ諸国では、「PISAランキング上位国」のイメージが様々なアクターに活用され、政治的意味を獲得していった。 ヤン・ザオは、PISAで一位になった上海では、暗記中心の競争教育が現実であり、こうしたアジア の儒教的な標準テストと競争を基盤にした教育制度では、想像性、問題解決能力、企業家精神等は育まれないといい、PISAで好成績を収める国ほど、こどもたちは「未来の学力」を欠いていると主張する。 クリーブ・ディモックとチェン・タンによれば、PISAで好成績を収めたシンガポールは、学校や教員の裁量指標はOECDの平均値以下であり、 PISAが最善の方法として喧伝する分権化や教員の裁量の拡大は普遍的な成功モデルではない。
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