「ケルトの虎」後
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/13 14:39 UTC 版)
2008年にアイルランドが景気後退に入ったことが明確となったことで、不動産バブルの破裂や金融システム不安といった、「虎」の期間に定着した考え方の多くが破綻した。アイルランドは好景気のあとに多くの欠乏を抱えている。アイリッシュ・タイムズのコラムニストであるフィンタン・オトゥールは「ケルトの虎のあとのアイルランドは、十分な公共医療サービスも、子どもの飢餓の撲滅も、世界に通用するインフラストラクチャーも、満足な初等教育制度もない。さらにわれわれがこの混乱から脱する唯一の道である「イノベーション社会」、あるいは「知識経済」というものさえもないのである。」と述べている。つまり展望やリーダーシップが欠如していたために、「虎」の時代にカネをうまく使って社会に生かすことをしてこなかったというのである。 2009年、元首相のギャレット・フィッツジェラルドはアイルランドのひどい経済状態について、相次いだ「悲惨な」政策の失敗によるものであると政府を非難した。なかでも2000年から2003年にかけて、当時財務相だったチャーリー・マクリービィによって所得税が引き下げられた一方で歳出を48%増加させたことや、政府による住宅バブルの膨張を「とてつもない規模」で許容し、また促進させてきたことを槍玉に挙げた。 またノーベル賞を受賞したポール・クルーグマンは「今のままの景気後退の対応が続く限りは、アイルランドは実際のところ、世界の景気が回復してからの輸出主導の回復という望みしか選択肢がない」という厳しい見通しを示した。 2009年4月中旬、国際通貨基金はアイルランドに対してきわめて厳しい見通しを示した。それによるとアイルランド経済は2009年には8%、2010年には3%収縮し、またこの見通しさえもまだ楽観的なものだとした。 2009年4月28日に発表された ESRI のレポートでは、アイルランドの失業率は2010年に17%近くまで上昇すると予測されている。また ESRI は「われわれの予想では、アイルランド経済は2008年から2010年の3年間でおよそ14%収縮すると見ている。歴史的にも、国際的にもこのような景気後退は大規模なものである」としている。
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