LSD (薬物) LSD (薬物)の概要

LSD (薬物)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/16 17:51 UTC 版)

リゼルグ酸ジエチルアミド (LSD)
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
胎児危険度分類
  • US: C
法的規制
投与経路 経口、点滴静脈注射、目、筋肉注射
薬物動態データ
代謝肝臓
半減期3–5 時間[1][2]
排泄腎臓
識別
CAS番号
50-37-3
PubChem CID: 5761
IUPHAR/BPS 17
DrugBank DB04829
ChemSpider 5558
UNII 8NA5SWF92O
KEGG C07542
ChEBI CHEBI:6605
ChEMBL CHEMBL263881
日化辞番号 J9.239H
別名 LSD, LSD-25,
lysergide,
D-lysergic acid diethyl amide,
N,N-diethyl-D-lysergamide
化学的データ
化学式C20H25N3O
分子量323.43 g/mol
物理的データ
融点80 - 85 °C (176 - 185 °F)
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開発時のリゼルグ酸誘導体の系列における25番目の物質であったことからLSD-25とも略される。また、アシッド、エル、ドッツ、パープルヘイズ、ブルーヘブンなど様々な俗称がある。

LSDは化学合成されて作られるが、麦角菌ソライロアサガオハワイアン・ベービー・ウッドローズ等に含まれる麦角アルカロイドからも誘導される。

純粋な形態では透明な結晶[注釈 1] であるが、液体の形で製造することも可能であり、これを様々なものに垂らして使うことができるため、形状は水溶液を染みこませた紙片、錠剤、カプセル、ゼラチン等様々である。 日本では1970年頃から密輸を容易にするため紙にLSDをスポットしたペーパー・アシッドが出回り始め[3]、LSDの代名詞となった。

LSDは無臭(人間の場合)、無色、無味で極めて微量で効果を持ち、その効用は摂取量だけでなく、摂取経験や、精神状態、周囲の環境により大きく変化する(セッティングと呼ばれる)。一般にLSDは感覚や感情、記憶、時間が拡張、変化する体験を引き起こし、効能は摂取量や耐性によって、6時間から14時間ほど続く。

日本では1970年に麻薬に指定された。


注釈

  1. ^ このまま市場に出回ることはない
  2. ^ LSDの4つの環のうち2つはセロトニン分子の環系であり、セロトニンにつく側鎖はLSDの構造の一部に類似している
  3. ^ 化学合成のない当時、向精神物質は植物もしくは植物から製造されたものである
  4. ^ ベニテングタケには幻覚の他にも酔いを引き起こす作用もあり、ロシア人の征服によりアルコールが伝えられる以前まではアルコールの地位を占めるものであった[10]
  5. ^ この儀式の秘密を漏洩した者は死刑に処されたため、儀式の詳細は分かっていない[13]
  6. ^ 犯人は犯行現場の壁にで書いたが、真偽の程は定かではない

出典

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