FGM-148 ジャベリン FGM-148 ジャベリンの概要

FGM-148 ジャベリン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/24 01:24 UTC 版)

FGM-148 ジャベリン
発射されたFGM-148 ジャベリン
種類 対戦車ミサイル
製造国 アメリカ合衆国
製造 マーティン・マリエッタテキサス・インスツルメンツ
(現在はロッキード・マーティンレイセオン
性能諸元
ミサイル直径 127mm(ミサイル)、142mm(LTA)
ミサイル全長 1.1m(ミサイル)、1.2m(LTA)
ミサイル重量 22.3kg
(6.4kg(CLU)+4.1kg(LTA)+11.8kg(ミサイル)
弾頭 8.4kgタンデム成形炸薬弾頭
射程 65(ダイレクトアタック)/150(トップアタック)-2,000m[1]
推進方式 固体燃料ロケット
誘導方式 赤外線画像(IIR)・自律誘導
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概要

FGM-148のバックブラスト(発射時の後方への爆炎)
弾着の様子

主目標は戦車などの装甲戦闘車両であるが、建築物野戦築城、さらには低空を飛行するヘリコプターへの攻撃能力も備える。完全な「撃ちっ放し」(ファイア・アンド・フォーゲット)機能、発射前のロックオン・自律誘導能力、バックブラストを抑え室内などからでも発射できる能力などを特長とする。携帯時や運用時に精密な発射管制装置の部分を損傷させないために、ボルトに装着したナットのようなシルエットを持つリテーナーを前後部もしくは後部のみに装着して供給される。

ミサイル弾道は、装甲車両に対して装甲の薄い上部を狙うトップアタック英語版モードと、建築物などに直撃させるためのダイレクトアタックモードの2つを選択できる。最高飛翔高度は、トップアタックモードでは高度150m、ダイレクトアタックモードでは高度50m である。射程は、初期バージョンでは 2,000m で、最新バージョンでは 2,500m である。ミサイルは、赤外線画像追尾と内蔵コンピュータによって、事前に捕捉した目標に向かって自律誘導される。メーカー発表によれば、講習直後のオペレーターでも94%の命中率を持つという。

弾頭は、タンデム成形炸薬を備えている。これは、メイン弾頭の前に、より小さなサブ弾頭を配置したもので、サブ弾頭により爆発反応装甲などの増加装甲を無力化した後にメイン弾頭が主装甲を貫通するように設計されている。

FGM-148は、CLU(Command Launch Unit)と呼ばれる発射指揮装置の部分と、弾薬の部分(LTA(Launch Tube Assembly)と呼ばれる発射筒体と、発射筒に収められたミサイル本体)から構成されている。総重量は22キログラム。ミサイル本体は射出用ロケットモーターによって発射筒から押し出され、数m飛翔した後に安定翼が開き、同時に飛行用ロケットモーターが点火される。これにより、バックブラストによって射手の位置が露見する可能性を抑え、後方が塞がっている室内(高さ7フィートx幅12フィートx奥行15フィート)などからも安全に発射することができる。ミサイルは完全自律誘導のため、射手は速やかに退避することができる。

運用は1名でも可能であるが、通常は射手と弾薬手の2名で行う。弾薬手は、発射時の周囲警戒も担当する。

2018年には車載式遠隔操作銃塔(RWS)に搭載したCROWS-Jの運用試験が行われた。

開発・配備

FGM-148を携帯し行軍するアメリカ海兵隊員(アフガニスタン
訓練にて発射されるFGM-148

1983年より開発構想が検討され、1991年に初の試射が行われた。アメリカ軍への配備開始は1996年のことである。

FGM-148の開発・製造はテキサス・インスツルメンツ社・マーティン・マリエッタ社(現在はそれぞれ、レイセオン社・ロッキード・マーティン社)の合弁企業であるJAVELIN社による。これまでに20,000基以上のミサイル本体と、3,000基以上のCLU(Command Launch Unit。分離可能な発射機と照準器のセットで、これによりFGM-148は安全な場所から目標を狙い、離れた場所にある発射機からミサイルを発射するといった運用が可能になる)が納入されている。

2002年には、台湾中華民国)に360基のミサイルと40基の発射機・トレーニング機器・兵站サポート、そして、トレーニングプログラムまでを包括的提供する契約が3,900万USドルで締結された。これは、計算上ミサイル1基あたりにつき約10万USドルに相当する。

2003年1月には、イギリス国防省が軽誘導対戦車兵器(Light Forces Anti-Tank Guided Weapon System, LFATGWS)トライアルにおいてFGM-148を採用することを決定した。2005年から旧式のミランからの転換が進んでいる。

歩兵の携行装備の中でも非常に高価な装備であるため、世界中の軍隊において実射訓練の多いアメリカ陸軍さえ訓練にはシミュレーターを使用する。このシミュレーターにおいて好成績を残した者のみが実機での実射訓練を行える[2]

2003年のイラク侵攻作戦(イラク戦争)において初めて実戦使用された。

2017年12月22日、アメリカは、国内の混乱が続くウクライナに対して、ジャベリンなど対戦車ミサイルを含む防衛装備の提供を行うことを表明している[3]

2022年2月24日より開始されたロシア連邦軍によるウクライナ侵攻(2022年ロシアのウクライナ侵攻)では、ウクライナ軍によってアメリカから供与されたジャベリンが多数使用され、ロシア陸軍の戦車・装甲車などの装甲戦闘車両に対して多大な戦果を挙げている。


  1. ^ FM3-22-37
  2. ^ Lock N' Load -Rockets (ガニー軍曹のミリタリー大百科 ロケット砲)より
  3. ^ a b 米、ウクライナに対戦車ミサイルなど提供へ AFP(2017年12月23日)2017年12月23日閲覧
  4. ^ ロシアの戦車を破壊するウクライナの「秘密兵器」”. 中央日報 - 韓国の最新ニュースを日本語でサービスします. 2022年2月28日閲覧。


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