鎮咳去痰薬 鎮咳去痰薬の概要

鎮咳去痰薬

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/13 19:41 UTC 版)

Cocillana (Ethylmorphine)

主要成分

中枢性鎮咳薬

アドレナリン作動薬

キサンチン誘導体

鎮咳去痰薬

消炎酵素薬

気道粘液溶解薬

抗ヒスタミン薬

中枢興奮薬

殺菌消毒薬

制酸薬

生薬

注意点

  • 中枢性鎮咳薬は便秘副作用を持つものがあるため、疾患を持つ者の服用は慎重を要する。リン酸ジヒドロコデインは気管の分泌抑制作用があり、気管粘膜が乾燥し分泌物の粘度が増して痰の喀出が困難となるため、気管支喘息には不向きである。
  • アドレナリン作動薬では、動悸頭痛血圧上昇が生じる場合がある。
  • キサンチン誘導体では消化器症状や、長期間の服用で中枢興奮作用が現れる。甲状腺ホルモン剤、フェニトインリファンピシンとの併用や喫煙によりキサンチン誘導体の効果の減弱、シメチジンエリスロマイシンとの併用でキサンチン誘導体の作用増強による中毒症状が生じることがある。
  • 抗ヒスタミン薬では眠気や注意力の低下を生じるため、自動車の運転などを避ける。また、鼻炎薬や乗り物酔いの薬にも抗ヒスタミン薬が配合されていることがあるため、過剰摂取に注意する。また、三環系抗うつ薬をはじめとする抗コリン薬との併用により、抗コリン薬の効果を増強する。
  • 一般に、風邪による、痰を伴わない咳には中枢性鎮咳薬が、アレルギー性の咳には抗ヒスタミン薬配合のものが適する。
  • 痰を伴う咳は、鎮咳薬で止めてしまうと痰の喀出を妨げてしまうおそれがあるため、可能な限り去痰薬と併用する。

鎮咳薬

主に中枢性鎮咳薬に関して述べる。末梢性鎮咳薬は去痰薬の節で述べる。

適応

咳嗽に関しては原因診断を行い、疾患特異的な治療が最も優先される。日本呼吸器学会の咳嗽に関するガイドライン第2版の中では「中枢性咳嗽薬は咳嗽の特異的治療になり得ないため、合併症を伴い患者のQOLを著しく低下させる咳嗽の場合に限って使用するのが原則である」と記載されている。

鎮咳薬の分類

中枢性麻薬性鎮咳薬

リン酸コデイン

コデインリン酸塩が代表薬である。オピオイドμ受容体アゴニストであり延髄の孤束核にある中枢に作用して鎮咳効果が得られる。コデインリン酸塩を1日60mgほど投与することが多い。鎮痛・鎮静作用ではリン酸コデイン1日120mgで塩酸モルヒネ1日20mgと同等の効果と考えられている。塩酸モルヒネに比べて鎮痛・鎮静作用は弱く、便秘、悪心、嘔吐といった副作用は少なく、依存性も少ないという特徴がある。コデインリン酸塩を処方するには麻薬施用者免許が必要であるがコデインリン酸1%は麻薬施用者免許がなくとも処方ができる。コデインリン酸1%は量が多くなることと非常に苦いことが特徴である。ジヒドロコデインオキシメテバノールと異なり多くの臨床研究が存在する。副作用としてはイレウス気管支喘息発作に注意が必要である。

ジヒドロコデイン

リン酸コデインの約2倍の強い鎮咳作用がある。配合薬の成分として重要である。例えばセキコデはジヒドロコデインエフェドリン塩化アンモニウムの配合薬である。フスコデはジヒドロコデインとメチルエフェドリンおよびマレイン酸クロルフェニラミンの配合薬である。

オキシメテバノール

リン酸コデインの5~14倍の強い鎮咳作用がある。

中枢性非麻薬性鎮咳薬

デキストロメトルファン

メジコンが代表的な薬物である。デキストロメトルファンオピオイドに類似する構造があるが麻薬としての鎮静・鎮痛作用を持たないことから麻薬に指定されていない。デキストロメトルファンはNMDA受容体拮抗薬である。孤束核の求心性興奮シナプスにおいてNMDA受容体を阻害することが強い鎮咳作用を示すと考えられている。デキストロメトルファンを1日45mg投与されることが多いが90mg投与でより強い鎮咳効果が期待できるという意見もある。一方、NMDA受容体への拮抗作用のため過量投与により解離症状を来たすことから、幻覚剤として乱用されることが問題となっている。

ジメモルファン

アストミンが代表的な薬物である。効果はデキストロメトルファンと同等と考えられている。デキストロメトルファンとは異なり、NMDA受容体への拮抗作用がほとんどなく解離症状を示さないので乱用の恐れが少なくなっている。

チペピジンヒベンズ酸塩

アスベリンが代表的な薬物である。他の中枢性非麻薬性鎮咳薬と同様に延髄の咳中枢を抑制する以外に気管支腺の分泌を亢進し、気道粘膜線毛上皮運動を亢進することで去痰作用をもたらす。

エプラジノン

販売名はレスプレンである。他の中枢性非麻薬性鎮咳薬と同様に延髄の咳中枢を抑制する以外に去痰作用もある。

ペントキシベリン

トクレスが代表的な薬物である。他の中枢性非麻薬性鎮咳薬と同様に延髄の咳中枢を抑制する以外に抗コリン作用や局所麻酔作用なども持ち合わせている。緑内障で禁忌であるが咳嗽反射抑制作用は強い。

クロペラスチン

販売名はフスタゾールである。東京大学の高木らが抗ヒスタミン薬のジフェンヒドラミン(レスタミン)に強い鎮咳作用があることを見出し、その同族化合物からクロペラスチンを見出した。

ベンプロペリン

フラベリックとして上市されている。

クロフェダノール

コルドリンとして上市されている。

エフェドリン

エフェドリン、メチルエフェドリン、メトキシフェナミンが鎮咳薬として知られている。エフェドリンは麻黄の主成分として1885年に長井長義によって発見された。アドレナリン作動性の気管支拡張作用と中枢性鎮咳作用を示す。メチルエフェドリンは市販の風邪薬にしばしば含まれている。

ノスカピン

アヘンアルカロイドでコデインと同様の鎮咳作用があるといわれている。


  1. ^ 本当に明日から使える漢方薬―7時間速習入門コース p73-106 ISBN 9784880027067
  2. ^ 日本医師会『漢方治療のABC』医学書院〈生涯教育シリーズ, 28〉、1992年、Chapt.2。ISBN 4260175076 
  3. ^ 汚染咳止めシロップでインドなど死亡数百件、米当局も検査強化へ”. ロイター (2023年9月30日). 2023年9月30日閲覧。


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