索道 索道の概要

索道

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/10 04:30 UTC 版)

書写山ロープウェイ(書写駅/姫路市)、複線交走式の普通索道
(動画) 筑波山のロープウェイ
ロンドンテムズ川横断ロープウェイ エミレーツ・エア・ライン

英語では、aerial tramway(エリアル・トラムウェイ)、aerial lift(エリアル・リフト)、gondola lift(ゴンドラ・リフト)、cable carケーブル・カー)、telecabine(テレキャビン)と呼ばれている。

概要

剣山登山リフト(美馬市)、単線固定循環式の特殊索道(リフト)

と駅の間に架空したスチールロープ(鋼索)に、人や荷物などを載せるための搬器を懸垂させて輸送を行う[1]。路線の途中にロープを支えるための複数の滑車を備えた支柱を設けるタイプと、途中に支柱を設けないタイプの2種類がある。後者は前者と比べて支柱の建造費用の抑制というメリットがあるが、風による揺動を原因にした脱線事故が起こりやすく、荷重制限のため搬器もあまり多数を同時に運用できないので、効率は良くなかった。そのため、日本では昭和30年代以降はこのタイプで規模の大きな索道の新設は避けられるようになった。

地形の影響を受けにくく急勾配や急斜面にも対応できるほか、谷などの横断も比較的容易で、同じ地形でほかの交通と比較すると、建設コストを低廉に抑えることができる[1]。そのため山間部の観光地スキー場など主に山岳における輸送に用いられる[1]。人員輸送のほかにも、建設業や林業などにおける資材や製品の輸送など、産業分野でも幅広く利用される。山小屋や山奥の温泉旅館など、自動車が走行できる道路が通じていない場所へ物資を輸送するために専用の索道が作られている例もある。

1990年代以降新しい形態のロープウェイ、複式単線 (DLM) フニテルが世界中で普及し始め、2000年頃から日本でも箱根谷川岳蔵王等で旧来のロープウェイが置き換えられ、運行されている。

歴史

紀元前250年の中国華南で書かれた書物に、ロープを介した人間が移動する絵が記述されており、中国やインドなどの険しい山岳部の移動手段として「溜索」(古代名:[2])という名で数千年も使用されてきた[3]

15世紀になると、それまで動力に馬などが利用されていたのが風車水力重力などの動力を使う構想がなされるようになっていった。

用途

人間の移動だけでなく、鉱業の採掘物、農作物・材木の移動にも利用された。

また、アルプス山脈周辺の国々は、第一次世界大戦第二次世界大戦中に駄獣に分割して載せられるようにしたもので短期間で建築して移動するシステムを開発し、イタリア人によるものだけで2,000本のロープウェイが施設され、兵士や物資、傷病兵の移送に使用された(第一次世界大戦中の軍用ロープウェー英語版)。

ハイライン - 船舶間の物資輸送用に使用されるシステム

構成

架空されたワイヤロープに懸垂させた搬器をロープによって駆動して運行する[1]

各部の名称

日本の索道規則(昭和22年運輸省令第34号、1987年廃止、後述)では「架空した索条に搬器をつるして運送する設備をいう」とされた。

索条(さくじょう)とは空中に渡したロープのことで、搬器(はんき)とは吊り下げられている輸送機器のことである。索条は搬器を支持するための支索(しさく)、搬器を牽引するための曳索(えいさく)[注 1]、搬器を支持しながら牽引する支曳索(しえいさく)[注 1]に分類される(方式により異なる。後述)。搬器は箱型やかご型のもの、椅子型になっていて乗客が直接座るものがある。箱型やかご型の搬器は通俗的に「ゴンドラ」とも呼ばれる。また、旅客用のロープウェイは、安全上の理由から搬器の走行輪と係合する支索は1本または2本、搬器を牽引する支曳索の2本の3線または4線を架設することが規則で定められている。

支索は通常の鉄道やケーブルカーにおける軌条、曳索はケーブルカーにおける鋼索、搬器は車両に相当する。

搬器の種類

ロープウェイ
観光地に多く使われている。ドアの付いた密閉式の搬器であることが多いが、窓が開閉可能なものもある。
ゴンドラリフト
1つの搬器で搬送できる人数が4人から12人と効率的で、かつ乗客数に応じて搬器の数を調整できるが、設置に高い経費がかかる。スキー場に設置されていることが多い。山岳地帯以外での設置例は博覧会での会場内輸送機関(1970年の日本万国博覧会でのレインボーロープウェイ、1989年横浜博覧会、1990年の国際花と緑の博覧会等)や、東京ディズニーランドでの「スカイウェイ」、よみうりランドでのスカイシャトル、横浜市のYOKOHAMA AIR CABINがある。
チェアリフト
最もよく使われている搬器。1つの搬器で1人~8人を搬送できる。搬器の前方で待機し、搬器に直接着座する。スキー場や観光地など、さまざまな場所で利用されている。
自走式搬器
搬器にエンジンなどの動力源を搭載し、リモコン操縦により搬器自身で移動を可能にしたもの。木材などを搬器からワイヤーで吊るすなどして貨物輸送を行う[4]Zipparのように、次世代の都市交通システムとして旅客用も開発の動きがある[5]
コンクリートバケット
生コンクリートを打設する際に使用する搬器。日本最大のバケットは黒部ダム建設に使われたもので、9立方メートルの容積を有した[6]

注釈

  1. ^ a b “曳”は常用漢字でないため「えい索」「支えい索」と表記されることもある。
  2. ^ ただし、谷越えの地形に橋梁を設置して対応する事もある。
  3. ^ ただし、旧式のロープトゥ・リフトといった単純にロープを掴むだけの物は、自分のタイミングでロープに掴まるだけで良いのでそれほどの技量を必要とせず、特に初心者には使いやすい。
  4. ^ 前身は索道事業規則(「逓信省令第36号」『官報』1927年9月3日)。1926年(大正15年) 紀伊自動車が旅客索道の認可申請を行なった時点では根拠法令が存在せず、貨物索道の拡大解釈という形で三重県の認可によって営業を開始した。
  5. ^ 「ひばり号」は空中ケーブルカーと呼ばれ、東急百貨店の東館(当時は「東横百貨店」)から西館(当時は玉電ビル)を回遊して戻る全長75mのルートで運行されたが、西館での下車はできず、定員12名ながら子どものみ乗車可能という制約もあったため、遊園地の遊具に近い性質を持っていた。ただし、東京の中心商業地でその路線が私有地を越えた例も(当時の日本国有鉄道の渋谷駅の上空を通過した)、展覧会輸送などの期間限定ではなく通年で市街地内運行が行われた例も、日本の索道・ロープウェイ史上で類似事業はない。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j 千島美智男. “ロープウェイの安全技術”. 国際交通安全学会. 2017年12月17日閲覧。
  2. ^ ・曹学佺 《蜀中広記》
  3. ^ Recent Developments in Cable-Drawn Urban Transport Systems”. mas.rs. 2015年11月17日閲覧。
  4. ^ ラジキャリー”. イワフジ工業株式会社. 2020年5月14日閲覧。
  5. ^ 新交通システム・都市型自走式ロープウェイ Zippar”. Zip Infrastructure株式会社. 2021年5月3日閲覧。
  6. ^ 黒部ダム建設の記録 コンクリートの打設”. ダム便覧. 2020年5月14日閲覧。
  7. ^ ロープウェイの変遷 » ロープウェイ/谷川岳ロープウェー株式会社”. www.tanigawadake-rw.com. 2021年11月29日閲覧。
  8. ^ 索道観察日記 (2005年9月10日). “山口きらら博パルスゴンドラ「きらゴン」~初の冷房付きゴンドラ”. 2021年1月4日閲覧。
  9. ^ 索道の空調装置付き搬器” (2017年4月6日). 2021年1月4日閲覧。
  10. ^ 2021年春に開業! 横浜 貨物線跡の上空に“新たな鉄道” 泉陽興業がつくる国内初 世界最新 都市型循環式ロープウェイ”. 鉄道チャンネル (2021年1月3日). 2021年1月4日閲覧。
  11. ^ 索道、ケーブルクレーン、”. 加越技建工業. 2020年5月14日閲覧。
  12. ^ 「索道について」”. 丸架索道. 2020年5月14日閲覧。
  13. ^ a b 『るるぶ ケアンズ ゴールドコースト 2017』、17頁。 
  14. ^ 新しい都市交通システム エアートラム(都市型ロープウェイ)”. 一般社団法人 日本索道工業会. 2019年3月13日閲覧。
  15. ^ Urban”. Doppelmayr Seilbahnen GmbH. 2019年3月13日閲覧。
  16. ^ Urban ropeways as public means of transport”. LEITNER ropeways. 2019年3月13日閲覧。
  17. ^ “東京五輪前に開業へ 新港地区-桜木町ロープウエー計画”. カナロコ. (2019年2月13日). https://www.kanaloco.jp/article/entry-149119.html 
  18. ^ Koblenz”. CWA Constructions SA. 2020年4月4日閲覧。
  19. ^ London”. CWA Constructions SA. 2020年4月4日閲覧。
  20. ^ La Paz - El Alto”. CWA Constructions SA. 2020年4月4日閲覧。
  21. ^ ホンマでっか!?渋谷駅~東横線渋谷駅&東急東横店にまつわる雑学14連発 1と3/4番線”. 渋谷文化プロジェクト. 2019年12月10日閲覧。
  22. ^ 東京臨海部の貧弱交通はロープウェーが救う”. 東洋経済オンライン. 2019年3月13日閲覧。
  23. ^ ヨコハマ都心臨海部のまちを楽しむ多彩な交通”. 横浜市 (2018年5月24日). 2019年3月27日閲覧。
  24. ^ スキーリフト | JFEプラントエンジ株式会社”. www.jfe-planteng.co.jp. 2019年3月27日閲覧。
  25. ^ 十津川探検 ~十津川巡り~「野猿」 十津川かけはしネット(十津川村教育委員会)
  26. ^ 鬼怒グリーンパーク 水上アスレチック(宝積寺)
  27. ^ 鬼怒グリーンパーク公式Instagram 写真ギャラリー
  28. ^ 那賀川倶楽部2007年11月号 - ウェイバックマシン(2012年1月13日アーカイブ分) (PDF) 四国地方整備局那賀川河川事務所
  29. ^ 失われたロープウェイ 五台山ロープモノレール
  30. ^ 永井正夫「事故および潜在的事故に学ぶ安心安全(ロープウェイ事故から自動車事故)」『計測と制御』第45巻第1号、計測自動制御学会、2006年1月、75-80頁、doi:10.11499/sicejl1962.45.75ISSN 04534662NAID 10017154578 






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