索道
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/21 07:55 UTC 版)
都市索道
索道はスキー場や山間部の観光用に使われる事例が多かったが、2010年代頃からエミレーツ・エア・ラインやシンガポール・ケーブルカー、ミ・テレフェリコ、ザイルバーン・コブレンツなど、中・短距離の都市交通としてゴンドラリフトや都市型ロープウェイ、3Sロープウェイなどが導入される事例が増えている。
都市索道は従来の交通機関と比べ、以下の特徴があるとされる[14][15][16]。
- 空中を通るため、都市空間を有効活用できる
- 自動循環式の場合は待ち時間がなく、定時制に優れる
- 道路渋滞や交通事故に左右されない
- 急勾配や長大スパンにより、丘陵、河川、積雪地域など、地形の影響を受けない
- 橋やトンネルが不要で無人運転も可能なため、建設・維持費等のコストが低い
- 排気ガス、騒音が少なく環境への負担が少ない
- バリアフリー対応
これに対し、下記の横浜市の計画に対しては、計画地域の商業事業者から「景観を損ねる」という理由からの反対意見が出されている[17]。また、上空のゴンドラから見下ろされる地域住民からはプライバシーへの配慮を求められる事もある。その例として、2005年に開催された2005年日本国際博覧会「愛・地球博」では、2つに分散した会場を結ぶためのロープウェイが市街地上空を通過する必要が生じ、その区間ではゴンドラのガラスを白く濁らせて周囲を見えなくする対応がなされた(愛知万博の交通#会場内の交通)。また、輸送力では上記のザイルバーン・コブレンツにおいては3Sロープウェイ用の大型の搬器の採用(形式:ZETA、定員35人[18])により、一方向毎時7600人を確保しているものの、一般的な単線自動循環式ゴンドラリフトのエミレーツ・エア・ラインやミ・テレフェリコでは搬器が小型(形式:OMEGA IV、定員10人[19][20])なため一方向毎時最大4000人と、通常の鉄道(地下鉄を含む)よりは輸送力が小さい(山手線に導入されているE235系電車の約2-4編成相当にしかならない)。しかし連節バスを含む路線バスやBRTと比較すると輸送力が大きく(定員60人のバス66台分、毎分1本以上の運行間隔に相当)、運行に必要な人員も遥かに少なくて済むため、都市内での導入では「新交通システム」の名で日本各地に普及している自動案内軌条式旅客輸送システム(AGT)、及びミニ地下鉄などの「中量軌道輸送システム」との比較検討が行われる。
日本の場合、1951年から1953年にかけて東京都渋谷区の渋谷駅前、東急百貨店東横店にあった「ひばり号」[注 5][21]の特殊例を除くと本格的な導入事例は2020年代に入るまでなかったものの、2021年4月22日に、日本初の常設型都市索道として桜木町駅~運河パーク駅間にYOKOHAMA AIR CABINが開業した。その他東京都江東区(汐留〜有明)や福岡市(博多駅〜博多港)、横浜市(横浜駅〜みなとみらい地区〜山下埠頭)などにも都市索道の計画・構想がある[22][23]。
注釈
- ^ a b “曳”は常用漢字でないため「えい索」「支えい索」と表記されることもある。
- ^ ただし、谷越えの地形に橋梁を設置して対応する事もある。
- ^ ただし、旧式のロープトゥ・リフトといった単純にロープを掴むだけの物は、自分のタイミングでロープに掴まるだけで良いのでそれほどの技量を必要とせず、特に初心者には使いやすい。
- ^ 前身は索道事業規則(「逓信省令第36号」『官報』1927年9月3日)。1926年(大正15年) 紀伊自動車が旅客索道の認可申請を行なった時点では根拠法令が存在せず、貨物索道の拡大解釈という形で三重県の認可によって営業を開始した。
- ^ 「ひばり号」は空中ケーブルカーと呼ばれ、東急百貨店の東館(当時は「東横百貨店」)から西館(当時は玉電ビル)を回遊して戻る全長75mのルートで運行されたが、西館での下車はできず、定員12名ながら子どものみ乗車可能という制約もあったため、遊園地の遊具に近い性質を持っていた。ただし、東京の中心商業地でその路線が私有地を越えた例も(当時の日本国有鉄道の渋谷駅の上空を通過した)、展覧会輸送などの期間限定ではなく通年で市街地内運行が行われた例も、日本の索道・ロープウェイ史上で類似事業はない。
出典
- ^ a b c d e f g h i j 千島美智男. “ロープウェイの安全技術”. 国際交通安全学会. 2017年12月17日閲覧。
- ^ 明・曹学佺 《蜀中広記》
- ^ “Recent Developments in Cable-Drawn Urban Transport Systems”. mas.rs. 2015年11月17日閲覧。
- ^ “ラジキャリー”. イワフジ工業株式会社. 2020年5月14日閲覧。
- ^ “新交通システム・都市型自走式ロープウェイ Zippar”. Zip Infrastructure株式会社. 2021年5月3日閲覧。
- ^ “黒部ダム建設の記録 コンクリートの打設”. ダム便覧. 2020年5月14日閲覧。
- ^ “ロープウェイの変遷 » ロープウェイ/谷川岳ロープウェー株式会社”. www.tanigawadake-rw.com. 2021年11月29日閲覧。
- ^ 索道観察日記 (2005年9月10日). “山口きらら博パルスゴンドラ「きらゴン」~初の冷房付きゴンドラ”. 2021年1月4日閲覧。
- ^ “索道の空調装置付き搬器” (2017年4月6日). 2021年1月4日閲覧。
- ^ “2021年春に開業! 横浜 貨物線跡の上空に“新たな鉄道” 泉陽興業がつくる国内初 世界最新 都市型循環式ロープウェイ”. 鉄道チャンネル (2021年1月3日). 2021年1月4日閲覧。
- ^ “索道、ケーブルクレーン、”. 加越技建工業. 2020年5月14日閲覧。
- ^ “「索道について」”. 丸架索道. 2020年5月14日閲覧。
- ^ a b 『るるぶ ケアンズ ゴールドコースト 2017』、17頁。
- ^ “新しい都市交通システム エアートラム(都市型ロープウェイ)”. 一般社団法人 日本索道工業会. 2019年3月13日閲覧。
- ^ “Urban”. Doppelmayr Seilbahnen GmbH. 2019年3月13日閲覧。
- ^ “Urban ropeways as public means of transport”. LEITNER ropeways. 2019年3月13日閲覧。
- ^ “東京五輪前に開業へ 新港地区-桜木町ロープウエー計画”. カナロコ. (2019年2月13日)
- ^ “Koblenz”. CWA Constructions SA. 2020年4月4日閲覧。
- ^ “London”. CWA Constructions SA. 2020年4月4日閲覧。
- ^ “La Paz - El Alto”. CWA Constructions SA. 2020年4月4日閲覧。
- ^ “ホンマでっか!?渋谷駅~東横線渋谷駅&東急東横店にまつわる雑学14連発 1と3/4番線”. 渋谷文化プロジェクト. 2019年12月10日閲覧。
- ^ “東京臨海部の貧弱交通はロープウェーが救う”. 東洋経済オンライン. 2019年3月13日閲覧。
- ^ “ヨコハマ都心臨海部のまちを楽しむ多彩な交通”. 横浜市 (2018年5月24日). 2019年3月27日閲覧。
- ^ “スキーリフト | JFEプラントエンジ株式会社”. www.jfe-planteng.co.jp. 2019年3月27日閲覧。
- ^ 十津川探検 ~十津川巡り~「野猿」 十津川かけはしネット(十津川村教育委員会)
- ^ 鬼怒グリーンパーク 水上アスレチック(宝積寺)
- ^ 鬼怒グリーンパーク公式Instagram 写真ギャラリー
- ^ 那賀川倶楽部2007年11月号 - ウェイバックマシン(2012年1月13日アーカイブ分) (PDF) 四国地方整備局那賀川河川事務所
- ^ 失われたロープウェイ 五台山ロープモノレール
- ^ 永井正夫「事故および潜在的事故に学ぶ安心安全(ロープウェイ事故から自動車事故)」『計測と制御』第45巻第1号、計測自動制御学会、2006年1月、75-80頁、doi:10.11499/sicejl1962.45.75、ISSN 04534662、NAID 10017154578。
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