放送法 概要

放送法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/07 02:24 UTC 版)

概要

日本での公衆によって直接受信される目的とする電気通信の送信を行う者は、すべてこの法律によって定められたところにより規律される。

放送法は、戦前の無線電信法に代わるものとして電波法電波監理委員会設置法とともに電波三法の一つとして1950年(昭和25年)5月2日公布、同年6月1日より施行された。これによって日本放送協会(NHK)は同法に基づく特殊法人と規定されて、社団法人(現・一般社団法人)から公共企業体へと改組されることとなった。

また、NHK以外の事業者(民間放送事業者)の設置が認められて以後の放送に関する基本法となった。その後、1959年(昭和34年)に放送番組審議会の設置義務付け規定の設置や1988年(昭和63年)の全面改正、2010年(平成22年)の有線電気通信を用いる放送の法統合及び条名整理など、さまざまな改正が行われて現在に至っている。

構成

目次

  • 第1章 総則(第1条、第2条)
  • 第2章 放送番組の編集等に関する通則(第3条 - 第14条)
  • 第3章 日本放送協会(第15条 - 第87条)
  • 第4章 放送大学学園(第88条 - 第90条)
  • 第5章 基幹放送(第91条 - 第125条)
  • 第6章 一般放送(第126条 - 第146条)
  • 第7章 有料放送(第147条 - 第157条)
  • 第8章 認定放送持株会社(第158条 - 第166条)
  • 第9章 放送番組センター(第167条 - 第173条)
  • 第10章 雑則(第174条 - 第182条)
  • 第11章 罰則(第183条 - 第193条)
  • 附則

目的は、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることにある(第1条)。また、番組編集についての通則として、何人からも干渉・規律されない(第3条)とし、義務として、公安・善良な風俗を害しない、政治的公平、報道は事実をまげない、意見が対立している問題はできるだけ多くの角度から論点を明らかにすること(第4条第1項)を定めるとともに、放送番組の種別(教養番組教育番組報道番組娯楽番組等)及び放送の対象とする者に応じて編集の基準を定め、それに従い放送番組の編集をしなければならない(第5条第1項)。

放送事業者

まず本法を設立根拠とし、かつ全国に向け公共放送を行うことを主目的とする日本放送協会(NHK)、及び本法の根幹である放送番組編集通則の大幅な適用除外規定を設ける必要が生じる放送大学学園に関する規定が設けられている。

それらを含めて物理的な伝送形態により基幹放送事業者一般放送事業者に大別し、それぞれについて規定している。また、視聴料の有無の観点からみた、有料放送事業者の規定もある。

日本放送協会(NHK、協会)
NHKが行う、または委託できる業務内容や役員、委員会等の人事、受信料や会計の方法といった定款制定や経営基盤に関する規制事項、行わなければならない、または行えない業務についての大原則を定めており、これらの新設または変更、または廃止に国会の承認を要することによって、公共放送機関としての地位及び公共性を担保している。ただし法人の住所及び損害賠償責任については一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(一般法人法)を、NHKが発行できるとしている債券(放送債券)の一部規定については会社法及び社債、株式等の振替に関する法律(社債等振替法)をそれぞれ準用している。
また、B-CASカードがないとNHKが視聴できないことは「放送法第20条第11項に違反する」との解釈もある。
11  協会は、基幹放送の受信用機器又はその部品を認定し、基幹放送の受信用機器の修理業者を指定し、その他いかなる名目であつても、無線用機器の製造業者、販売業者及び修理業者の行う業務を規律し、又はこれに干渉するような行為をしてはならない。
放送大学学園(学園)
学園は放送大学学園法を設立動機法とする学校法人(設立根拠法は私立学校法)であり、法人運営原則については放送大学学園法、教育原則については学校教育法による。したがって放送法においては、学園の業務のうち教育に必要な放送業務、それに附帯する業務(放送大学学園法第4条第2号及び3号)の具体的原則の一部を定めており、学園が行える、または行えない業務などについて規定している。具体的には、番組の調和に関する規定や、災害放送に関する規定などが免除され、基幹放送及び一般放送に関する制限についての変更がある。
基幹放送事業者
放送の用に専ら、または優先して割り当てる周波数を用いた無線局基幹放送局)による放送を行う者である。基幹放送は基幹放送局提供事業者が保有・運用する放送局設備を利用し、放送法による認定を受けた認定基幹放送事業者が行うことを基本とするが、地上基幹放送に限り、2010年改正前と同様に自己保有する放送局設備を用い電波法による無線局免許を受けた事業者である特定地上基幹放送事業者が行うこともできる。
一般放送事業者
基幹放送事業者以外の放送事業者をいう。具体的には東経110度旋円偏波を除く衛星放送有線テレビジョン放送有線ラジオ放送およびエリア放送を行う事業者である。これらの内、衛星放送および一定規模以上の有線テレビジョン放送については総務大臣の登録を受ける必要があるが、これ以外は総務大臣または都道府県知事への届出ですむ。従前の届出先は総務大臣のみであったが、2016年4月[1]より、同一都道府県内で基幹放送の再放送をするのみの事業者の届出先は総務大臣から都道府県知事となった。
有料放送事業者
文字通り、有料視聴契約を結んだ視聴者に限定した番組の放送を行う基幹放送事業者、または一般放送事業者をいう。なお同じ第7章では有料放送の視聴契約によらない受信を禁じている(第157条)が、放送法上で放送を受信している、または受信しようとする側に課している規定は、同条以外では第3章(日本放送協会)の放送受信契約の締結義務(第64条第1項及び第4項)のみである。

  1. ^ 平成26年法律第51号による放送法改正の施行
  2. ^ 村上聖一「放送法改正における有識者会議の機能 ―制度見直しに与えた影響とその変遷―」『NHK放送文化研究所年報 2018』 NHK出版、2018年1月 ISBN 978-4-14-007263-9
  3. ^ 法律時報臨時増刊第41巻6号 『安保条約 その批判的検討』 日本評論社 p.69
  4. ^ 放送法改正:NHK過去番組、ネット配信解禁--民放、ワンセグ独自番組可能に”. CNET (2007年12月21日). 2011年4月15日閲覧。
  5. ^ “放送法改正案、修正で合意=与野党”. 時事ドットコム(時事通信社. (2010年11月19日). http://www.jiji.com/jc/zc?key=%ca%fc%c1%f7%cb%a1&k=201011/2010111900961 2010年12月2日閲覧。 
  6. ^ “改正放送法が成立=参院本会議”. 時事ドットコム(時事通信社. (2010年11月26日). http://www.jiji.com/jc/zc?key=%ca%fc%c1%f7%cb%a1&k=201011/2010112600812 2010年12月2日閲覧。 
  7. ^ 放送法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(平成23年6月24日 政令第180号)
  8. ^ 放送法及び電波法の一部を改正する法律案の概要”. 総務省 (2014年3月14日). 2014年9月19日閲覧。
  9. ^ 電波法違反の無線局及び無線従事者に対する行政処分の実施 - 総務省公式ウェブサイト、2015年8月18日閲覧。
  10. ^ 電波法(抜粋) - 放送倫理・番組向上機構公式ウェブサイト、2015年8月18日閲覧。
  11. ^ a b 【元総務省官僚が証言】放送法解釈めぐる文書「忖度の走り」【報道特集】”. TBS NEWS DIG. JNN. 2023年3月22日閲覧。
  12. ^ 『放送法逐条解説 :改訂版』情報通信振興会、2012年1月、60頁。 
  13. ^ 『放送法逐条解説 :新版』情報通信振興会、2020年12月、46頁。 
  14. ^ 古賀靖典 (2024年2月28日). “【インタビュー 大久保好男・元日本テレビ社長】放送事業の将来像は自分たちで考える <テレビ70年企画>”. 民放online. 2024年3月7日閲覧。
  15. ^ 放送法「政治的公平」の解釈 総務相 “昭和39年以来変わらず””. NHK政治マガジン. NHK. 2023年3月22日閲覧。
  16. ^ テレビ局への総務省厳重注意に対し,BPO3委員長が批判声明”. NHK. 2022年2月4日閲覧。
  17. ^ 村上勝彦『政治介入されるテレビ 武器としての放送法』 青弓社、2019年8月 ISBN 978-4-7872-3457-5
  18. ^ 株式会社TBSテレビの「情報7days ニュースキャスター」における放送に関する問題への対応”. 総務省 (2009年6月5日). 2009年6月5日閲覧。
  19. ^ 藤井教授が「諸般の事情」で番組一時「休養」 朝日放送のBPO審査問題とは関係ないのか”. J-CASTニュース (2015年10月19日). 2022年2月5日閲覧。






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