悪臭 悪臭の概要

悪臭

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/05 13:28 UTC 版)

悪臭を放つ汚水


嗅覚と悪臭

スカトール。高濃度ではの、低濃度ではの匂いがする

ヒトの嗅覚五感のうちでも特に鋭敏であり、本能的、原始的な感覚とされ、未解明の領域も多い。腐敗した有機物の発する物質を悪臭と感じるのは、進化の過程で死臭による危険の察知や、食物の状態を判断するため発達したものと考えられている。 臭気として知覚できる物質は数十万種はあるといわれ、日常的に「○○のにおい」と表されるものでも、その構成物質は数百に及ぶ。たとえばコーヒーの香りからは500種の物質が数えられている。また、ヒトが何らかの臭気を感じた時、それを不快に感じるかどうかは非常に幅が広く、様々な要素が影響する。

  • 臭気の強さや構成:香水果物などのにおいは、強すぎると悪臭になることが知られている
  • 他の感覚との補完:魚の生臭さは通常不快だが、市場の映像を見せながらだと臨場感を高める効果となる(バーチャルリアリティ
  • 体調や状況:いわゆる「気になる」「気にならない」で、時刻や頻度、感じているストレスの大きさなど、身体的・心理的状態により感覚が左右される
  • 習慣や価値観:多くの文化が悪臭を放つ発酵食品などを利用しているように、有益なものの特徴に過ぎないことを知っていれば、不快感は大きく低減され、さらには好意的に受け止められもする(例えばブルーチーズ納豆など)
  • 嗅覚疲労、順応:同じ悪臭に曝露され続けるとやがて感じなくなり、これが長期間続くといったん無臭状態を経由しても感じにくくなる

このため、悪臭を定性的定量的にあらわすことは非常に困難であり、評価から人間の主観を排することができない。この問題の解決手段として期待されている臭気センサーの開発は、五感を代替するセンサーのなかでは最も遅れている。これまでに半導体や薄膜、細胞などを利用したものが考案され、製品も市販されているものの、ヒトの嗅覚、特に嗅ぎ分けには追いついておらず、用途は限られている。

悪臭物質

エタンチオール(エチルメルカプタン)。ガスに添加される悪臭物質。世界一臭い物質としてギネス認定されている

アンモニア(公衆トイレの臭い)、硫化物(腐敗臭)、フェノール類、アルデヒド類などが代表的な悪臭物質である。特に悪臭のする物質は、特定悪臭物質として悪臭規制法で指定されている。 特に硫化物有機硫黄化合物)は濃度に対する悪臭の強さが突出しており、ガス付臭に用いられている[3]

発生源

釧路市のパルプ工場
兵庫県篠山市の野焼き(野外焼却)。野焼きは悪臭苦情の原因で一位である

このほか、身近な臭気も規模は小さいが状況により悪臭となる。

[4]

苦情統計

環境省は悪臭苦情の統計を取っており、令和二年度の状況は次のとおりである[5]

  • 苦情件数は15,438件で、前年度比3,418件(28.4%)の増加
  • 野外焼却(野焼き)が5,536件(全体の35.9%)を占め、サービス業等がそれに続く
  • 野外焼却(野焼き)への苦情件数は、前年度比1,943件(54.1%)に大幅に増加している
  • 苦情件数の多い都道府県は千葉県(1613件)、東京都(1344件)、愛知県(1299件)

対策

サーマルオキシダイザー

悪臭は気体であるため、発生源の気密性を高め、ダクトで送気し、サーマルオキシダイザーなどの無害化装置に送り込むといった対策が採られる。 こうした処置は大掛かりかつ高価になるため、なかなか実行されないのが実情である。

サーマルオキシダイザー

熱で悪臭分子を分解する装置。

煙突

腐食性や毒性など有害性の懸念がない場合には、煙突を用いて高所へ放出し希釈・拡散する方法が有効な場合がある。 煙突を用いた高所への拡散は、悪臭防止法により二号規制として定められている。




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