マウンテンバイク 歴史

マウンテンバイク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/12 15:36 UTC 版)

歴史

「クランカー」を再現した改造クルーザーバイク(左)と量産初期のマウンテンバイク

1970年代後半にアメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコ郊外のマリン郡で、ヒッピー達がビーチクルーザー実用車などに太いタイヤをつけ、急勾配の山を下りタイムを競った遊びが始まりといわれている。同時期に北カリフォルニアでも同じ遊びが発生していたが、一般的にマリン郡がマウンテンバイク発祥の地とされるのは、同郡マウント・タム(タマルパイス山)で行われていた当時最大のレースによるところが大きい。

初期の改造ビーチクルーザーは必ずしも完成度は高くなく、あまりの重さで変速もなかった。

そうして遊んでいるうちに如何に速く未舗装の山道を下るかという競技らしきものになった。しかし前述のように車体の強度が低いため山を下るたびに過度の衝撃でヘッド部やハブのグリースが焼けて燃えてしまい、その都度グリースの詰め替え(リパック)しなくてはならないようなものであった。このことからこの競技は当初「リパック(Repack)」とも呼ばれ、地域の自転車好きに新しい遊びとして浸透していった。

このような遊びはやがて本格的なロードレース選手も魅了し、その中に後のマウンテンバイク創始者の一人であるゲイリー・フィッシャートム・リッチー、ジョー・ブリーズなどがいた。彼らがクランカーを知った経緯として、ラークスパー・キャニオン・ギャング(Larkspur Canyon Gang)と呼ばれるヒッピー集団の存在が挙げられる。

しかし使用する車体の強度が依然として低くいろいろと不都合が生じるために、リパックに参加する者たちは激しい使用に耐えるものを求めるようになった。ジャンク屋などからとくに頑丈なビーチクルーザーのフレーム[注釈 1]を探し出し、このフレームに急降下でも確実に動作するよう制動力の強いオートバイ用のドラムブレーキハブなどを用い、また山を登るためにツーリング用自転車であるランドナーのトリプルクランクや変速機を装備するようになった。

やがて既存の自転車パーツの借用に限界を感じていた彼らは、この自転車を自作し始めた。1977年にジョー・ブリーズが専用フレームを設計、自然と仲間たちから「BREEZER」と命名される。1978年にはゲイリー・フィッシャーがロードレース仲間で同時に優れたフレームビルダーでもあったトム・リッチーに新しい自転車の製作を依頼、「フィッシャーマウンテンバイク」としてマウンテンバイクを製作、販売、山や丘陵の荒れ野で遊ぶ自転車として定着させた。後にこの三人は「ブリーザー(Breezer)」、「ゲイリー・フィッシャー(Gary Fisher)」、「リッチー(Ritchey)」として独自ブランドを築き上げる。彼らが制作・販売していたものはクロモリフレームであり、アルミ合金フレームはチャーリー・カニンガム(英語)によるところが大きい[5]。マウンテンバイクが全世界に定着する上では1981年スペシャライズド社が発売した「スタンプジャンパー」の果たした役目が大きい。初めて量産体制で製造されたスペシャライズドのマウンテンバイクは新たなジャンルの自転車として全米に、そして世界に広まった。

発展途上国ではそれまでのロードスター型自転車のタイヤ規格(26インチWO)に代わってマウンテンバイクの規格(26インチHE)が普及しつつあり、マウンテンバイクの車体自体も浸透しつつある。また先進国では、かつてロードスター型自転車に求められた用途にマウンテンバイクが用いられている。このほか技術的にもマウンテンバイク競技で培われた技術がロードバイクに転用され、自転車競技に新たな刺激を与えたものは多い。

年表

  • 1974年 - ゲイリー・フィッシャーが改造型ビーチクルーザーダウンヒラーを誕生させる。
  • 1976年 - カリフォルニアでの「リパック」がレースとして本格化する[2]
  • 1977年 - ジョー・ブリーズがオフロード専用フレーム「BREEZER」を完成させる[3][4]
  • 1979年 - ゲイリー・フィッシャーとチャーリー・ケリーがマウンテンバイクス社(MountainBikes)を興して「マウンテンバイク」の販売を始める。フレームはトム・リッチーとジェフリー・リッチモンドが製作。[5]
  • 1981年 - スペシャライズド社が最初の量産MTB「スタンプジャンパー」を出す[6]
  • 1982年 - オフロードバイクコンポとしてシマノがツーリングコンポ「DEORE」から独立して初代Deore XTを発売[7]。サンツアーもオフロード専用コンポ『マウンテック』を発売。日東ハンドルがトム・リッチーの依頼によりMTB用ブルムース・ハンドルの製造を開始。
  • 1983年 - マエダ工業(サンツアー)がクロスカントリー用コンポーネントのサンツアーXCを発売。
  • 1986年 - アメリカでMTB専門誌「MOUNTAIN BIKE ACTION」が創刊。
  • 1989年 - フランスでMTB専門誌「VTT Magazine」が創刊。MTB用サスペンションフォーク「ROCK SHOX」が登場。
  • 1990年 - 世界選手権においてMTB競技が実施される。種目はダウンヒルとクロスカントリー。アルパインスターズがMTBの量産を開始。ダグラス・ブラッドバリーがMCUエラストマーを使用したサスペンション「マニトゥ」を開発。
  • 1994年 - ロブ・ロコップ、マイク・マルケス、リッチ・ノヴァクによって設立されたサンタクルズ・バイシクルズがフルサスペンションバイク「ダズモン」を開発。
  • 1996年 - アトランタオリンピックにおいて自転車・マウンテンバイククロスカントリー男子/女子が正式種目で実施される[8]

日本での歴史

1980年代後半に日本に第一次マウンテンバイクブームが訪れる。オートキャンプの浸透やアウトドアブームとともに、レジャーとしての認知度が高かった。当時は各地で手作り的なローカルレースが開催され、スポーツとしての認知も進んでいった。

  • 1980年 - 東京・世田谷に日本初のMTB・BMX専門店「ワイルドキャット」が開店。
  • 1982年 - スペシャライズド・スタンプジャンパーなどの製造を請け負っていた新家工業(アラヤ)が、自社ブランドのMTBであるマディフォックス26-DX(MB-MF26DX)を誕生させる。上級モデル以外はまだランドナーなどのツーリング用パーツが使われている。海外輸出向けではあるが大阪の桑原商会等も製作販売を開始した[9]
  • 1983年 - 宮田工業がMTB「アイガー・プロEP-26K」の販売を開始。丸石自転車もMTB「イーグルMB26U」の販売を開始。
  • 1984年 - 奈良県との府県境にある京都府相楽郡南山城村大河原グランドキャニオン」にて、日本初のマウンテンバイク大会「1st SUNTOURマウンテンバイクセミナーin大河原グランドキャニオン」(3月31日 − 4月1日/主催:マエダ工業株式会社)が開催。
  • 1987年 - 日本マウンテンバイク協会が発足[10]
  • 1988年 - 「第1回全日本マウンテンバイク選手権大会」が開催。
  • 1988年 - 世界選手権大会に初めて日本代表選手を派遣。
  • 1989年 - ヒルクライムダウンヒル競技のジャパンオープンが開催。世界選手権大会におけるオブザーブドトライアルで柳原康弘選手が優勝。世界最大の自転車メーカー、ジャイアントが日本でのMTB販売を開始。
  • 1992年 - 全日本選手権大会がシリーズとして開催される。
  • 1994年 - NORBA(全米オフロードバイシクル協会)シリーズのデュアルスラロームで柳原康弘選手が優勝。
  • 1995年 - 愛知県豊田市にてアジア大陸マウンテンバイク選手権が初開催される(アトランタオリンピックへの大陸参加枠付与大会)。
  • 1996年
  • 1998年 - 日本で初のUCI ワールドカップが新潟県新井市(現・妙高市)で開催される[11]
  • 2015年 - 日本国内の公認シリーズ大会Coupe du Japon(クップ・デュ・ジャポン)が開始[11]
  • 2016年

注釈

  1. ^ 例:第二次世界大戦前のビーチクルーザー「エクセルシオール」(シュウィン)

出典

  1. ^ 日本マウンテンバイク協会ウェブサイト「MTBって何?」より
  2. ^ [1]
  3. ^ シマノ・XTRモデルチェンジ! M9100シリーズはリヤ12速&11速、フロントシングル&ダブル仕様で幅広いライダーをカバー! Topics”. サイクルスポーツ.JP. 2019年6月8日閲覧。
  4. ^ ライトウェイ バイク インプレッション 【2010 GTハイエンドモデル】”. ライトウェイ. 2023年8月15日閲覧。
  5. ^ Charlie Cunningham | Marin Museum of Bicycling and Mountain Bike Hall of Fame”. mmbhof.org. 2019年6月30日閲覧。






マウンテンバイクと同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「マウンテンバイク」の関連用語

マウンテンバイクのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



マウンテンバイクのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのマウンテンバイク (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS