チャービル チャービルの概要

チャービル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/12 16:34 UTC 版)

チャービル
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : キク類 asterids
階級なし : キキョウ類 campanulids
: セリ目 Apiales
: セリ科 Apiaceae
: シャク属 Anthriscus[1][2]
: チャービル A. cerefolium [4]
学名
Anthriscus cerefolium
(L.) Hoffm. (1814) [5]
和名
ウイキョウゼリ(茴香芹)
英名
chervil[5]

形態・生態

チャービルはコーカサス地方原産であるが、ローマによりヨーロッパ中に広められ、現在では自生している[8]。アメリカ北東部などにも自生する。

草丈40 - 70センチメートル (cm) まで育ち、葉は三回羽状で巻いている。葉はイタリアンパセリに似ているが、パセリよりも甘い香りと穏やかな風味をもつ[9]。白くて小さい花は散形花序で、直径2.5-5 cmである。果実は約1 cmの細い楕円体か卵型である[8]

パセリと似ている為混同されることがあるが、パセリとは栽培条件に差異がある。直射日光と湿気を嫌うので、日陰の窓辺、ベランダが栽培環境に適している。

歴史

文献に初出するのは紀元後、ローマの時代である。チャービルはかつて生垣や荒地に自生する一年生の雑草とみなされ、注意を払われることはなかった。19世紀後半、原産地がロシア南東部、コーカサス以南からイラン北部山地であることが判った。その後、食材として注目を集めるようになった。

チャービルの根

葉を食するチャービルとは異なるチャービル。根をとして食べられる。根を食するチャービルの葉には毒があり食べられない。芋用に育てられるチャービルは葉用のチャービルよりも太い根を持ち、品種が別物で19世紀には人気があったが、現在ではイギリスやアメリカではほとんど食べられず、フランス料理のスープやシチューの中でまだ使われている程度である。現在、産地はフランスロワール地方とブルターニュ地方で年間5トンとごく僅か。フランスのマルシェでは10月頃に出回る。中世の頃にロワール地方の貴族が北欧から持ち帰り栽培が始まった。第二次大戦後栽培されなくなったが、フランスロワール地方とブルターニュ地方でまた栽培が始められた。日本でも北海道で栽培が始められているらしい。

利用

食用、薬用に、茎、葉が利用される。食材としての主なは3 - 6月といわれ、葉がやわらかく、細かく切れ込みが入っているもの、淡緑色が瑞々しいものが市場価値の良品とされる[7]

料理

チャービルを使ったサラダ

パセリの葉をマイルドにしたような甘味のある香りが特徴で、チャイブバジルタラゴンなどと共に家禽魚介野菜などの風味付けや、卵料理に用いられる[6]。フランスでは「美食家(グルメ)のパセリ」と呼ばれ、フランス料理にも好んで使われ[7]オムレツサラダスープドレッシングなどに加えられる[9][6]。またフランスでは、チャイブなどと組み合わせて作るミックスハーブであるフィヌゼルブの主要材料としても良く知られている[6]。キリスト教圏では復活祭前の料理の材料に使われる[10]

パセリよりも傷みやすく、スペインカンゾウのかすかな味がある。乾燥すると香りが落ちるので生のまま使うのが望ましいとされる。加熱調理すると香りがとんでしまうため、仕上げに彩りよく添られる[7]。鶏肉や白身魚を使ったあっさりした料理を飾ったり、ソースの仕上げに加えたり、刻んで卵料理に加えるなどの使い方が行われる[7][9]。乳製品との相性もよく、バターに混ぜてトーストに塗ったり、クリーム系のスープに添えるといった使い方もされる[7]

栄養価が高く、β-カロテンビタミンCマグネシウムなどが豊富に含まれ、免疫力の強化に役立つとされる[7][6]

園芸

チャービルはナメクジ避けに用いられることがある。

薬効

香り成分は消化作用や発汗作用、血行促進作用があるといわる[7][9]。伝統的には様々な医薬用途に用いられてきた。妊娠した女性はチャービルを滲出した風呂に入り、チャービルのローションは石鹸として用いられ、また血液浄化剤としても用いられた。酢に浸出したものはしゃっくりの治療にも使われた[11]


  1. ^ 大場秀章 編『植物分類表』(第2刷)アボック社、2010年。ISBN 978-4-900358-61-4 
  2. ^ 米倉浩司『高等植物分類表』(重版)北隆館、2010年。ISBN 978-4-8326-0838-2 
  3. ^ 米倉浩司、梶田忠 (2003-). “Anthriscus scandicina (F.Weber) Mansf.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2012年8月14日閲覧。
  4. ^ 米倉・梶田[3]Anthriscus scandicina (F.Weber) Mansf.1939 をあてている。
  5. ^ a b "Anthriscus cerefolium (L.) Hoffm.". Tropicos. Missouri Botanical Garden. 2012年8月14日閲覧
  6. ^ a b c d e f g 誠文堂新光社 2013, p. 100.
  7. ^ a b c d e f g h 主婦の友社 2011, p. 265.
  8. ^ a b Vaughan, J.G.; Geissler, C.A. (1997). The New Oxford Book of Food Plants. Oxford University Press 
  9. ^ a b c d 成美堂出版 2012, p. 179.
  10. ^ 大槻真一郎、尾崎由紀子『ハーブ学名語源事典』東京堂出版、2009年4月、109頁。ISBN 978-4-490-10745-6 
  11. ^ a b c d McGee, Rose Marie Nichols; Stuckey, Maggie (2002). The Bountiful Container. Workman Publishing 


「チャービル」の続きの解説一覧




固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「チャービル」の関連用語

チャービルのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



チャービルのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのチャービル (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS