スタンダード・ヴァンガード
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/09/22 05:43 UTC 版)
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概要と歴史
1947年7月に発表されたこの車は、それ以前のモデルとの類似点は何もない全く新規のモデルであり、スタンダードにとって第二次世界大戦後初の新型車であった。また、グリフィンの翼を図案化した新しいスタンダードのバッジを初めて着けた車でもあった[1]。
第二次世界大戦が始まると、英国と英語圏の輸出市場にいた潜在顧客となる人々の多くは、数年間の軍務や戦時海事の役務に従事した。従って英海軍に関係した車の名称は、ことに第二次大戦経験者たちにとっては大きな意味合いをもっていた。
大戦終了後ほどない時期のスタンダードによる「ヴァンガード」の車名採用は、1944年に数多くのメディアが注目する中で就役した英海軍最後の戦艦であるHMS ヴァンガードを容易に思い起こさせるものであった。この名称の使用許可を取り付けるため、スタンダードは英海軍の上級幹部に対し広範囲な交渉を行なった。
この車のスタイリングは、傾斜した「ビートル・バック」(beetle-back )を持つ1940年前後のアメリカ車・プリムスを思い起こさせるものであった。
ソビエト連邦のメディアは最初の「ヴァンガード」のスタイリングが部分的に1943年から開発され1946年に生産に入ったソ連のGAZ-M20 ポピェーダ(GAZ-M20 Pobeda)の影響を受けていると主張した。1952年に『ザ・モーター』誌(The Motor magazine)は、実際はポベーダがヴァンガードの前年に発表されていたことを無視してソ連のポベーダが「外観のある部分はスタンダード・ヴァンガードを思い起こさせる特徴を示している。」と記した[2]。ポベーダとヴァンガード1はクラスやスタイリングでは相似性が強いが、セミ・モノコック構造採用にまで踏み込んでいた点ではポベーダの方が一歩先んじていた。
同型のウェットライナー型直列4気筒エンジン(wet liner engine )は、1基のソレックス製キャブレターを備えるボアφ85 mm×ストローク92 mmを持つOHVエンジンで、1960年に直列6気筒エンジンが登場するまで全モデルに渡り使用された。初期エンジンの6.7:1の圧縮比は、フェーズ3では7.0:1、スポーツマンでは8.0:1に上げられた。ウェット型シリンダーライナーを使用したこのエンジンは、スタンダードが傍系のファーガソン・トラクター(Ferguson)向けに大量に生産したエンジンとよく似ていた。
トランスミッションは当初前進ギアには全てシンクロメッシュ機構が付いた3速であった。
スカンジナビアではスタンダードはスタンダード・テン(Standard Ten ) サルーンをヴァンガード ジュニアとして販売した。
ヴァンガード フェーズ1
スタンダード・ヴァンガード | |
---|---|
1951年ヴァンガード 1952年ヴァンガード | |
製造国 | イギリス |
販売期間 |
1947年 - 1953年 生産台数:17万4,799台 |
ボディタイプ | 4ドア・サルーン、4ドア・エステート、2ドア・ユーティリティ(オーストラリア) |
エンジン | 2,088 cc 直列4気筒 |
駆動方式 | FR |
変速機 | 3速 MT(1950年からオーバードライブがオプション) |
全長 | 166 in(4,216 mm)[3] |
全幅 | 69 in(1,753 mm)[3] |
全高 | 64 in(1,626 mm)[3] |
ホイールベース | 94 in(2,388 mm)[3] |
-自動車のスペック表- |
この車は従来型のシャーシにプリムス等を思い起こさせる米国車に影響を受けた半流線型の4ドア・ボディを載せていた。サスペンションは前輪がコイルバネを使用した独立懸架、後輪がリーフスプリングで吊ったリジッドアクスルで、前後輪共にスタビライザーを備えていた。ブレーキは全輪油圧式の9 in (228 mm) ドラムブレーキであった。車内空間を稼ぎ出すためにコラムシフトを採用したが、これも先行したアメリカ車に倣った流儀である。
戦後の英国における外貨獲得のための「輸出か死か」とまで言われた輸出優先政策に則り、実質最初の2年間の全生産が輸出に回された。イギリス本国市場での販売開始はようやく1950年になってから始まった。ヴァンガードは意図して輸出を重視しており、特にオーストラリア市場に焦点を当てていた。戦後すぐの頃は車の供給が不足しており、「売り手市場」の状況を生み出していたため、ヴァンガードの入手難は消費者の購入意欲を助長した。
1950年にエステートが追加され、ベルギー向けのみであったがコーチビルダーのインペリア(Impéria )でコンバーチブルも造られた。既存トランスミッションに追加するレイコック・ド・ノーマンビル製オーバードライブ(Laycock-de-Normanville overdrive)は1951年から選べるようになった。
ヴァンガードを輸入していたスイスの代理店はAMAGという精力的な会社で、スイス市場向けにヴァンガード フェーズ1の現地組み立てを行なった。同社は後にスイスでのフォルクスワーゲンの独占販売権を獲得している[4]。
1952年には部分的マイナーチェンジを受けた。ボンネットが低められ、後部窓が拡大され、オリジナルよりも細かな縦桟に幅広のクローム製バーを配した新しいグリルを備えた[4]。
1949年に英国の『ザ・モーター』誌がヴァンガードをテストし、最高速度78.7 mph(126.7 km/h)と0 - 60 mph(0 - 97 km/h)加速に21.5秒、22.9 ml/英ガロン(12.3 L/100 km;19.1 mpg-US)の燃料消費率を記録した。テスト車は、税込みで£671であった[3]。
- ^ The Standard Car Review January 1947
- ^ “Impressions of the Russian POBIEDA”. The Motor. (1952年11月19日) .
- ^ a b c d e “The Standard Vanguard Road Test”. The Motor. (1949年).
- ^ a b c Gloor, Roger (1. Auflage 2007). Alle Autos der 50er Jahre 1945 - 1960. Stuttgart: Motorbuch Verlag. ISBN 978-3-613-02808-1.
- ^ a b c d e “The Phase II Standard Vanguard Road Test”. The Motor. (1953年3月11日).
- ^ a b c d Sedgwick, M.; Gillies.M (1986). A-Z of Cars 1945-1970. Devon, UK: Bay View Books. ISBN 1-870979-39-7.
- ^ “The Standard Diesel Vanguard”. The Motor. (1954年11月10日).
- ^ a b c d e “The Standard Vanguard III”. The Motor. (1956年6月20日).
- ^ “The Standard Sportsman”. The Motor. (1956年9月5日).
- ^ a b c d e “The Standard Ensign”. The Motor. (1958年1月22日).
- ^ a b “News summary: Current events and recent announcements: New Diesel car”. Practical Motorist 6 Nbr 65: p. 481. (1960年1月).
- ^ “The Standard Ensign”. The Motor. (1959年1月7日).
- ^ a b c d e f “The Standard Vanguard Six”. The Motor. (1960年12月7日).
- ^ Australian Monthly Motor Manual, March 1950, pages 834-835
- ^ Standard Vanguard utility images Retrieved from Picture Australia on 1/8/2008
- ^ History of Vanguards in Australia Retrieved on 1 August 2008
- ^ Edward Force, Corgi Toys, 1991, page 166.
- ^ Edward Force, Corgi Toys, 1991, page 174.
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