クサソテツ クサソテツの概要

クサソテツ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/27 20:35 UTC 版)

クサソテツ
クサソテツ
分類
: 植物界 Plantae
: シダ植物門 Pteridophyta
: シダ綱 Pteridopsida
: コウヤワラビ科 Onocleaceae
: クサソテツ属 Matteuccia
: クサソテツ M. struthiopteris
学名
Matteuccia struthiopteris (L.) Tod.
(1866)[1]
シノニム
和名
クサソテツ
英名
en:Ostrich fern

名称

標準和名クサソテツ(草蘇鉄)である[5]。和名の由来は、草本性のソテツの意味で、太く直立する根茎やその先端から広がる葉の様子がソテツ科のソテツを思わせることによる[6][5]。また、別にガンソクという異名がある[1][6]。これは雁足の意味で、株の様子が鳥のガンの足のようであるからという。[注 1]

山菜となる若芽は、多くの地域でコゴミの名でよばれている[8]。「コゴミ」の名は、東北地方では小さくかがんでいる姿を「こごむ」というので、シダ類の若芽の先端が巻き込んだ姿が、かがんでいるように見えることからきている[6]。地方によっては、「コゴミ」は別の食用シダを指していることもある[8]

そのほか方言名で、アオコゴミ[6]、イチヤコゴミ[6]、ガンソク[9]、グサ[6]コゴメ[6]クグミ[6]、ニワソテツ[6]ホンコゴミ[6]など様々な呼び名がある。

分布・生育環境

クサソテツの群生

原産地はアジア東部北米ヨーロッパとされる[10]東アジア、ヨーロッパ、北アメリカ東北部に分布し[6]、日本では北海道本州四国九州北部の各地に分布する[3][5][4]。低山から深山の雑木林の中の木漏れ日が当たるような湿った場所や草原、渓流沿いなどに群生している[3][6][5]。まれに平地の樹林内にも見られる[3]。場所によっては、まばらに生えることもある[8]

形態・生態

落葉性の多年生シダ植物[4]根茎は地下を這って、匍匐茎を伸ばしながら直線的に生育範囲を広げていき[4]、その先に新しい株を作る[6]。根茎は太くて短く直立し、数十枚の葉を束生して、周囲に古い葉柄の基部が集まる[3]。葉数は、生育年数や根株の大きさにもよるが、成熟株で6 - 15葉程度である[6]。春になると地上から葉が渦を巻いた新芽をだし、これがコゴミとよばれている[5]

は栄養葉と胞子葉との区別がある[3]。栄養葉は春に輪状に先が丸まった若芽を束生して、鮮緑色で無毛[8]、草質で柔らかい。葉柄は鮮緑色で淡い縁取りがあり[8]、葉切り口が三角形で、綿毛がまばらに鱗片がつく[4]。完全に展開した栄養葉の外形は披針形で、長さは50 - 100センチメートル (cm) に達し、1回羽状複葉で深く切れ込む[6][4]。側羽片は30 - 40対あり[6]、中程より先端よりのものが一番長く、それより先では急に短くなる。根元に向けては次第に短くなり、葉柄は短い。栄養葉が生長してほとんど広がったあと、茶色い胞子葉が夏か秋に株の真ん中から出てくる[5][8]。長さは栄養葉より短くて60 cm ほどあり、単羽状だが羽片はごく幅狭く、縁が裏側に巻いて裏面の胞子嚢群を包み込む[6][7]。胞子嚢群は葉胞の背側に生じ、中肋の両側に2 - 3列に並んで9 - 11月に熟す[6]

4 - 5月ごろから萌芽が始まり、芽生えから4 - 5日間で15 - 20 cmまで生長する[6]。春の若芽がだんだんと展開してゆき、夏の間は栄養葉が完全に展開し、8 - 9月ごろに胞子葉が出てくる[6]。晩秋になると栄養葉は枯れて、胞子葉から胞子が飛散する[6]。匍匐茎は、4 - 5年以上経過した根株から3 - 4本出て、その先に新芽が出て新しい根株となって増殖する[11]


注釈

  1. ^ 近縁の別種にイヌガンソクがあり、これは本種に似ていることによる[7]。ただし、これに関しては異論もある[要出典]

出典

  1. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Matteuccia struthiopteris (L.) Tod. クサソテツ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年5月28日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Onoclea struthiopteris (L.) Hoffm. クサソテツ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年5月28日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i 高橋秀男監修 学習研究社編 2003, p. 138.
  4. ^ a b c d e f g h 川原勝征 2015, p. 10.
  5. ^ a b c d e f g 高野昭人監修 世界文化社編 2006, p. 45.
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa 農文協編 2004, p. 75.
  7. ^ a b 牧野 (1961) , p. 23
  8. ^ a b c d e f g 吉村衞 2007, p. 38.
  9. ^ a b c d e 金田初代 2010, p. 172.
  10. ^ a b c d e f 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 153.
  11. ^ a b c d e f g h i j k l 農文協編 2004, p. 76.
  12. ^ a b 高野昭人監修 世界文化社編 2006, p. 44.
  13. ^ a b c d e 主婦の友社編 2011, p. 227.
  14. ^ a b c d e f 高野昭人監修 世界文化社編 2006, p. 46.
  15. ^ a b 高橋秀男監修 学習研究社編 2003, p. 139.
  16. ^ 講談社編『からだにやさしい旬の食材 野菜の本』講談社、2013年5月13日、28頁。ISBN 978-4-06-218342-0 
  17. ^ a b c d 農文協編 2004, p. 77.
  18. ^ a b c d 農文協編 2004, p. 78.
  19. ^ a b c d e 農文協編 2004, p. 79.


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