アフリカ系アメリカ人
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/13 15:09 UTC 版)
African American | |
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、、 代表的なアフリカ系アメリカ人 1段目:マーティン・ルーサー・キング(左端)、ルイ・アームストロング(中心)、チャック・ベリー(右端) 2段目:ダイアナ・ロス(左端)、ジャッキー・ロビンソン(中心)、バラク・オバマ(右端) 3段目:コリン・パウエル(左端)、コンドリーザ・ライス(中心)、マイケル・ジャクソン(右端) 4段目:ジャネット・ジャクソン(左端)、マイケル・ジョーダン(中心)、コービー・ブライアント(右端) 5段目:オプラ・ウィンフリー(左)、50セント(右) | |
総人口 | |
4578万9188(14.1%)(2017年)[1] | |
居住地域 | |
アメリカ合衆国 | |
言語 | |
アメリカ英語、黒人英語、南部アメリカ英語、カリブスペイン語、ハイチ語(フランス語系のクレオール言語)、ブラジルポルトガル語 | |
宗教 | |
ほとんどがプロテスタント、一部はカトリック、稀にイスラーム | |
関連する民族 | |
ブラック・インディアン、アメリコ・ライベリアン、アフリカ系ラテンアメリカ人 |
アフリカ系アメリカ人という言葉には黒人(ネグロイド)を意味する語は含まれないが、コーカソイドに属する北アフリカ系アメリカ人(アラブ人やベルベル人の子孫)や、ヨーロッパ系アフリカ人(アフリカーナーやアングロアフリカンなど)の子孫を含まない。
概要
大半は、19世紀半ばの南北戦争以前にアフリカ(サハラ砂漠以南のブラックアフリカ)から奴隷貿易により米国へ連れてこられた奴隷の子孫となるが、より新しい時代に自由な移民として渡米した者やその子孫も存在する。彼らをアフリカ系 (African) と呼ぶべきかどうかについて、また、黒人 (Black) と呼ぶべきかどうかについては、論争がある。中米に奴隷として送られたのちに移民として渡米するなど、より複雑な経緯を持つ者もいる。
奴隷として連れて来られた際は出身集団や民族集団が異なっていたが、奴隷制度によって民族・文化的なつながりが乏しくなっていき、また、長い年月によって混血も進んだため、民族集団としてではなく、アメリカ合衆国に在住する黒人の人種コミュニティとして度々用いられる(米国内の黒人人種比率: 12.9%、2005年)。
アフリカ系アメリカ人は、長い間人種差別の対象とされ苦難の道を歩んできたが、現在はブラジルなど他のヨーロッパ系主体の移民国家のアフリカ系住民より社会進出が進み、ホワイトカラーや軍人、俳優やスポーツ選手で活躍する場合も多く、多数の閣僚を輩出するなど、国政の中枢にまで上がりつめるようになった。
呼称
以前は「ニグロ (negro[† 3])」や「ニガー (nigger[† 4])」などとも呼ばれたが、これは1960年代の公民権運動の高まり(ブラック・パワー)以来差別用語とされている。その一方、アフリカ系アメリカ人男性同士の人類同胞主義の表現として「ニガ (nigga)」が使われる事も多々あり、その傾向は特にラップにおいて顕著である。しかし日本人などの黄色人種や白人系アメリカ人を含め、アフリカ系アメリカ人以外の者達がこの表現を使う事は差別的言動とみなされる。
民族的回帰運動でもある「ブラック・パワー」を提起した黒人たちは、「ブラック・イズ・ビューティフル(黒は美しい)」をスローガンに掲げ、白人から否定され、自らも否定してきた黒人の人種的特徴を「黒人らしさ」として逆に強調し、彼らの民族的アイデンティティーを主張する表現のひとつとしてアフロヘアーという髪型も生み出した。彼らはキリスト教からイスラム教へ改宗したほか、自らを「ブラック(黒人)」と自称し、これは現在の黒人たちの一般的な自称となっている。
アメリカ陸軍においては、2014年11月8日まで軍内の規定で、黒人を指すときに「黒人もしくはアフリカ系の米国人」「ハイチ人」「ニグロ」などが使用可能であった。批判を受け、陸軍は「黒人もしくはアフリカ系の米国人」の表記のみを容認することとなった[2]。
定義に関する論争
マーチン・ルーサー・キングの演説にあるようにアメリカ合衆国で単に「黒人」というときは奴隷解放宣言までに奴隷としてアメリカ合衆国に渡来したアフリカの人々の子孫を指すのが一般的である。しかし移民大国のアメリカには、現在に至ってもアフリカ、中南米やカリブ海諸国から黒人の移民の流入がある。しかし、彼等は米国の手によってアフリカから連れて来られた黒人奴隷の子孫とは異なる(中南米やカリブ海諸国から来た場合はスペインやフランス、イギリスなどにより連れて来られてきた黒人奴隷の子孫である)ことから、アメリカ国籍を持っていない場合は、「アフリカ系アメリカ人」という呼び名は該当しないとの指摘もある。例えば、コリン・パウエルはアフリカからジャマイカを経由し米国へ到着した移民の子孫であり、カリビアン・アメリカンが正当な名称であるが、実際にはアメリカ国籍を持ちアフリカにルーツを持つ場合は、アフリカ系アメリカ人という名称が用いられる。
デブラ・ディッカーソンは、黒人 (Black) という語は、アメリカ(America、アメリカ合衆国のみを指す名称ではなく両米の意味か)に奴隷として連れて来られた人々とその子孫に使用を限定すべきであると主張している[3]。また彼女は、アフリカ系 (African) についても同様の主張をしている[4]。
注釈
- ^ 英語発音: [ˈæfrɪkənəˈmɛrɪkən] アフリカナメリカン
- ^ アメリカ英語発音:[ˌæfroʊəˈmɛrɪkən] アフロウアメリカン
- ^ アメリカ英語発音:[ˈniːɡroʊ]/イギリス英語発音:[ˈniːɡrəʊ] ニーグロウ
- ^ アメリカ英語発音:[ˈnɪɡər] ニガー、イギリス英語発音:[ˈnɪɡə(r)] ニガ
- ^ カナダなどの他国籍選手を加えても、25人と少数である(List of black ice hockey players参照)
出典
- ^ “ACS DEMOGRAPHIC AND HOUSING ESTIMATES: 2017 American Community Survey 1-Year Estimates”. United States Census Bureau. 2018年4月5日閲覧。
- ^ “米陸軍、「ニグロ」表記容認の内部規定を削除 謝罪も表明”. CNN. (2014年11月8日) 2014年11月10日閲覧。
- ^ Debra J. Dickerson (January 22, 2007). Colorblind – Barack Obama would be the great black hope in the next presidential race – if he were actually black. salon.com. オリジナルの2010-09-24時点におけるアーカイブ。 2010年10月7日閲覧。.
- ^ Debra Dickerson - The Colbert Report - 2/8/07 - Video Clip | Comedy Central
- ^ Thomas Jefferson and Sally Hemings: An American Controversy by Annette Gordon-Reed, p.160
- ^ 米国赤十字社
- ^ 黒人奴隷クンタの20年間 =「世界商品」の生産と黒人奴隷制度=
- ^ “米黒人の“南部回帰”が不況のあおりでUターン 伝統的ライフスタイルも引力” 2011年6月5日閲覧。
- ^ “黒人少年射殺、マイケル・ブラウンさんが殺されたアメリカ・ファーガソンで暴動再燃”. The Huffington Post (2014年8月17日). 2015年1月2日閲覧。
- ^ “黒人男性エリック・ガーナーさんを窒息死させた白人警官も不起訴 NYに怒りの声渦巻く”. The Huffington Post (2014年12月4日). 2015年1月2日閲覧。
- ^ “「息ができない」「撃つな」1万人が米議会に向けデモ、黒人死亡事件に抗議”. 産経ニュース (2014年12月14日). 2015年1月2日閲覧。
- ^ “米白人学生らが黒人侮辱ビデオ 南部オクラホマ大で抗議”. 産経ニュース. (2015年3月10日) 2015年4月1日閲覧。
- ^ “Floyd Mayweather: 'I'll cook that chump'”. ESPN.com (2010年9月4日). 2017年5月22日閲覧。
- ^ “Floyd Mayweather questions Jeremy Lin”. ESPN.com (2012年2月15日). 2017年5月22日閲覧。
- ^ “クリス・ロック、アカデミー賞授賞式でのジョークが人種問題を「矮小化&下品」と非難の的に”. TVグルーヴ (2016年3月3日). 2017年5月22日閲覧。
- ^ “バイデン氏、中国系標的のヘイトクライムを非難 「米国らしくない」”. AFP (2021年3月12日). 2021年3月14日閲覧。
- ^ “アジア系への暴力事件、日本人も被害 少数派間の連帯不可欠 遠い融和 狙われるアジア系(下)”. 東京新聞 (2021年5月18日). 2021年9月14日閲覧。
- ^ “白人とアジア系の関係は良いと約90%が回答、関係が悪いのは黒人とヒスパニック”. Record China (2013年7月20日). 2017年5月22日閲覧。
- ^ “WBC Suspends Adrien Broner Over 'Mexican' Swipe”. BoxingScene.com (2014年5月7日). 2017年5月22日閲覧。
- ^ “報復警官殺しで、混乱深まる人種間対立”. ニューズウィーク日本版 (2014年12月24日). 2017年5月22日閲覧。
- ^ Jon Entine(著)、星野 裕一(訳)「黒人アスリートはなぜ強いのか? -その身体の秘密と苦闘の歴史に迫る」より
- ^ MLB Scores An "A" For Racial Diversity CBS NEWS
- ^ 大リーグ、悩みは黒人選手の減少 MSN産経ニュース
- ^ Granderson tries to get youth involved(mlb.com)
- ^ The Torii Hunter project
- ^ 蛭間豊章記者の「Baseball inside」ブルワーズ2選手と黒人少年達の小さな旅(第372回)
- ^ シャニー・デービス黒人初金/Sスケート nikkansports.com
- 1 アフリカ系アメリカ人とは
- 2 アフリカ系アメリカ人の概要
- 3 ワンドロップ・ルール
- 4 血液型
- 5 他人種との対立
- 6 評価と反応
- 7 脚注
- アフリカ系アメリカ人のページへのリンク