逮捕と布教
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/11 06:30 UTC 版)
「マーシャル・アップルホワイト」の記事における「逮捕と布教」の解説
1974年8月、アップルホワイトはテキサス州ハーリンジンで逮捕された。これは、ミズーリ州で借りた車を返さなかったことが原因であった。アップルホワイトはミズーリ州セントルイスに移送され、6か月間服役した。この時、彼は「神から権限を与えられ」車を返さなかったと主張した。服役中、彼は神智学を熟考し、その後には、地球外生命体と進化について賛同しオカルトな事象について議論することを放棄した。 アップルホワイトの釈放後、ネトルズと彼は地球外生命体とコンタクトをとることを決意し、同志達を探した。彼らは集会の広告を発行し、その集会では、彼らが「クルー (crew)」と呼ぶ、門弟の勧誘をおこなった。この集会の際には、彼らが地球外の天体「ザ・ネクスト・レヴェル (The Next Level)」の生命体の代理であると主張した。その生命体は、実験の参加者を探しているとされた。彼らは、実験に参加することに同意した人は、さらに高レベルに進化した生物になることが出来ると主張した。ネトルズとアップルホワイトは、自分たちの事を「ギニア (Guinea)」や「ピッグ (Pig)」と称した。アップルホワイトは、彼の役目を「実験室の指導者 (lab instructor)」であると述べ、第一の議長とされたが、一方でネトルズは、時折、発言や修正を差し挟むことがあった。二人は、参加者に個人的に話しかけることは滅多に無く、電話で彼らにコンタクトを取るための電話番号を伝える程度であった。彼らは、当初この団体を「アノニマス・セクシャホリックス・セリベート・チャーチ (Anonymous Sexaholics Celibate Church)と名付けていたが、すぐに「ヒューマン・インディヴィデュアル・メタモルフォシス (Human Individual Metamorphosis)」として知られるようになった。 アップルホワイトは、古代宇宙飛行士説に基づく神智学を信仰していた。その中では過去に地球外生命体が人類を訪れており、地球に人類を配置し、選ばれた少数の人類を確保しに来るだろうとされていた。この教えは、改革派キリスト教における無条件選挙(英語版)の考え方との類似性がある。これは、アップルホワイトの長老派教会の教養に起因するものであるとされた。彼は、しばしば「スタートレック」から引用されたフレーズを使って、地球外生命体に関する議論を行い、宇宙人はこのテレビドラマを通して彼とコミュニケーションをとっていると述べた。 アップルホワイトとネトルズは、カリフォルニア州の団体に送付し、1975年4月にはニューエイジ帰依者たちに対して演説するために集会にも招待された。この集会で、アップルホワイトらは、50人の参加者のおよそ半数に彼らの信者になるように布教活動を行った。更に、大学のキャンパスでの布教に力を入れており、8月にはカリフォルニア州レッドウッドシティのカニャダ・カレッジ(英語版)で布教を行っている。1975年9月にオレゴン州で行われた集会では、メディア放送から興味をそそられた人々が居たことで、更なる人員の獲得に成功した。約30人の人々が家を捨て、彼らに付き従うようになった。その報道自体はネガティブなものであった。コメンテーターや元信者達は、この教団を嘲笑い、アップルホワイトとネトルズに対して、洗脳の告発を浴びせた。バルチとテイラーは、アップルホワイトとネトルズは圧力戦術を避け、身を捧げた信者達のみを探していたと述べている。 新宗教の研究者であるベンジャミン・E・ゼラーは、アップルホワイトとネトルズの説教は、個々の成長を通した解放に焦点が当てられていたと述べており、ニューエイジ運動の時代の風潮に類似していると見做している。同様に、個人の選択の重要性もまた強調されていた。アップルホワイトとネトルズは、ニューエイジ運動を人間の創造物と見做し、自身らとの繋がりを否定した。社会学者であり、カルトの研究を行っているヤーニャ・ラリック(英語版)は、彼らの人員の獲得の成功は、彼らの思想と有りがちなニューエイジの教え方から逸脱した手法との折衷に帰するとしている。その手法では、慣れ親しんだ言語を保ちながら文面上の宇宙船について議論していた。彼らの門弟の大部分は若く、オカルティズムに興味を持っていたり、そうでなければ社会の主流から外れた生活を送っていた者たちであった。彼らは、様々な信仰的背景を持つ者たちで構成されており、中にはアジアの宗教(英語版)やサイエントロジーを背景にしていた者もいた。多くのものがニューエイジの教えを叩き込まれており、アップルホワイトとネトルズが簡単に彼らの思想を変えることを可能としていた。アップルホワイトは、彼の信者達は、まるでイモムシが蝶になるかのように、生命体の中でも高いレベルへと達しつつあると考えていた。この例は、初期の文献の大多数から使用されている。アップルホワイトは、これを「異なった種族への生物学的変化であり、世俗的な自然主義に則した科学的真実として、彼の教えを広めている」と強く主張している。彼は、初期からの信者達に、彼は比喩的な物言いをしないことを強調しており、しばしば「生物学」や「化学」という単語を声明の中で使っている。1970年代半ばまで、彼は自分たちの事を、科学に対して下流と見做していた「宗教」であるとされることを否定しようと試みていた。彼は宗教を非科学的であると否定する一方、しばしば、彼らを進化させる宇宙人の能力のためには信仰が必要であるとも説いていた。
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