日本におけるジビエ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/26 09:59 UTC 版)
詳細は「日本の獣肉食の歴史」を参照 日本で一般的に肉食が広まったのは明治時代以降とされているが、それ以前、特に不殺生戒を持つ仏教普及前には狩猟・肉食の文化はあった。マタギを含めた猟師がシカやクマ、イノシシを獲っていたし、海から離れた山岳地ではツグミやキジなどの野鳥も食べられていた。ウサギを一羽二羽と数えるのも、鳥と偽りながら食べられていた名残である。江戸時代の江戸においては近郊の農村から仕入れたその手の肉を取り扱うももんじ屋と呼ばれる店が存在していた。そうした意味においては、日本人もジビエを食べてきたといえる。 フレンチ食材としてのジビエは、1990年代の中頃から日本に輸入されるようになった。ピジョン(鳩)、コルヴェール、ペルドロー、フザン、リエーヴル、シュヴルイエなどがフランスから入ってきている。ただし全てがフランス産という訳ではなく、ベルギー、イタリア、スペイン、ドイツ、さらにはオーストリアなどで獲れたジビエがいったんフランスに集められる。これは日本における検疫の都合によるものである。テレビ番組『料理の鉄人』で「ジビエ対決」が組まれるなど、知名度が上がるにつれて、ジビエ料理を出すレストランも増えてきている。 現在日本ではジビエを入手するには専門の業者・肉屋に依頼する方法が一般的だが、国内の猟師とつながりのある肉屋、または食肉処理施設を持つ猟師から直接買い付ける方法もある。ジビエの品質は年齢や性別など肉質が不揃いで当たり外れがあり、実際に捌いてみないと確認できない事も多い。また、費用や労力がかかる上に安定供給できない効率の悪い商材のため、相場感も独特である。ジビエの流通では信頼関係や目利き、経験が重要となる。 日本国内の多くの都道府県では、イノシシやシカなどによる農作物や樹木の食害に悩まされていることから、生息密度をコントロールするために、鳥獣被害対策実施隊を組織すると共に地元猟友会の協力を得て毎年一定量の「有害鳥獣駆除」を行っている。しかし捕獲された野生動物肉が食肉として利用されることは少ない。例えば2006年に長野県で駆除されたニホンジカ約9,200頭のうち、食肉となったのは820頭で僅か9%に過ぎない。大半はハンターに自家消費されたり、山中に埋設されたりしている。そうした中、平成20年2月の『鳥獣による農林水産業等に係る被害防止のための特別措置に関する法律』が施行された以降は捕獲したシカを「モミジ鍋」ばかりではなくジビエとして消費を拡大し、特産物として地域振興につなげようという動きも多い。長野県大鹿村などでの取り組みが代表例として挙げられるが、近年は全国各地の自治体も取り組み始めている。獣肉を単に肉屋や地域特産物販売所に並べるだけでは地域振興にはならず、「販路の確保」と「調理法の普及」が重要であると指摘されている。 シカについては、人間用の食肉に向かない小さな駆除個体や消費しきれない分は、ペットフードに加工する取り組みも行われている。 前述の様な背景から、駆除した鳥獣の肉を有効利用し、地域振興にも生かすためジビエ料理の普及拡大を図る日本ジビエ振興協議会(後に日本ジビエ振興協会へ改称)が2012年に発足。流通加工技術の向上と情報交換のため、2015年には第一回ジビエサミットが開催された。日本ジビエ振興協会は、各地のジビエ肉処理施設をネットワーク化し、特定の部位(例えばシカの前脚や脛)の加工を集約して企業に供給したり、認証(後述)取得や捕獲者・場所から供給先までの履歴管理といった安全対策を強化したりする事業・計画を進めている。日本のジビエ肉流通量は2017年度で1230トン(農林水産省集計)であり、外食チェーン企業が本格導入した場合の需要急増に対応できるようにすることを目指す。これは、日本フードサービス協会が2019年11月~2020年2月に予定する「全国ジビエフェア」に対応した取り組みでもある。 日本ジビエ振興協会に加盟する地方自治体(10県12市町村)は2021年4月20日、ジビエ振興自治体連絡協議会を設立した。自衛隊との連携(ジビエ肉の駐屯地での消費、退職自衛官の捕獲・狩猟従事)を政府に要望した。 また前述・後述のような衛生面の問題を防ぐことも兼ねて、農林水産省は2018年5月18日、シカとイノシシについて「国産ジビエ認証制度」の制定を発表した。
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