あびきょうかん

新語時事用語辞典

阿鼻叫喚

読み方：あびきょうかん

阿鼻叫喚とは、阿鼻叫喚の意味

阿鼻叫喚とは、その状況に置かれた人々が苦しみ泣き叫ぶような、筆舌に尽くしがたい酷い状況のこと、および、その人々が苦しみ泣き叫ぶさまのことである。人々が興奮してパニック状態になり怒号が飛び交うような混乱した状況を阿鼻叫喚と表現する場合もある。

阿鼻叫喚の語の由来・語源

阿鼻叫喚は、もともとは仏教の「地獄」の概念に由来する用語である。「阿鼻」も「叫喚」も、どちらも罪人が死後に落ちる地獄（八大地獄）のひとつである。つまり阿鼻叫喚は「阿鼻地獄」と「叫喚地獄」の総称である。
「阿鼻」は「無間（むけん）」ともいうが、これはサンスクリット語の「avici」を音写した漢訳語である。「叫喚」は 大声でわめきさけぶことを意味する。これもサンスクリット語の「raurava」を漢訳した語である。

八大地獄は、等活地獄、黒縄地獄、衆合地獄、叫喚地獄、大叫喚地獄、灼熱地獄、大灼熱地獄、阿鼻地獄、以上8種の地獄の総称である。等活～阿鼻の順にしたがい罪と責め苦が重くなる。
「叫喚地獄」は殺生や飲酒の罪を犯した者が落ちる地獄で、地獄の鬼に鉗子で口を開けられ溶けた鉄を流し込まれるという罰を受ける。「阿鼻地獄」は、親殺しや謗法（仏法を蔑ろにする）罪を犯した者が落ちる地獄である。手足から炎が吹き出し、その苦しみが八万劫という途方もないあいだ続くとされる。

阿鼻叫喚の語の使い方（用法）、例文

「阿鼻叫喚」は、災害・戦争・事故などが発生した現場の凄惨さを表現する場面で用いられやすい。たとえば、「テロ攻撃によって平和な町は一瞬にして阿鼻叫喚の様相を呈した」というような言い方で用いられることが多い。

阿鼻叫喚は「阿鼻叫喚の巷（ちまた）」という言い回しで用いられることも多い。

阿鼻叫喚の類義語・対義語

阿鼻叫喚の類語としては「地獄絵図」が挙げられる。「地獄絵図」は、地獄さながらの酸鼻を極める（非常にむごたらしい）状況という意味である。つまり「地獄絵図」と「阿鼻叫喚」は実質ほぼ同義語といえる。ただし、字面上「地獄絵図」は視覚的な情報のニュアンスを含み、「阿鼻叫喚」は聴覚的なニュアンスを含む、という点で使い分けられるかもしれない。
「阿鼻叫喚」は仏教的地獄に由来する語であるから、その対義語としては「極楽」「極楽浄土」が挙げられるかもしれない。「極楽」は、苦しみの無い安楽な世界の喩えとしてもよく用いられる。

阿鼻叫喚は英語でどう言うか

阿鼻叫喚は、英語では pandemonium または agonizing cries と訳されることが多い。pandemonium（パンデモニウム）は「大混乱の場所」を指す語で、もともとはミルトンの叙事詩「失楽園」に出てくる悪魔の住む都市の名前である。「伏魔殿」と訳されることもある。agonizing cries は「苦悩の叫び」という意味の表現である。

文例。

• Pandemonium reigned in the town the moment the news reached them.
  その知らせに町中はたちまち阿鼻叫喚の地獄と化した

（2021年8月26日更新）

実用日本語表現辞典

阿鼻叫喚

読み方：あびきょうかん

「阿鼻叫喚」とは、非常に無残でむごたらしい様のことを意味する表現である。

「阿鼻叫喚」とは・「阿鼻叫喚」の意味

「阿鼻叫喚」とは、地獄の責め苦に耐えかねて泣き叫ぶ様子から例えて、現世における無残でむごたらしい場面を表現するときに使われる四字熟語である。ひとりというより大勢でパニック状態に陥る状況で使われるのが一般的であり、災害や事件事故に関わる非常にネガティヴな表現なので、あまり良い意味で使うことはない。稀なケースとして何か嬉しいことや楽しいことがあり、喜びすぎて大勢で騒ぐ様子も阿鼻叫喚といわなくもない。良い意味で使うのならば、阿鼻叫喚の反対となる極楽浄土がある。日常的にあまり使う機会はないが、阿鼻叫喚に似ている言葉に地獄絵図がある。阿鼻叫喚と地獄絵図のふたつの言葉は意味も似ているので間違われやすいが、動と静のイメージで区別するとわかりやすい。

「阿鼻叫喚」の読み方

「阿鼻叫喚」とは、「あびきょうかん」と読む。

「阿鼻叫喚」の語源・由来

阿鼻叫喚は、ふたつの言葉を掛け合わせた四字熟語である。阿鼻も叫喚も、仏教の思想に登場する地獄の名前からきている。地獄は生前に罪を犯した亡者が閻魔王の裁きで有罪が決まると落とされる世界のことで、罪の重さに応じて様々な責め苦を味わうことになる。八大地獄の中で最も罪の重い罪人が来るのが阿鼻地獄で、地獄の中でも最下層にあたる。絶え間なく業火に焼かれ続けることから、阿鼻地獄は無限地獄とも呼ばれる。叫喚地獄は阿鼻の次に重い罪人が来る場所で、熱湯に浸かったり猛火で燻される。どちらも耐え難い苦痛に我慢できずに泣き叫んで許しを請う姿を指して、阿鼻叫喚という言葉で表現するようになった。

元々の阿鼻はサンスクリット語の「avici」の発音を漢字で写し換えたもので、「絶え間がないこと(無限)」という意味がある。同様に叫喚はサンスクリット語の「raurava」からきており、「叫び声」という意味だ。ふたつを合わせることで、「叫び声が絶え間がなく続くこと」という恐ろしい意味が生まれた。

「阿鼻叫喚」の熟語・言い回し

阿鼻叫喚するとは

絶望的な状況に陥って、苦しみのあまり実際に泣き叫んでいること。

阿鼻叫喚の巷とは

ある地域の一帯に住む人々が、災害などの厄災に見舞われて悲惨な状況に陥っている様子。救いようのない状況や辛い現実に耐えきれず、集団でもがき苦しむさまも含んでいる。

阿鼻叫喚になるとは

悲惨な状況に陥って泣き叫びたいほどの苦しみが襲っている状態で、状況を説明するときに使われる。

「阿鼻叫喚」の使い方・例文

阿鼻叫喚は悲惨な状況に陥ったときの様子や、実際に泣き叫ぶような辛い目にあっているときに使われることが多い。
・突然起きた大きな地震により被害を受けた人々は、辺り一面が瓦礫となって家に帰れず阿鼻叫喚に陥っている。
・飛行機のエンジンが止まり急降下すると、中の乗客たちは恐怖のあまり阿鼻叫喚になるしかなかった。
・突如として町に現れたヒグマに襲われ、逃げ惑う人々の群れで阿鼻叫喚の巷と化した。
・人気スターがお忍びで遊びに来ていたのがファンに見つかり、辺りは阿鼻叫喚のごとく黄色い声が響き渡った。
・原爆投下後の町はまさに地獄そのもので、水を求めて阿鼻叫喚となりながら次々と川へと飛び込んだ。
・ワールドカップ優勝の瞬間に町のあちらこちらが暴徒化し、阿鼻叫喚となっている。
・株の大暴落を知った投資家たちは、悲痛なあまり阿鼻叫喚ともいえるショックから立ち直れない。
・目の前から襲ってくる津波に家を流され、阿鼻叫喚となるもの、なすすべなく立ち尽くすものと様々である。
・銀行に現れた強盗に阿鼻叫喚となる利用客と、冷静な行動と判断をする行員たちとのギャップが大きい。
・イノシシに追いかけられている現場は阿鼻叫喚となったが、まもなく捕まえられた。

（2023年2月1日更新）

阿鼻叫喚

読み方：あびきょうかん

阿鼻叫喚とは、非常に悲惨なさま、あるいは、人々が非常に凄惨な状況の渦中にあって救いを求め泣き叫んでいるさまを意味する四字熟語。阿鼻叫喚は「阿鼻」と「叫喚」からなる語であり、阿鼻も叫喚も仏教の「八大地獄」説に由来する、地獄の名である。阿鼻地獄は無間地獄とも呼ばれる、絶え間なく苦痛が続く世界である。叫喚地獄は煮えたぎる釜で身を茹でられる地獄であり、亡者が絶えず喚き叫んでいるという。

「阿鼻叫喚」を英語でいうなら、「苦しみ泣き叫ぶ」という趣旨を意訳して agonizing cries や screaming などと表現することになる。

阿鼻叫喚は、もともとは仏教の地獄の呼び名であるだけに、生半可な酷さではなく、これ以上ないというほど苦しみもがき泣き叫ぶ壮絶な凄惨さの形容としてふさわしい表現である。

阿鼻叫喚の類語・対義語・例文

阿鼻叫喚の類語・類似表現としては、「地獄絵図」や「修羅場」などが挙げられる。地獄絵図は地獄の様子（を描いた図）ということで阿鼻叫喚に等しい。修羅場とは激しい闘争が行われている場所という意味合いである。

阿鼻叫喚の対義語・反対語としては、「極楽」「安楽」などが挙げられる。それぞれ「安楽浄土」や「極楽浄土」ともいい、地獄とは対極にある浄土（穏やかで満ち足りた世界）の呼称である。

「阿鼻叫喚」の語を用いた例文としては、「不動産バブルが崩壊して関連銘柄が軒並み大暴落、株式市場は阿鼻叫喚の様相を呈した」といった例が挙げられる。「阿鼻叫喚」という表現は、基本的には第三者の中立的な視点からの叙述に用いられる場合が多く、自分自身が悲惨な状況に置かれている、というような主観的な表現としては用いられにくい。

（2020年7月18日更新）

デジタル大辞泉

あび‐きょうかん〔‐ケウクワン〕【^×阿鼻叫喚】

読み方：あびきょうかん

１ 仏語。阿鼻地獄と叫喚地獄とを合わせた語。地獄のさまざまの責め苦にあって泣き叫ぶようすにいう。

２ 悲惨な状況に陥り、混乱して泣き叫ぶこと。「一瞬の事故で車中は—の巷(ちまた)と化す」