OV-10 (航空機) 運用

OV-10 (航空機)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/09/09 10:02 UTC 版)

運用

OV-10Aは、1968年2月23日からアメリカ空軍とアメリカ海兵隊への引き渡しが開始され[1]、アメリカ空軍はハールバートフィールド空軍基地所属の第4410コンバットクルー訓練航空団(4410CCTW)第4409コンバットクルー訓練飛行隊(4409CCTS)、アメリカ海兵隊ではキャンプ・ペンドルトンの第5海兵観測飛行隊(VMO-5)に最初に配備されて乗員訓練が開始された。同年7月にはアメリカ海兵隊の第2海兵観測飛行隊が南ベトナムのマーブル・マウンテンに派遣され、続いて第6海兵観測飛行隊も派遣された。同年7月31日にはアメリカ空軍のOV-10AもC-133 カーゴマスターによって6機が南ベトナムのビエンホア基地に空輸され、同年10月には第2陣もビエンホア基地に送られて前線航空管制(FAC)任務に使用された。1969年1月にはアメリカ海軍がアメリカ海兵隊から借用した18機のOV-10Aで第4軽攻撃飛行隊(VAL-4)を編成し、4月からメコン川河口のビンツイに展開させ、第3軽ヘリコプター飛行隊(HAL-3)のUH-1Bとともにデルタ地帯の監視や船艇護衛などの河川作戦に投入された。ただ、OV-10Aは実戦で運用してみると性能的に中途半端な機体であることが判明し、アメリカ空軍海兵隊共にFAC機や観測機として多用した。また、アメリカ海軍と海兵隊は、OV-10Aの貧弱な固定武装を改善するために胴体下部ハードポイントに20mm機関砲ポッドを一部の機体に搭載させていた。

1970年になると、アメリカ空軍とアメリカ海兵隊ではOV-10Aへの夜間攻撃能力付与という考え方に基づいて、アメリカ空軍ではペイブネール計画に着手、アメリカ海兵隊でもOV-10Dの開発に着手された。ペイブネール計画では、夜間用ペリスコープ照準器レーザーデジグネーター、ターゲットイルミネーターLORAN受信機などが新たに搭載され、アメリカ空軍が保有するほとんどのOV-10Aに改修が施された。

一方のOV-10Dは、YOV-10A試作2号機を改造した空力試験機YOV-10Dが1970年6月に初飛行し、もう1機新たに製作されたYOV-10Dとともに1971年-1972年にかけて南ベトナムに派遣されて運用試験が行われた後、1974年に17機のOV-10Aと1機のYOV-10Dからの量産改修が認められた。OV-10Dは、機首にAN/AAS-37前方監視赤外線/レーザー目標指示/自動ビデオ追跡装置とALQ-144赤外線妨害装置を搭載して、半球形のセンサー収容部が機首下面に張り出している。また、追加した電子機器の冷却のため機首左右にエアインテークが追加された。

エンジンは、ギャレット社製T76-G-10/12から出力強化型のT76-G-420/421 ターボプロップエンジンへ換装された。試作機YOV-10Dでは固定武装M60 7.62mm機銃から機首のセンサーターレットと連動可能なM197 20mm 3砲身機関砲に変更されたが、最終的にM197の搭載は中止され、滞空時間延長のため、胴体下面への増槽タンクの追加のみとなる。同時に、それまでロケット弾ポッドやAIM-9 サイドワインダーなどの軽量物のみの搭載だった、主翼下パイロンに増槽の搭載が可能となった。 また、後に23機のOV-10AもOV-10D規格に改修され、合わせて機体フレームの強化や搭載電子機器類の新型化なども行われてOV-10D+と呼ばれている。

森林火災などに対応するCAL FIRE(California Department of Forestry and Fire Protection)所属機

OV-10は最終的に360機が製造され、アメリカ空軍に157機のOV-10A、アメリカ海兵隊に110機のOV-10A/Dが配備された[1]。アメリカ空軍のOV-10Aは、1990年に後継となるA/OA-10A サンダーボルトII攻撃機との交替が完了して退役、アメリカ海兵隊のOV-10A/Dも1995年F/A-18 ホーネット戦闘攻撃機との置き換えが完了して全機が退役している。退役した機体の一部は消防機として使用されており、消火剤を搭載した航空機への前線航空管制や森林地帯での偵察に使用されている。また、NASAでも各種実験に使用されている(後述)。

2015年になって、2機のOV-10が現役復帰しISILとの戦闘に試験的に再投入された[2][3][4][5]。このOV-10はエンジンや電子機器の改修を受けた"OV-10G+"[3][5]と呼ばれる改良型であるが、それでも運用コストはF-15のようなジェット戦闘機の数分の一から数十分の一程度で済み、120回以上作戦投入されて一定の戦果を挙げたとされる[2]。CNNのインタビューに答えた元アメリカ海軍中佐で軍事アナリストのクリス・ハーマーは「ブロンコの現役復帰は良いアイデア。F-35のような新鋭機を武装勢力への作戦に使うのは、ごみ収集の仕事のためにロールスロイスの車を使うようなもの」と話し、OV-10の再運用を評価した[2]。OV-10はF-15の半分程度の速度で飛行することができ、また無人航空機と異なりパイロットが直接戦場を視認しながら作戦を行えることから、こういった低強度紛争ではきわめて有効な兵器であると考えられている[2]


  1. ^ ダーマトグラフなどのグリースペンシルではなくいわゆるホワイトボードなどに使われるマジックペン
  2. ^ 同パイロットは数日前にこの偵察部隊3名の夜間潜入空挺降下も同機体で担当していた
  3. ^ 動態保存するOV-10の登記上の所有者でもある。
  4. ^ 元アメリカ海空軍パイロットで、同軍やアメリカ土地管理局、歴史的な航空機や車両を動態保存する民間団体「カクタス・エアフォース」でOV-10の操縦経験もある。





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