DVDレコーダー DVDレコーダーの歴史

DVDレコーダー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/18 06:18 UTC 版)

DVDレコーダーの歴史

シェアの推移

2003年頃まではDVDレコーダー御三家と呼ばれていた松下(パナソニック)、東芝、パイオニアの3社が寡占していたが、ソニーがスゴ録・PSXなどを開発してDVDレコーダーに参入した頃から日立やビクターなどの他社も次々と参入しシェア争いは激戦と化した。なかでもソニーはかつての御三家と互角のシェア争いをするまでになった。パイオニアもシェアは低迷している現状である。さらに2007年9月には日立も自社での開発を中止している。2008年以降は各社ともBDレコーダーへの移行の動きが高まり、2012年現在すべてのメーカーが新製品をBDレコーダーに移行した。

2006年以降、自社製薄型テレビとのリンク機能の搭載により松下・シャープが大きくシェアを伸ばした[4]。これに追随し他社もリンク機能を搭載した。

売れ行きの不振、生産の終了

2006年以降DVDレコーダー(ハードディスク内蔵型を含む)は深刻な売れ行き不振[5][6]に直面し、DVD関連機器メーカーに大きな打撃を与えた[5]。次のような一般向け家電製品としては異質な特質が悪影響を及ぼしていると考えられる。

  • デジタル放送関連で、コピー制御(コピーワンス)の不便さ[5]ダビング10で若干緩和。
  • デジタル家電の中でもトップクラスの、製品機能の複雑さ、難解さ[5]
    • これは機能デザイン開発コストだけでなく、取扱説明書や電話サポートなどのコスト増にも直結する。[要出典]

売れ行き不振はHD DVDやBlu-ray Discなどの登場による一時的な買い控えであるとの見方もあったが、その後過剰ともいえる著作権保護技術の制約を受けず、また操作が容易な旧来からのVHSビデオデッキが未だ多数残っていることから、DVDレコーダーに買い換える必要性を感じない消費者が多いことが普及率の上昇を妨げているとの見方が有力となった[5]。これは2006年は消費者の購入が期待されるイベント(トリノオリンピック2006 ワールド・ベースボール・クラシック2006 FIFAワールドカップなど)が多かったにも関わらず普及が進まず、日本国内出荷台数は前年よりも18%も減少(348万台 - 2001年からの調査以後初の前年割れ)[6]してしまったことがその理由として挙げられる[5]

なお2007年3月時点での世帯普及率は40%程であり[5]、市場が飽和状態にあるとは言えず普及に歯止めが掛かる理由とはならないと電機メーカー各社は見ていた。一部のメーカーはDVDレコーダーの操作を容易にかつ解りやすくするなどして、そのシェアを伸ばした。しかし市場全体としてみれば根本的な解決策とはならなかった。

この結果、以前から不振が続いていたメーカー(日本ビクター・パイオニア・日立製作所など)は事実上の撤退に追い込まれ、堅調なメーカーとの2極化が進んだ。

JEITAの民生用電子機器国内出荷統計によると、2004年(2004年1月〜同年12月)は407万1000台、前年比207.5%[7]、2005年(2005年1月〜同年12月)は423万8000台、前年比104.1%[8]と好調だったが、2006年(2006年1月〜同年12月)は348万2000台、前年比82.2%[6]と前年比を大きく割り出荷台数は大幅に落ち込み、しかも調査以後初の前年比割れとなった。2007年(2007年1月〜同年12月)は299万1000台、前年比85.9%[9]で2006年からの減少傾向に歯止めがかからなかった。2008年(2008年1月〜同年12月)に至っては224万台、前年比74.4%[10]Blu-rayレコーダーへの移行や未曾有の景気低迷もあって減少傾向に拍車をかけ、DVDレコーダーの市場は先細りしていった。

DVDレコーダーの普及が進んだのは日本が中心であり、欧米などではDVDプレーヤーに比べるとあまり普及しなかった。欧州のテレビ業界はインターネットの普及とともにスマートテレビの導入のほうに非常に積極的であった[11]。ドイツやフランスではスマートテレビの標準規格であるHbb TVがスタートしたほか[12]、イギリスでもスマートテレビの標準規格としてYou Viewがスタートした[11]。欧米のテレビ局ではインターネットを通したフリーミアム(基本サービスは無料で付加価値部分を有料とする形態)と呼ばれるアプローチが一般化し、スマートテレビによる見逃し視聴(時間シフト視聴)が普及したためである[13]。日本では見逃し視聴のサービス化が欧米のように積極的には進まずサービスを導入しても基本的に有料とするスタンスがとられていたため、視聴者には録画機器による録画を選択することが好まれ、「日本は欧米に例を見ないほど録画文化が発達した国」と評された[14]

2011年には多くのメーカーがDVDレコーダーの生産を終了した。2012年5月にフナイの子会社(2012年当時。現在はエレコムの子会社)のDXアンテナ(DX BROADTEC)よりVHS一体型DVDレコーダーの新製品「DXR160V」が発売された。その後継機として「DXR170V」が発売されたが、2016年7月に生産を終了し、同年12月までに販売を終了した。

製品の沿革(DVD)

  • 1996年 - DVDプレーヤー(再生専用機)が製品化。
  • 1998年 - 初の記録型DVDであるDVD-RAMのPC向けドライブが製品化。
  • 1999年
    • 9月 - NECが世界初の民生用光ディスクビデオレコーダー「GigaStation」を発売。独自規格のMVDISC(片面5.2GB、カートリッジ付きの光ディスク)を採用。DVDとの互換性はなく、後継機種は発売されなかった。
    • 12月 - パイオニアが世界初のDVDレコーダー「DVR-1000」を発売。DVD-RW方式対応。価格は25万円。
  • 2000年
    • 米国でTiVoやReplayTVといったHDDレコーダーが登場し始める。日本ではソニーが8月に「Clip-On」を発売。
    • DVD-RAM陣営の松下電器産業が単体機「DMR-E10」をリリース。DVD-RW陣営のパイオニアがDVR-1000の後継機でDVD-Rに保存できる「DVR-2000」をリリース。当時のDVD-RWとDVD-RAMの規格シェアは9:1だった。[要出典]
    • 12月 - 日本ビクター(現:JVCケンウッド)がDVD-RAM方式の単体機「HM-VDR1」を発売。
  • 2001年
    • 4月 - 東芝が世界初のHDD内蔵ハイブリッド機「RD-2000」を発表(2000年11月発表)。DVD-RAM方式対応で、30GBのHDDを搭載。
    • 7月
      • DVD-RW陣営のパイオニアも後継機「DVR-7000」を急遽リリース(6月発表)。実はDVR-2000がCPRM機能を解除するということが判明したための繰上げリリースである。以降DVR-2000の存在は闇に葬られることとなる。[要出典]
      • DVD-RAM陣営の松下電器産業もDVD-R対応の単体機「DMR-E20」を発表(5月発表)。単体機でタイムシフトが可能になった。
    • 9月 - ソニーがDVD-RW方式の単体機「RDR-A1」を発売。
    • 12月 - 東芝に次いで松下電器産業も「DMR-HS1」にてHDD/DVDレコーダーに進出。
  • 2002年
    • 3月
      • DVD-RAM陣営の松下電器産業が低価格機「DMR-E30」をリリース。松下電器産業のVHSに代わる大衆録画機という戦略が見事にあたりDVDレコーダーの存在を一般消費者に知らしめた。急遽パイオニアはシャープよりOEM供給受ける形で低価格機「DVR-3000」を投入するもワールドカップに間に合わず、パイオニアのシェアを一気に落とす結果になった。DVDレコーダー規格シェアが一気に逆転し-RW:-RAMが3:7になった。[要出典]
    • 春 - これまではパイオニアからOEM供給受けて販売していたシャープも以降は独自開発となる。
    • 11月 - シャープが初のBS/CSデジタルチューナー搭載HDD+DVDレコーダー「DV-HRD1」を発売。
  • 2003年
    • 3月 - 松下電器産業が初のVHS一体型DVDレコーダー「DMR-E70V」を発売。
    • 7月 - 東芝がDVD-R/-RW/-RAMへの録画・再生に対応したHDD+DVDレコーダー「RD-XS31」を発売。
    • 8月 - 日本ビクターがDVD-R/-RW/-RAMへの録画・再生に対応した単体機 「DR-M1」を発売。
    • 10月 - ソニーがHDD搭載モデルを含むDVDレコーダー「スゴ録」シリーズ「RDR-GX5/VD6/HX6/HX10」を発売。
    • 12月
      • ソニーがPlayStation 2と機能を統合したHDD搭載DVDレコーダー「PSX」を発売。以降DVD+HDDレコーダーの低価格化・普及を加速させた。
      • 日本ビクターがVHS一体型DVDレコーダー「DR-MV1」「DR-MF1」を発売。
  • 2004年
    • 2月 - シャープが業界初の地上/BS/CSデジタルチューナー搭載HDD+DVDレコーダー「DV-HRD2」「DV-HRD20」を発売。
    • 4月 - 松下電器産業が初のVHS+HDD+DVD(3in1)レコーダー「DMR-E150V」を発売。
    • 5月 - ソニーが当時業界最大容量の400GBのHDDを搭載した「RDR-HX100」を発売。
    • 6月 - 日本ビクターがHDD+DVDレコーダー「快録LUPIN」シリーズ「DR-MH30」を発売。翌7月にはVHS+HDD+DVD(3in1)レコーダー「DR-MX1」を発売。
    • 8月 - 東芝が初のダブルアナログチューナー搭載「RD-XS53」「RD-XS43」を発売。
    • 10月 - 日立製作所が初のデジタルチューナー搭載機種「DV-DH250T」「DV-DH400T」を発売。DVD-RAM陣営初のデジタルチューナー搭載モデルである。
  • 2005年
    • 2月 - シャープ・日立に追随し東芝が初の地上/BS/CSデジタルチューナー搭載モデル「RD-Z1」を発売。
    • 5月 - ソニーがシャープ・日立・東芝に続き同社初の地上/BS/CSデジタルチューナー搭載モデル「RDZ-D5」を発売。
    • 7月 - 松下電器産業も3波デジタルチューナー搭載モデル「DMR-EX100/300」を発売。以降各社の主力商品となる。
    • 9月 - 日立製作所が初のダブルデジタルチューナー搭載機種「DV-DH160W/250W/500W/1000W」を発売。DV-DH1000Wは業界初の1TBレコーダーだった。
    • 10月 - ソニーが初のPSPへの転送機能を備えた「RDR-AX75」を発売。
    • 11月 - 松下電器産業が世界初となるHDD・DVD・VHS・SDの録再に加えデジタルチューナーも搭載した「DMR-EX200V」を発売。
    • 12月 - シャープも日立に追随しデジタルWチューナーモデル「DV-ARW12」「DV-ARW15」を発売。
  • 2006年
    • 2月 - 日本ビクターがデジタルチューナー搭載DVD-RW方式の「DR-HD250」「DR-HD400」を発売。ただしシャープのOEMで、DVDレコーダーの新製品は発表しなくなった。
    • 3月 - 松下電器産業が世界初となる1080p変換出力機能を搭載したモデル「DMR-EX550」を発表。同時に業界初のHDMIリンク機能となる「ビエラリンク」も発表された。
    • 5月 - ソニーが初のPSPへの転送機能を備えたハイビジョンレコーダー「RDZ-D77A」「RDZ-D97A」を発売。
    • 6月 - ソニーが同社唯一のデジタルチューナー搭載VHS+HDD+DVD(3in1)モデルとなる「RDZ-D60V」を発売。同社最後の3in1モデルでもあり、2007年夏まで生産された。
    • 9月 - シャープが「AQUOSファミリンク」および、シングルチューナーモデルでもAQUOSのチューナーを活用して2番組同時録画が可能な「ハイブリッドダブレコ」対応(DV-AC32/34/ACV32のみ、ACW38はWチューナー)機種「DV-AC32」「DV-AC34」「DV-ACW38」「DV-ACV32」を発表。
    • 11月
      • 東芝「RD-XS38/48」の生産終了によりアナログWチューナー搭載モデルが消滅。
      • ソニーが同社最後のDVDレコーダー新製品となる「RDZ-D700」「RDZ-D800」「RDZ-D900A」「RDR-HX67」を発売。なお、「RDR-HX67」はアナログのみの最終モデルでごく短い期間(約4ヵ月)の販売だった。
  • 2007年
    • 春 - 売れ行き不振により多くのメーカーが収益を圧迫されていると伝えられる。[要出典]
    • 3月 - 日本ビクターが民生用DVDレコーダーの市場から撤退。[要出典]
    • 夏 - 夏のボーナス商戦ではコピーワンス緩和の議論中だったことや売れ行き不振から、東芝の「RD-A300/A600」以外の新機種が全く発売されなかった(なお、この時期はDVDレコーダー以外もAV機器の新商品発売が例年よりも少なかった)。
    • 8月 - 日立製作所が新機種は全てOEM化でDVDレコーダー市場からの事実上撤退。
    • 9月 - ソニーが今後発売するレコーダー製品を全てBDに切り替えることを発表[15](ただし、「RDZ-D700」はその後半年程度販売が継続された)。
    • 12月 - 松下電器産業、シャープが旧機種での「ダビング10」対応を発表。
  • 2008年
    • 1月 - ソニーが旧機種でのダビング10対応を発表。パイオニアが全機種生産中止し、事実上撤退。
    • 2月 - ソニーが業界で最も早くレコーダー製品の全ての機種をBD対応モデルに変更。同時に、「スゴ録」ブランドの終了。
    • 3月 - 三菱電機が同社初のブルーレイディスクレコーダー「REAL ブルーレイDVR-BZ200/DVR-BZ100」と「REAL DVDレコーダーDVR-DW200/DVR-DW100」を5月24日に発売すると発表。同時にこの4機種と2007年9月発売の「楽レコ DVR-DV745/DVR-DV735」のダビング10対応を発表。
    • 4月 - パイオニアが新型DVDレコーダー「DVR-WD70」を発表。2006年秋のDVR-DT95/75以来約1年半ぶりの同社DVDレコーダーの新モデルとなったが、シャープのOEMとなる。また前述の通りシャープはDVDレコーダー参入初期はパイオニアからOEM供給を受けて販売していたことから、OEM供給をする側と受ける側がそっくり入れ替わった形となった。
    • 6月 - 日本ビクターが「DR-HX500/250」を発表。約2年ぶりの新モデルだが船井電機のOEM。
  • 2009年
    • 4月 - パナソニックが地デジ専用DIGA「DMR-XE1」を発表。
  • 2012年
    • 5月 - 各社が生産を完了する中、DXアンテナ(DX BROADTEC)がVHS一体型DVDレコーダー「DXR160V」を発表。
  • 2014年
    • 7月 - DXアンテナ(DX BROADTEC)がVHS一体型DVDレコーダーの新モデル「DXR170V」を発表。
  • 2016年
    • 7月末 - 「DXR170V」の生産が終了。[16]

  1. ^ http://www.sony.jp/dvd-player/ DVDプレーヤー/ポータブルDVDプレーヤー|ソニー
  2. ^ http://pioneer.jp/dvdld/player/ DVDプレーヤー:パイオニア株式会社
  3. ^ HDD搭載 ハイビジョンブルーレイディスク/DVDレコーダー「DIGA(ディーガ)」6機種を発売 - Panasonic
  4. ^ [1][2]
  5. ^ a b c d e f g 2007年3月3日配信 <DVDレコーダー>普及進まず 操作の難しさなどで敬遠か - 毎日新聞
  6. ^ a b c 民生用電子機器国内出荷統計 2006年12月国内出荷実績 - JEITA(1月からの累計を参照)
  7. ^ 民生用電子機器国内出荷統計 2004年12月国内出荷実績 - JEITA(1月からの累計を参照)
  8. ^ 民生用電子機器国内出荷統計 2005年12月国内出荷実績 - JEITA(1月からの累計を参照)
  9. ^ 民生用電子機器国内出荷統計 2007年12月国内出荷実績 - JEITA(1月からの累計を参照)
  10. ^ 民生用電子機器国内出荷統計 2008年12月国内出荷実績 - JEITA(1月からの累計を参照)
  11. ^ a b 山崎秀夫『スマートテレビで何が変わるか』翔泳社、2011年、33頁
  12. ^ 山崎秀夫『スマートテレビで何が変わるか』翔泳社、2011年、34頁
  13. ^ 山崎秀夫『スマートテレビで何が変わるか』翔泳社、2011年、39頁
  14. ^ 山崎秀夫『スマートテレビで何が変わるか』翔泳社、2011年、40頁
  15. ^ “ソニー、MPEG-4 AVC録画対応の新BDレコーダ4モデル”. AV Watch. (2007年9月12日). https://av.watch.impress.co.jp/docs/20070912/sony1.htm 2019年2月12日閲覧。 
  16. ^ “VHSビデオ機生産に幕 国内勢最後の船井電機、7月末で”. 日本経済新聞. (2016年7月14日). https://www.nikkei.com/article/DGXLZO04817850T10C16A7TI1000/ 2019年2月12日閲覧。 






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