網干総合車両所 網干総合車両所の概要

網干総合車両所

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/09 15:11 UTC 版)

網干総合車両所
網干総合車両所西側
基本情報
鉄道事業者 西日本旅客鉄道
帰属組織 近畿統括本部
所属略号 近ホシ
整備済み車両略号 網干総・AB
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本項では、前身である網干電車区についても記述する。

概要

1960年代初頭より、姫路市姫路商工会議所を中心に網干駅周辺への電車区誘致運動が展開されてきた[2]1968年(昭和43年)10月に明石電車区網干派出所として開設したが、1970年(昭和45年)3月に網干電車区として明石電車区から独立した。その後、2000年(平成12年)4月に阪神・淡路大震災復興に伴う再開発に敷地を提供するため、鷹取工場が機能移転。明石電車区の検修部門とも統合して、網干総合車両所となった[3]

その後も加古川鉄道部姫路鉄道部の車両検修部門や宮原総合運転所などを統合した。

本所

網干総合車両所東側

兵庫県揖保郡太子町にあり、山陽本線網干駅の西方に位置している。敷地面積は約130,000である。

検修庫は3つあり、「第1検修庫」では221系以降のJR形式電車、「第2検修庫」では国鉄型電車・客車気動車の全般検査・要部検査を行うが、JR形式電車で短編成のものは「第2検修庫」を使用する場合もある。「第1検修庫」には8両編成までまとめて持ち上げることができるジャッキが設置されている。「第3検修庫」では交番検査・仕業検査・臨時検査が実施される。構内配線は、仕業線・電留線17本、洗浄線3本、試運転線1線、入換線(転削線)1線となっている。

主な検査車両は、自所配置の車両の他、岡山電車区(→下関総合車両所岡山電車支所)の電車(主に213系・223系を担当。113系・115系・117系・105系は2010年代後半から主に下関総合車両所本所が担当するが、時折当所や吹田総合車両所が担当する場合あり)、宮原支所の客車、余部派出所・吹田総合車両所京都支所亀山派出所の気動車(時折後藤総合車両所が担当する場合あり)を担当している。

本所から吹田総合車両所奈良支所へ転出された221系の転出に伴うリニューアル改造も本所か吹田総合車両所で改造される。

前身は網干電車区[4]。東海道・山陽本線で増大する輸送量に対応するために列車増発・編成増結が必要となり、快速電車の基地として1970年3月に開設された[4]。山陽本線上下本線間に挟まれた配置になっており、将来的な設備増強を見越した土地も用意されていた[4]。当初の敷地面積は12haで、東半分に電留線(試運転線を含めて15線)と転削線(1線)が、西半分に洗浄線(2線)、引上線(3線)、交検線(2線)・臨検線(2線)が備えられていた[5]

網干総合車両所への拡充にあたり、線形を変えずに工場機能設備を配置する場合と下り本線を上り本線横に移設し、南側をフリーな状態で拡張する場合が検討され、平面交差支障時間の検討や立体交差の可否、土地拡張の観点から後者案が採用となった[5]。工場機能施設を設置するため、洗浄線は電留線南側(3線)に移動され、洗浄線の南側に存在する0番線(網干総合車両所の一番南の線路)は下り本線を転用したものである[6]。交検線(2線)および臨検線(2線)を備える交検庫は拡張され、第3検修庫とされた。敷地の西側には、第1検修庫と第2検修庫が新設された。

2021年(令和3年)7月の組織改正により、本所には以下の派出所が設けられている。

余部派出所

姫新線余部駅 - 太市駅間にある車両基地で、かつての姫路鉄道部の車両基地部門を継承している。

宮原支所

宮原支所構内

大阪府大阪市淀川区木川東にある車両基地で、新大阪駅の西隣にある。かつての宮原総合運転所。国鉄時代は宮原機関区・宮原電車区・宮原客車区で、特急用車両が多く配置されるなど名門車両基地であった。 2012年(平成24年)6月の組織改正により、宮原支所には以下の派出所が設けられている。

野洲派出所

滋賀県野洲市東海道本線琵琶湖線篠原 - 野洲間に位置している車両基地。かつての野洲電車区で、京都総合運転所野洲派出所を継承している。

米原派出所

滋賀県米原市米原駅に隣接している車両基地。かつての京都総合運転所米原派出所を継承している。電留線のみ設けられている。

明石支所

明石支所

兵庫県明石市の山陽本線(JR神戸線明石 - 西明石間に位置している車両基地で、かつての明石電車区の検修部門を継承している。敷地面積は約63,000㎡で、上下電車線に挟まれる形になっている。

構内配線は、仕業・電留線10本、電留線6本、洗浄線2本となっており、交検庫では主に交番検査・仕業検査および臨時検査が行われている。 明石支所には以下の派出所が設けられている。

加古川派出所

兵庫県加古川市にある車両基地で、加古川線厄神駅北隣に位置している。2009年(平成21年)7月の組織改正で加古川鉄道部が廃止されたのに伴い、基地機能(厄神基地)が統合されて、網干総合車両所加古川派出所となった。

構内配線は、仕業・電留線2本、洗浄線1本、電留線5本となっている。

高槻派出所

高槻派出所構内

大阪府高槻市にある車両基地で、東海道本線(JR京都線高槻 - 島本間に位置している。高槻電車区として開設され、宮原電車区→京都電車区の派出所→吹田工場高槻派出所(1993年〈平成5年〉)を経て現在の名称となっている。

放出派出所

放出派出所構内

大阪府東大阪市川俣にある車両基地で、片町線(学研都市線)放出駅の南東、おおさか東線放出 - 高井田中央間に位置している。森ノ宮電車区放出派出所を継承しており、かつては淀川電車区(二代目)として車両も配置されていた。

過去に存在していた組織

車体に記される略号

整備済み車両に記される略号
網干総または AB と記されている。
配置車両の車体に記される略号
所属組織の略号と、網干の電報略号である「ホシ」から構成されている。

国鉄分割民営化後は近ホシ(「近」は近畿圏運行本部の意味)で、その後の組織改正により「本ホシ」(「本」は本社直轄の意味)となり、1993年6月の神戸支社発足により「神ホシ」(「神」は神戸支社の意味)を経て、2010年(平成22年)12月の組織改正により近ホシ(「近」は近畿統括本部を意味)に戻った[7]

各支所
宮原支所
近ミハ(電車・客車)
(機関車)
明石支所
近アカ
以前は本所の略号を表記していたが、宮原支所統合後は独自の略称が表記されるようになった。「近アカ」は明石電車区の略号として国鉄分割民営化直後に使用されており、近畿圏運行本部廃止以来の復活となる。
加古川派出所
近カコ
加古川鉄道部から「神カコ」だったが、2010年12月の組織改正で「近カコ」に変わった。明石支所傘下となった後も独自の略号を使用している。
余部派出所
近ヨへ
姫路鉄道部から「神ヒメ」だったが、2010年12月の組織改正で「近ヒメ」に変わった。姫路鉄道部廃止により現在の略号となっている。

  1. ^ 網干総合車両所 一般公開 ~ふれあいフェア2019 安全で環境にやさしい鉄道~』(プレスリリース)西日本旅客鉄道、2019年10月23日https://www.westjr.co.jp/press/article/2019/10/page_15148.html2024年4月1日閲覧 
  2. ^ 姫路市史編集専門委員会編集「姫路市史」第6巻本編近現代3 平成28年3月30日発行 p.534
  3. ^ 網干総合車両所の発足及び鷹取工場の操業終了についてインターネットアーカイブ)- 西日本旅客鉄道プレスリリース 2000年2月16日
  4. ^ a b c 『日本鉄道施設協会誌』第36巻第8号、p.598
  5. ^ a b 『日本鉄道施設協会誌』第36巻第8号、p.599
  6. ^ 鶴通孝「アーバン輸送の基幹を支える網干総合車両所の機能を見る」『鉄道ジャーナル』鉄道ジャーナル社、2009年10月号、p.48。
  7. ^ 組織改正などについて - 西日本旅客鉄道プレスリリース 2010年11月16日
  8. ^ a b c d e f ジェー・アール・アール編『JR電車編成表』2023夏 交通新聞社、2023年、p.166 - 183。ISBN 9784330024233
  9. ^ a b 「JR旅客各社の車両配置表」『鉄道ファン』2023年7月号、交友社
  10. ^ 【JR西】221系全車の体質改善工事の施工が完了
  11. ^ ジェー・アール・アール編『JR電車編成表』2021夏 交通新聞社、2021年、p.168 - 169。ISBN 9784330025216
  12. ^ ジェー・アール・アール編『JR電車編成表』2022冬 交通新聞社、2021年、p.361。ISBN 9784330065212
  13. ^ a b c d ジェー・アール・アール編『JR電車編成表』2023夏 交通新聞社、2023年、p.360 - 362。ISBN 9784330024233
  14. ^ ジェー・アール・アール編『JR電車編成表』2021夏 交通新聞社、2021年、p.360。ISBN 9784330025216
  15. ^ a b ジェー・アール・アール編『JR電車編成表』2023冬 交通新聞社、2022年、p.361。ISBN 9784330067223
  16. ^ ジェー・アール・アール編『JR電車編成表』2022夏 交通新聞社、2022年、p.360。ISBN 9784330028224
  17. ^ 225系100番台L編成が営業運転を開始|鉄道ニュース|2021年10月11日掲載|鉄道ファン・railf.jp”. 鉄道ファン・railf.jp. 2021年11月18日閲覧。
  18. ^ 225系100番台L7編成が登場|鉄道ニュース|2021年10月22日掲載|鉄道ファン・railf.jp”. 鉄道ファン・railf.jp. 2021年11月18日閲覧。
  19. ^ 225系100番台L8編成が登場|鉄道ニュース|2021年11月11日掲載|鉄道ファン・railf.jp”. 鉄道ファン・railf.jp. 2021年11月18日閲覧。
  20. ^ 『鉄道ダイヤ情報』2011年2月号、交通新聞社。
  21. ^ 【JR西】広島地区で223系による乗務員訓練実施”. 鉄道ホビダス(RMニュース ). ネコ・パブリッシング (2012年12月10日). 2017年3月13日閲覧。
  22. ^ 223系MA21編成が広島へ”. railf.jp(鉄道ニュース). 交友社 (2013年1月26日). 2017年3月13日閲覧。
  23. ^ 平成24年春ダイヤ改正について』(PDF)(プレスリリース)西日本旅客鉄道 福知山支社、2011年12月16日。 オリジナルの2011年12月16日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20111216172605/http://www.westjr.co.jp/press/article/items/20111216_fukuchiyama.pdf2017年3月13日閲覧 
  24. ^ 和田岬線に207系が入線 - 『鉄道ファン交友社 railf.jp鉄道ニュース 2011年8月7日
  25. ^ 日向旭「JR西日本 103系の現況」『鉄道ピクトリアル』2018年1月号、電気車研究会。p.71。
  26. ^ 103系R2編成が吹田へ 鉄道ニュース(railf.jp)、2018年2月15日。
  27. ^ ジェー・アール・アール編『JR電車編成表 2018夏』交通新聞社、2018年。p.357。
  28. ^ ジェー・アール・アール編『JR電車編成表』2023冬 交通新聞社、2022年、p.360。ISBN 9784330067223
  29. ^ オヤ31形客車(建築限界測定車)の車両譲渡について 西日本旅客鉄道、2022年12月6日(2023年1月30日閲覧)
  30. ^ 「網干電車基地 8月25日から一部開業」『交通新聞』交通協力会、1968年7月21日、1面。
  31. ^ 『近畿地方の日本国有鉄道 -大阪・天王寺・福知山鉄道局史』大阪・天王寺・福知山鉄道局史編集委員会、2004年、p.372。
  32. ^ a b 「JR年表」『JR気動車客車編成表 '01年版』ジェー・アール・アール、2001年7月1日、188頁。ISBN 4-88283-122-8 


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