生命 生命の概要

生命

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/16 22:37 UTC 版)

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妊娠第10週目のヒト胎児

概論

生命とは、文脈によって様々な定義がある語であるが、基本的には「生きているもの」と「死んでいるもの」、あるいは物質生物を区別する特徴・属性などを指す語、あるいは抽象概念である。伝統的に、「生き物が生きた状態」そのものを生命と呼んだり、生きた状態は目に見えない何かが宿っている状態であるとして、その宿っているものを「生命」「」「」などと呼んでおり、現在でも広く日常的にそのような用法で使われている。現代の生物学では、代謝に代表される、自己の維持、増殖、自己と外界との隔離など、様々な現象の連続性を以って「生命」とする場合が多い。

生命とは何か、ということについての論や見解を生命論や生命観と言う。自然哲学には自然哲学の生命観があり、宗教には宗教的な生命観がある。現在、一般的・日常的には、生きものが生きている状態を指して「生命を持っている」「生命を宿している」と呼び、文脈によっては非物質的なのようなものを指す場合もある。

ここでは様々な角度から生命を扱うことにし、伝統的な概念から、現代生物学的な生命に関する概念や理論までを、ある程度歴史に沿って追ってゆくことにする。

大島泰郎によれば、現在、我々人類が知っている生命は、地球上の生物のみであるが、これらの全ての生物は同一の先祖から発展してきたと、現代生物学では考えられている。その理由は、全ての地球生物が用いるアミノ酸が20種類だけに限定され、そのうちグリシンを除き光学異性体を持つ19種類が全てL型を選択していること、またDNAに用いる核酸の塩基が4種類に限定され、それらが全てD型である事である[1]

現在知られている地球上の全ての生物は炭素を素にしているが、我々が地球以外での生命の形を知らないだけという可能性も指摘されることがある。理論上は炭素以外の物質を元とした生物も考えられうる。

定義

生命の定義は哲学生物学双方の分野で、非常に困難な問題である[2][3][4]。生命とは何らかの過程を意味するものであり、純粋な物質というわけではないからである[5]。また、地球以外で生み出された生命体についての知識が乏しいことも生命の定義を困難にしている[6][7]。哲学における生命の定義も試みられているが、生命体と非生命体の区別においては生物学と似たような困難に直面している[8]。また、生命を法的に定義することも広く議論されてきたものの、法学における論争は主に特定の人間の死亡を宣告する条件と死亡宣告の影響に集中している[9]

何が「生きているか」を考える難しさを示す実例にHeLa細胞が挙げられる事もある。これはヘンリエッタ・ラックスというアメリカ人女性の子宮がん細胞を元にしたヒト細胞であり、培養され世界中の研究所に分配され試験に用いられている。ヘンリエッタ個人は既に亡くなったが、彼女由来の細胞は現在でも生きている。生命の基本的活動が細胞である事、そして「生きている」状態には明瞭な線引きができないさまざまな段階が存在すると考えられている[10]




  1. ^ a b 大島(1994)、p.14-29、第1章 生命は星の一部である、(1)宇宙の生命を探る
  2. ^ Defining Life : Astrobiology Magazine - earth science - evolution distribution Origin of life universe - life beyond
  3. ^ Defining Life, Explaining Emergence
  4. ^ Can We Define Life”. Colorado Arts & Sciences (2009年). 2009年6月22日閲覧。
  5. ^ McKay, Chris P. (September 14, 2004). “What Is Life—and How Do We Search for It in Other Worlds?”. PLoS Biol. 2 (2(9)): 302. PMID PMC516796 doi:10.1371/journal.pbio.0020302. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC516796/?tool=pubmed 2010年2月2日閲覧。. 
  6. ^ Nealson, K.H.; Conrad, P.G. (December 1999). “Life: past, present and future”. Philosophical Transactions of the Royal Society of London B英語版 354 (1392): 1923–39. doi:10.1098/rstb.1999.0532. PMC: 1692713. PMID 10670014. http://journals.royalsociety.org/content/7r10hqn3rp1g1vag/fulltext.pdf. 
  7. ^ Mautner, Michael N. (2009). "Life-centered ethics, and the human future in space" (PDF). Bioethics. 23 (8): 433–40. doi:10.1111/j.1467-8519.2008.00688.x. PMID 19077128. 2012年11月2日時点のオリジナルよりアーカイブ (PDF)
  8. ^ Jeuken M (1975). "The biological and philosophical defitions of life". Acta Biotheoretica. 24 (1–2): 14–21. doi:10.1007/BF01556737. PMID 811024
  9. ^ Capron AM (1978). "Legal definition of death". Annals of the New York Academy of Sciences. 315 (1): 349–62. Bibcode:1978NYASA.315..349C. doi:10.1111/j.1749-6632.1978.tb50352.x
  10. ^ a b 大島(1994)、p.46-50、第2章 宇宙の中の生命、(1)生命の三つの特徴
  11. ^ a b c d e 『岩波 生物学事典』【生命】
  12. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』講談社、2011年 p.80-113
  13. ^ 『デカルト著作集4』p.286
  14. ^ 『ひとは生命をどのように理解してきたか』p.64
  15. ^ a b c d e f g 福岡伸一「第2章」『生物と無生物のあいだ』講談社、2007年、pp.29-46。
  16. ^ a b c d e f 福岡伸一「第9-第15章」『生物と無生物のあいだ』講談社、2007年、pp.152-272。
  17. ^ 『生命とは何か 物理学者のみた生細胞』岡小天・鎮目恭夫共訳、岩波書店〈岩波新書 第72〉、1951年。
  18. ^ "History of life through time". University of California Museum of Paleontology.
  19. ^ 新しい生物学 p.269
  20. ^ 「生命の起源 宇宙・地球における化学進化」p6-p7 小林憲正 講談社 2013年5月20日第1刷発行
  21. ^ a b c 大島(1994)、p.160-171、第5章 地球外生命の可能性、(1)隕石‐太陽系の古文書
  22. ^ a b 大島(1994)、p.60-66、第2章 宇宙のなかの生命、(3)特徴の2自己を複製する
  23. ^ "Definition of death". 2009年10月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年4月30日閲覧
  24. ^ Defining of death.
  25. ^ Thro, E.: Artificial Life Explorer's Kit, SAMS Publishing.,1993.
  26. ^ 2週間でウイルス合成 米、「人工微生物」実現に展望
  27. ^ Virus built from scratch in two weeks - Nature News
  28. ^ 「生命の起源 宇宙・地球における化学進化」p146-p148 小林憲正 講談社 2013年5月20日第1刷発行
  29. ^ 「生命の起源 宇宙・地球における化学進化」p164-p165 小林憲正 講談社 2013年5月20日第1刷発行







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