天龍八部 (小説)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/03 15:33 UTC 版)
仏教との関連性
天龍八部の題は、仏教において、仏法を守護する神々である天龍八部衆(天、龍、夜叉、乾闥婆、阿修羅、迦楼羅、緊那羅、摩睺羅伽)に由来している。金庸は、小説冒頭の解題で、これら各々が奇異な個性と神通力を持ち、人ならざる存在でありながら、人と同じく俗世の喜怒哀楽を味わう神々について、物語の中ではそれ自体は登場しないものの、その名を借りて、現世の人々を象徴してみた、としている。
実際の物語においても、その背景に横たわっているは、武術、民族は言うに及ばず、男女間の情愛でさえも、時と共に全て消滅てしまうという一種の諦念、無常感であり、これが仏教の思想であることは明らかである。金庸は仏教の哲理にも深い理解があることで知られ、仏教の術語を小説の題としたのもその表れとされている。
武功と絶技
金庸作品の中でも最も武功の数が多い。『射鵰英雄伝』の「降龍十八掌」や「一陽指」、『秘曲 笑傲江湖』の「吸星大法」など他作品との繋がりもある。
- 「六脈神剣」――大理の武功の中で最も強力とされる伝説の技。指先から無形の剣気を撃ち出して相手を倒す。段誉のような完璧な習得者が現れたのは、実に百年ぶりのことだった。
- 「一陽指」――大理段家の得意技。『射鵰英雄伝』の「南帝」こと一灯大師が使うものと同じである。大理王家の男子は皆習得を課せられるため、段延慶もこの技を使う。
- 「七十二絶技」――少林寺の持つ七十二の必殺技の総称。少林寺の創始者とされる達磨大師を除き、全てを会得した者はいない。
- 「降龍十八掌」――丐幇幇主に受け継がれる武功。『射鵰英雄伝』に登場した技と同じである。
- 「打狗棒術」――丐幇幇主に受け継がれる棒術。同上。
- 「凌波微歩」――仙女の像で発見した奥義書で、段誉が会得した最上の軽功。彼が最初に身につけた武功である。
- 「北冥神功」――同じく仙女の像で発見した奥義書で段誉が会得。相手の内力を吸い取って自らのものにする。これにより段誉は世にまれな内功の持ち主となる。
- 「化功大法」――「北冥神功」とよく間違われるが、こちらは猛毒で相手の内力を消すだけで、自分の内力は増えない。丁春秋が使う、邪道の技として武林で恐れられている。
- 「生死符」――無影無音無色無香の暗器。当てられると死よりも恐ろしい苦痛を味わう。三十六洞七十二島はこれを受けて解く術が無いため、天山童姥に支配されていた。後に逍遥派を継いだ虚竹が習得する。
書誌情報
2002年3月から2002年10月にかけて、徳間書店の金庸武俠小説集の第12回刊行作品として、全8巻が出版された。
- 単行本
- 徳間書店・岡崎由美 監修\土屋文子 訳
- 剣仙伝説 2002年3月31日刊行 ISBN 4-19-861492-X
- 王子受難 2002年4月30日刊行 ISBN 4-19-861503-9
- 運命の激流 2002年5月31日刊行 ISBN 4-19-861516-0
- 行路茫々 2002年6月30日刊行 ISBN 4-19-861530-6
- 草原の王国 2002年7月31日刊行 ISBN 4-19-861542-X
- 天山奇遇 2002年8月31日刊行 ISBN 4-19-861561-6
- 激闘少林寺 2002年9月30日刊行 ISBN 4-19-861575-6
- 雁門悲歌 2002年10月31日刊行 ISBN 4-19-861588-8
- 天龍八部 (小説)のページへのリンク