北陸鉄道金沢市内線 概要

北陸鉄道金沢市内線

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/20 16:55 UTC 版)

概要

北陸鉄道金沢市内線は、かつて金沢市内に存在した路面電車である。金沢市の金沢電気軌道が、1912年明治45年)軌道敷設特許取得、1916年(大正5年)会社設立という長い準備期間を経て1919年(大正8年)2月に金沢駅前から兼六園下までの区間を開通させたのが路線の始まり。1919年内に犀川浅野川に挟まれた中心部の第1期線全線が開業、さらに1922年(大正11年)までに第2期線が開業し、加えて1945年(昭和20年)の延伸で総延長12.5キロメートルの路線網が完成した。この間の第二次世界大戦下で3度の事業再編があり、1943年(昭和18年)より現在の北陸鉄道による運営となった。

路線は全線1,067ミリメートル軌間で、直流600ボルト電化を採用。路線網は、金沢城址周辺を一周する路線と、環状線から4方向へ放射線状に伸びる路線(武蔵ヶ辻 - 金沢駅前間、橋場町 - 東金沢駅前間、兼六園下 - 小立野間、香林坊 - 野町駅前間)、さらに香林坊 - 野町駅前間の途中(野町広小路)で分岐して寺町へ至る路線によって構成された。路線網の端には北陸本線金沢駅および東金沢駅が立地し、同じ北陸鉄道が運営する郊外線の浅野川線石川線金石線1971年廃線)とも接続していた。これら北陸鉄道の郊外線3路線は市内線とは別個に運転されていたが、松金線1955年全廃)については市内線との直通運転が実施され、1945年(昭和20年)まで市内線の電車が松金線の終点である松任町(当時)の松任駅まで乗り入れていた。

最盛期の1947年度(昭和22年度)には年間3,900万人・1日平均10万6,000人の利用があったが、戦後路線網が拡大し続けた路線バスへと徐々に乗客の移行が進む。加えて自動車交通量の増加や、1960年代に入ってからの急激な赤字拡大といった問題を抱えた。廃止はまず道路拡張の支障となった路線網北端の鳴和 - 東金沢駅前間0.8キロメートルからで、1966年(昭和41年)2月限りで廃止。同区間の廃止手続中に残存区間も社内最大の赤字線区となったことから全線撤去・バス転換の方針が打ち出され、さしあたり同年12月25日限りで橋場町 - 鳴和間2.0キロメートルが廃止され、残存区間9.7キロメートルも1967年(昭和42年)2月10日の運転を最後に一括廃止された。北陸3県県庁所在地の路面電車で唯一、全廃された。


注釈

  1. ^ 金石電気鉄道は1920年10月に金沢駅裏の中橋駅まで延伸されている。
  2. ^ 兼六園下から兼六園に沿って小立野台地へと登る坂を兼六坂という。坂のある道路の沿道は尻垂坂通という町名であったが、町民の請願で1958年兼六通へと改称。坂の名前も昭和40年代に尻垂坂から兼六坂へ変わった(以上『角川日本地名大辞典』17 石川県 363・472頁による)。
  3. ^ 1968年10月郊外の金沢市割出町へ移転(『北鉄の歩み』217頁)。
  4. ^ 市内線廃止後の1970年旅客営業廃止、1972年貨物営業廃止で石川線白菊町 - 野町間は廃線となった。

出典

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