世界救世教 歴代教主

世界救世教

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/06 05:30 UTC 版)

歴代教主

  • 初代 岡田茂吉
  • 2代 岡田よし(1897?-1962年1月24日)岡田茂吉の二番目の妻
  • 3代 岡田斎(いつき)(1927?‐2013年9月4日)
  • 4代 岡田陽一(2018年6月24日推戴取り消し)

世界観

霊界という見えない世界と現界という目に見える世界があり、霊界が現界を支配し、心が体を動かすように霊界が現界を動かすと考える。人間は永遠の生命を持つ霊体と、二義的な現体からなるとされる[4]

世界は天国、中有界、地獄に大きく分かれ、最上階に「主の大神(すのおおかみ)=エホバ」が存在する。それぞれが各60階層に、計180階層に分かれる。霊は階層のどこかに籍の様なものを持ち、この籍は絶えず上下し、それが現界の幸福・不幸を左右する。現界において善行をしたり、神の光を伝える浄霊で霊の曇り・蓄積された汚濁を除去することで霊は軽くなり、霊界で上のレベルに昇ることができる。霊界のヒエラルキーを上昇して霊の運が開ければ、そのまま現界に反映され幸福になることができるとする[4]

現実の幸福が霊界でのレベルの判断になるため、ブラジルでは信者はある程度幸福を享受している中産階級以上が主で、貧困層には広まっていない[4]

岡田の霊界観には心霊主義の影響があると指摘されている。岡田は若いころ大本に入信していたが、大本は心霊主義の影響を受けており、また岡田は心霊主義者の浅野和三郎とも親交があった[2]

死後の転生を信じる。死後、霊界で何十年、何百年か暮らし、霊界の浄化作用を受け、ある程度浄化された霊から再び生まれるとされる。宗教学者の松岡秀明は、世界救世教の転生は仏教の輪廻思想の影響ではないかと述べている[4]

キリスト教の世界観を根本的な部分で肯定しており、最後の審判が霊界の夜から昼への転換という形で必ず起こるとしている[4]。霊界の夜昼転換に伴って出現する地上天国は、神によって選ばれた人間が建設するもので、世界救世教が建設者であるとしている[4]

浄霊

浄霊とは、同教団で行われる儀式的行為のこと。いわゆる手かざしの一種である。「薬毒や個々人の日ごろの行い、先祖の罪けがれなどによる『霊の曇り』(=病因)を『浄霊』による浄化促進作用によって解消していく(=救済)」という考えである[26]。近年では先祖との関係性はあまり重視されず、病因と救済が今ここの個人に集約され、「自分が浄霊などで浄まれば、自分が良くなる」というように変わっている[26]。治療行為としての面もあり、病人の患部、あるいは各病気ごとに有効とする「急所」と呼ばれる個所に手をかざす事によって、霊的な力でその病状を癒すとする。岡田茂吉は、病気の原因は薬による二次被害であるとする思想(薬毒)を説き、西洋医療の投薬や手術、東洋医学漢方にかわる治療として浄霊を推進していた。

岡田は元々岡田式神霊指圧療法という治療を行っていたが、医師法違反で検挙されたことから、浄霊を行うようになった。岡田が昭和前半に25年かけて開発したとされる[27]大本教の教祖出口王仁三郎の杓子を使った治療法を源とすると言われ、岡田は杓子の代わりに扇子をかざす方法を考案し、これが手をかざす方法になった[17]。宗教学者の立川武蔵は、岡田の浄霊(手かざしは)は、明治時代に日本に輸入された西洋のメスメリズムと日本の伝統的な技法との混合で生み出されたものであると指摘している[27]。この技法によって日本国内での地位を確立し、海外への布教でも成果を上げた[27]。世界救世教系の教団は手かざしを行うことが特徴である[17]

「浄霊」と呼ばれるが、岡田の最晩年まで単に「治療」「お浄め」と呼ばれていた[27]。岡田茂吉による1951年9月26日発表の論説文「浄霊の発明的価値」内冒頭に、「浄霊という言葉は、歴史上今日までなかった事は言うまでもない」と記載されている。また、世界救世教発行の書籍「景仰」内には、「おまえたちは常平生“浄霊”“浄霊”と言って、なんの不審なく使っているが、この浄霊なんて熟語は、どんな辞書を見たって載ってないよ」と岡田茂吉が発言した旨が掲載されている。浄霊の「霊」の文字は、幽霊の「霊」ではなく、を意味する。霊能者用語の浄霊の影響で、憑依霊を退散させる儀式であると誤解を受けることがあるが、浄霊によって浄める対象は、憑依霊ではなく、対面している人間の魂である。この儀式は、1対1、もしくは、1対多で向かい合い、施術者が対面する相手に手のひらをかざすことで、神の光を相手の魂や身体に放射して浄め、病気やさまざまな苦悩を解決するというものである。世界救世教では、「おひかり」と呼ばれるペンダント状のものを首にかけることにより、信者なら誰でも行うことが可能な術としている。

岡田は、浄霊の研究を望み医師を呼んでの懇談会や出版物を出すなど意欲的だったが、医学界には認められなかった。このため信者には医学との対立的な姿勢を見せる者もあり、その結果発生したトラブルが新聞に掲載される[28]こともあった。岡田の死去後、世界救世教は、その方針を教祖存命時よりも医学との共存的な姿勢を取る方向に向け、二代教主(茂吉の妻岡田よし)らにより世界救世教の浄霊は宗教的儀式(祈り)の面が強調され、浄霊の実施者は病気の急所などの知識は必ずしも必要ではないとされた。会派によっては、医療施設も設けた。

救世教内部でも、病気治療的面を強調する会派(東方之光)と、病気治療的面を強調せず宗教儀式的なものとして行う会派(世界救世教いづのめ教団[20])が並立している。いづのめ教団はブラジルタイを始めとし、国外約90カ国以上に教線を広げており、合計100万人以上の外国人信徒が浄霊を行っている。外国でも、浄霊は「ジョウレイ」と日本語で呼ばれており、世界救世教いづのめ教団ではJohrei という表記でこの言葉の国際化を目指している。また団体の所属とは別に、信者ひとりひとりの浄霊に対する個人的指向として、病気治療的指向と宗教儀式的指向を持つ者が並立する状態である。

なお、「ヒーリングに寛容なイギリスでは、浄霊は健康保険が適用できる代替医療として認められている」という趣旨の記述が見られる場合があるが、そのような事実はない。世界救世教は日本においても浄霊が可能な複数の医療機関を開設しているが、浄霊自体に健康保険の適用を受ける事は出来ない。


  1. ^ 島田(2007),pp.151-152.
  2. ^ a b c 松岡秀明「ブラジルにおける世界救世教 : 背景としてのエスピリティズモ(新宗教の海外での受容-スピリティズムとの連続性という視点-,パネル,<特集>第六十六回学術大会紀要)」『宗教研究』第81巻第4号、日本宗教学会、2008年、926-928頁、doi:10.20716/rsjars.81.4_926ISSN 0387-3293NAID 110006646207 
  3. ^ a b 松岡秀明「霊のヒエラルキー:ブラジル世界救世教の非日系信者の宗教的アイデンティティー」『日本文化人類学会研究大会発表要旨集』日本文化人類学会第43回研究大会セッションID: A-29、日本文化人類学会、2009年、27頁、doi:10.14890/jasca.2009.0.27.0NAID 130005050100 
  4. ^ a b c d e f g h 松岡秀明「霊の進化:ブラジルにおける世界救世教の受容をめぐって」『東京大学宗教学年報』第15巻、東京大学文学部宗教学研究室、1997年、13-25頁、doi:10.15083/00030599ISSN 02896400NAID 120001506996 
  5. ^ 現地研究「伊豆半島」実習報告―伊豆半島の温泉観光地とジオパーク― 実施:2013年7月7日~9日 法政大学文学部地理学教室
  6. ^ 中島三千男今日における政治と宗教 (天皇制の現段階と元号・靖国<特集>)」『歴史評論』第358号、歴史科学協議会、1980年2月、33-58,68、ISSN 03868907NAID 120002693068 
  7. ^ 中野毅戦後日本国家と民衆宗教の政治参加 : 宗教学的一考察』 筑波大学〈博士(文学) 乙第1707号〉、2001年。doi:10.11501/3188136NAID 500000209708https://tsukuba.repo.nii.ac.jp/records/8085 
  8. ^ 1980年6月6日付朝日新聞
  9. ^ 1980年6月20日付朝日新聞
  10. ^ 1995年4月27日付日本経済新聞
  11. ^ 2001年7月12日付読売新聞
  12. ^ 2007年8月15日付朝日新聞
  13. ^ 2013年8月16日付朝日新聞
  14. ^ a b c 隈元正樹「現代日本の新宗教組織における「一元化」 : 世界救世教の場合(第九部会,<特集>第六十六回学術大会紀要)」『宗教研究』第81巻第4号、日本宗教学会、2008年、1202-1203頁、doi:10.20716/rsjars.81.4_1202ISSN 0387-3293NAID 110006646424 
  15. ^ a b c 島田(2007),pp.147-150.
  16. ^ 島田(2007),pp.150-152.
  17. ^ a b c d ムー編集部 編 『完全版 日本と世界の宗教』学研プラス、2009年
  18. ^ 山折哲雄/監修『日本宗教史年表』河出書房新社(2004.2.18) p.597
  19. ^ 「文化庁で初の汚職 メシヤ教から収賄」『朝日新聞』昭和47年(1972年)6月14日朝刊、13版、22面
  20. ^ a b 主之光教団の「主之光」は「すのひかり」と読み、「主」の字は正確には「○」(円)の中心に「`」(点)を打った物である。
  21. ^ a b c 「岡田陽一の"現住所"」本郷四朗『宗教問題』第22号
  22. ^ 教主様
  23. ^ いづのめ教団・小林執行部及び東方之光・MOAによる岡田陽一四代教主様の推戴取り消し及び聖地からの追放について
  24. ^ 包括責任役員4名(小林・長澤・入江・森)による文書について
  25. ^ 御神体改造”. 2021年5月10日閲覧。
  26. ^ a b 武井順介「新宗教における病の意味変容 : 世界救世教を事例として(第十二部会,<特集>第六十七回学術大会紀要)」『宗教研究』第82巻第4号、日本宗教学会、2009年、1308-1309頁、doi:10.20716/rsjars.82.4_1308ISSN 0387-3293NAID 110007098045 
  27. ^ a b c d 立川武蔵『癒しと救い : アジアの宗教的伝統に学ぶ』玉川大学出版部、2001年。ISBN 4472402483NCID BA50499883全国書誌番号:20150673https://books.google.co.jp/books?id=xH7pzmS-4T4C&pg=PA24 
  28. ^ 例えば、1952年11月26日読売新聞夕刊『狂信、坊や見殺し』など
  29. ^ a b 島田(2007),pp.151-152.
  30. ^ 吉野航一「沖縄における「EM(有用微生物群)」の受容 : 公的領域で語られたEM言説を中心に」『宗教と社会』第15巻、「宗教と社会」学会、2009年、91-105頁、doi:10.20594/religionandsociety.15.0_91ISSN 1342-4726NAID 110007524844 
  31. ^ 第162回国会 環境委員会 有用微生物群を活用した環境改善の取組に対する国の支援に関する請願 参議院
  32. ^ 熱海瑞雲郷”. 世界救世教いづのめ教団. 2008年8月7日閲覧。
  33. ^ 京都平安郷”. 世界救世教いづのめ教団. 2008年8月7日閲覧。
  34. ^ 聖地”. 世界救世教いづのめ教団. 2008年8月7日閲覧。
  35. ^ 島田(2007),pp.144-146.
  36. ^ 文化庁『宗教年鑑 令和3年版』 P86-87
  37. ^ 参院選2019総力特集!“カルト候補”228名ぜんぶ載せ!”. やや日刊カルト新聞. 2019年7月18日閲覧。






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